[2014年2月1日]
高校無償化の見直しで手続きも大変に? 来春入学者から所得制限
高校授業料無償化の具体的な見直しについて、文部科学・財務・総務の3省合意が結ばれ、今秋の臨時国会に改正法案が提出されることになりました。法案が成立すれば、2014(平成26)年度の高校入学者から所得制限などが導入されます。ただ、教育委員会関係者や高校関係者の間には、性急な制度改正による事務手続きのトラブルなどを懸念する声もあるようです。
公立高校生の授業料は不徴収、私立高校生には就学支援金を交付するという高校授業料無償化は、先の民主党政権により2010(平成22)年度から開始されましたが、自民党は当初から「ばらまき政策」と批判していました。公立高校の授業料を一律に無償にするよりも、高所得層は有償として、その分、低所得層などへの支援を充実させたほうがよいという考え方です。
無償化見直しを決めた自民・公明の与党間合意によると、公立高校の授業料不徴収の制度を改め、私立高校と同様に国が高校生に対して就学支援金を交付するという仕組みに一本化します。同時に、「世帯年収910万円以上」の高所得層は就学支援金の対象から除外し、授業料は全額負担とします。文部科学省は、高校生のいる世帯全体のうち約22%が対象から外れ、それで年に約490億円の財源が捻出できると試算しています。ただし、混乱を避けるため現在の高校在籍者は現行制度のままとし、新制度は来春の高校入学者から適用されます。
見直しの一環として、所得制限で捻出された財源を利用し、世帯年収250万円未満程度の家庭の高校生を対象にした返済の必要のない給付型奨学金(公立は年額13万円、私立は年額14万円)を支給、590万円未満程度の家庭の私立高校生への就学支援金の増額も与党間協議で合意されていますが、いずれも予定であり、実際には年末の政府予算案の編成の中で具体的内容が決定されることになっています。
2014(平成26)年度からの見直しには、全国知事会などが慎重姿勢を示し、15(同27)年度以降の導入を求めていました。というのも、無償化の導入の際に公立高校の授業料徴収システムを廃止してしまったため、そのシステムを再構築するのに時間がかかるからです。また、授業料徴収に関する条例を来年2〜3月の都道府県議会で制定しなければならず、諸々の準備や手続きを考えると2014(平成26)年度実施はスケジュール的に「非常にタイト」(教委関係者)であるというのが都道府県などの本音です。
公立高校の現場では、生徒の家庭から所得証明書などの提出を受けることになりますが、そのチェックなど事務負担の増加、年収など個人情報の漏えいの可能性などを懸念する向きもあるようです。このほか、授業料が有償の生徒と無償の生徒に分かれることになるため、「生徒同士の関
係に悪影響が出る」と指摘する高校関係者もいます。いずれにしろ、当初のうちは多少の問題が発生するのは避けられないかもしれません。