[2013年12月15日]
将来の授業、社会で役立つ「スキル」重視に!?
大学生がシューカツ(就職活動)で苦労しているというニュースをよく聞きます。採用数が少ないというより、企業が学生に求める能力が高くなっているというのです。「うちの子はまだまだ遠い先の話だ」と思われるかたも多いかもしれません。しかし、ひょっとすると小学校入学前の子どもが高校に進学するころには、学校の授業が社会に出た時に役立つスキル(技能)重視へと大幅に変わるかもしれない……と言ったら、驚かせすぎでしょうか。
文部科学省の国立教育政策研究所は先頃、将来の小・中・高校のカリキュラムはどうあるべきかについての中間報告書をまとめました。2009(平成21)年度から5年計画で実施している研究ですから、まだ固まったわけではありません。それでも近い将来、学校にどんなことが求められるのかが垣間見えるような研究です。
国際的に活躍できる「グローバル人材」の育成に政府が乗り出したことや、ICT(情報通信技術)を使って双方向的な授業が試みられはじめていることは、以前からありました。報告書は、グローバル化やICTの高度化、少子高齢化など社会が大きく変わるなかで、必要とされる資質や能力を具体化し、それらの育成を目指すのが「21世紀型の教育課程(カリキュラム)」だとしています。教科書に載っている知識を覚えるという授業のイメージとはちょっと違うようです。
具体的には、(1)思考力、表現力、言語力、コミュニケーション能力(2)道徳性、人間関係形成力、社会性、コミュニケーション能力(3)シチズンシップ、市民性(4)キャリア発達を促す基礎的・汎用的能力……などを現時点で挙げています。少し難しい言葉も入っていますが、いずれも今、社会から必要だと言われはじめているものです。また、思考力や表現力、言語力は、現行の指導要領でも重視している力です。こういった力を、各教科などの授業を通して身につけさせることを重視しようというのです。
興味深いのは、思考力や判断力、表現力などの「知」に関わる部分と、道徳性や社会性などの「心」に関わる部分を、意識的に関連づけるべきだとしている点です。「心」というと倫理観とか優しさのようなものを想像してしまいますが、ここでは「自己調整力」(自分と関わる)、「人間関係形成力」(他者と関わる)、「社会参画・形成力」(社会と関わる)も「心」の範囲に入れています。いずれも仕事をはじめとした社会生活を送るうえで必要になるスキルで、それを小さいうちから徐々に訓練していこうというわけです。
すでに大学は、専門的な学問そのものを身につけさせるというより、講義などを通して社会で役立つ力(学士力、社会人基礎力)を身につけさせようという方向にかじを切りはじめています。今の指導要領が思考力や判断力、表現力を重視し、「活用」型の授業をすすめているのも、「21世紀型カリキュラム」授業の先取りという側面もあるのです。指導要領の改訂を待たずに、そうした授業がますます増えていくかもしれません。