[2014年1月25日]
なぜ道徳が「特別の教科」に?
政府の教育再生実行会議の提言を受けて、文部科学省の有識者懇談会が道徳を教科にする検討を行っていることは、以前の記事で少し触れました。10月の会合では道徳を「特別の教科」にする案が示され、その方向に固まりそうな気配です。年内にも報告にまとめ、それを待って下村博文文部科学相は中央教育審議会に教科化を諮問する見通しです。ところで、なぜ「特別」なのでしょうか。そもそも、「教科」とは何なのでしょう。
実は文科省によると「教科」とは何か、法令上の決まりはないのだそうです。戦後初めて1947(昭和22)年に示された学習指導要領(試案)では、小学校で「自由研究」が教科に入っていたほどです(中学校では選択科目)。ただ、指導要領が現在のような形になった1958(昭和33)年の指導要領の「解説」では、教科には(1)教員免許状(2)教科用図書(教科書)(3)評点による成績評価……があることが条件であるとの考えが示されており、これが現在まで踏襲されているといいます。実行会議が道徳を「新たな枠組み」で教科化するよう求めているのも、5段階など数値で評価しにくいことを見越してのことでした。
懇談会には、道徳の時間を「教科」とするか、「特別の教科 道徳(仮)」とするかの二つの案が示されましたが、「特別の教科」の方が支持を集めました。というのも先の条件に少し外れるというだけでなく、現行の道徳自体に<特別>な性格があるからです。
専門的な話になりますが、道徳はカリキュラムを構成する「教科・領域等」のうち、「領域」に分類されています。現行指導要領で道徳は「道徳の時間を要として学校の教育活動全体を通じて行うもの」(小・中学校の総則)などとされており、学級活動や学校行事などの「特別活動」はもとより、国語や算数・数学、図工などの教科の授業や「総合的な学習の時間」、小学校の「外国語活動」と、すべてにわたって機会をとらえて行うことにしています。それだけ学校教育にとって重要だというわけです。ちなみに、道徳教育を充実させるためには小・中学校で特別の時間を取って授業をしたほうがよいと、いわゆる「道徳の時間」が特設されたのも1958(昭和33)年の指導要領からです。
なお高校は「倫理」など道徳に近い科目があったことや、生徒の発達段階も考慮するなどして、指導要領上は現在まで特設された時間はありません。ただし、一部都道府県で独自に設定している例もあります。
ただ、小・中学校で「道徳の時間」を設けても、先の記事のように実際には授業に差があるのも事実です。実行会議などはそうした実態を問題視し、「領域」からの格上げが必要だと考えたわけです。しかし依然として全教育活動を通じて行うことが必要である以上、通常の教科と同列に扱うわけにはいかないというわけで、「特別の教科」に位置付けるアイデアが出てきたわけです。
まだ議論の最中ですが、「特別の教科」になれば通常の教科と同様、検定教科書が発行される見通しです。