[2014年6月4日]
今月の言葉
今月は 「橋本左内(はしもとさない)」の「啓発録(けいはつろく)」 から「5つの誓いの言葉」を紹介します。
「稚心(ちしん)を去る」 「気を振(ふる)う」 「志を立てる」 「学を勉める」 「交友を択(えら)ぶ」
橋本左内は、皆さんと同じ年の頃(15歳)で医師の道を志し、親元を離れて1人大坂へ向かいました。その時に、自分自身を高めるための5つの誓いをたてます。これが現在「啓発録」と呼ばれているもので、原文は漢文になっています。 簡単に言うと、「稚心を去る」は甘え心を捨てる、「気を振う」は怠け心を捨てる、「志を立てる」は目標をたてる、「学を勉める」は学問だけでなく正しい生き方をする、「交友を択ぶ」は磨きあう友を選ぶ、という意味です。 日本の歴史を学んだ私にとって、橋本左内は坂本龍馬や西郷隆盛などと並び、幕末史に燦然と輝く特別な人です。しかし、15歳の橋本少年は確かに賢かったろうけれど、決して特別な人ではなかったはずです。つまり、彼は15歳のこの時から無実の罪により26歳の若さで刑死するまでの10年間で特別な人になったわけです。ということは、皆さんにだって特別な人になる可能性があるということです。若いということはそれ自体が可能性であり、すばらしいことなのです。(でも、後でそれと気づく人がほとんどなんですが・・・) 左内がいう「気を振う」とは、本気ではじめたら(「志を立てる」)決して人に負けられない、負けることは恥だと考えて常に油断なく取り組む、だからがまんすることも大切だ(「推心を去る」)ということが本来の意味なのです。そのためには、真の友を大切にする(「交友を択ぶ」)必要があるでしょう。左内は友の中には「損友」と「益友」があるといいます。「損友」はおもしろく、つきあいやすいが互いのためにならない関係、「益友」は時にはおもしろくないこともあるが互いが向上する関係です。運動でも勉強でも私生活でもよいライバル(益友)というものは常に互いを刺激しあうものです。だから、あなたが益友を見つけることも大切、あなた自身がだれかの益友になれることも大切です。そして、「益友」と切磋琢磨していきましょう。その中で自分の長所と徔意を見つけよう。そして学んだ知識を生かし、人間の幅を広げていこう。(「学を勉める」)
橋本左内(1834〜1859)
幕末の福井藩藩士、景岳(けいがく)を号とする。福井藩医 橋本長綱の長男として生まれる。
1849年、大阪で緒方洪庵(幕末最高の蘭方医)に西洋医学を学ぶ。帰郷後、福井藩主 松平慶永(春嶽)を助け、一橋派〔大老 井伊直弼 と対立した 一橋慶喜(後の15代将軍 徳川慶喜)の一派〕として活躍する。将軍を頂点とする新国家づくりを構想した。1859年、安政の大獄〔井伊大老が反対派を処罰した事件〕で幕府を批判した罪で政治犯として処刑される。その最後は、主君 春嶽公から届けられた新しい着物を身につけ、静かで落ち着いたものであったという。享年26歳。墓地は、故郷福井市左内公園の一隅にある。