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加藤学習塾
【岡山県岡山市の進学塾】

[2014年8月3日]

苦手教科の棚上げ&棚卸し法[中学受験歳時記コラム]

苦手教科の棚上げ&棚卸し法[中学受験歳時記コラム 〜いま取り組むべきこと〜]

●苦手教科の棚上げ&棚卸し法は教科ごとに違う

 6年生は7月くらいまでに、小学校の全カリキュラムをひと通り学び終えます。この時点で、苦手な分野や単元をチェックしておきましょう。苦手はとりあえず「棚上げ」し、適切なタイミングで「棚卸し」を行うことが大切です。
 なお、苦手対策のしかたは、理社国と算数で分けて考えましょう。苦手対策というと、算数にばかり時間をかけてしまい、逆に理科・社会の苦手は「覚えればいい」、国語は「日本語だから大丈夫」などと考えてなかなか取りかからないかたが多いのですが、むしろ理社国の苦手対策に、より早く取りかかるべきです。

●算数--むしろ棚上げする勇気を

 現状では、どの単元はどこまでできるかをきちんと把握しておくだけでOKです。「割合」は基本問題ならできる、「比の値」は基本も少しあやしい、といった具合にチェックし、基本問題まではなるべくできるようにしておきましょう。
 正直に申し上げますと、算数の苦手は時間をかけても完全に克服できるとは限りませんので、今はむしろ「棚上げする勇気」が大事です。受験が迫ってくる夏休み以降になると、どの単元やどのレベルの問題に優先して取り組むべきか見えてきますし、塾の先生が志望校に応じて優先順位を付けてくれる場合もあります。

●理科・社会--「先生」を選んで早めに解消

 特に理科・社会の苦手は、積み残しのないよう、早めに棚卸しをしておく必要があります。なぜなら、理科・社会は全単元の8割以上はできないと、難関校に合格するのが難しくなるからです。
 理科・社会は分野によって好き嫌いが分かれます。理科で苦手になりやすいのは、てんびんとてこ、水溶液の性質、天体の動きなど。社会では、地形の成り立ちと市街地の関連といった地理分野が苦手なお子さまが多いようです。いずれも論理的な思考を必要とする分野なので「理屈がわからない」から苦手になるのです。
 また、歴史上の出来事など、扱うテーマに「興味が持てない」から嫌い、というかたも多いですね。

 理科・社会の苦手克服には、一般に算数ほど時間がかかりません。教え方の上手な人に、一定の時間をかけて教えてもらえば必ずできるようになります。保護者のかたが教える場合は、あらかじめ複数の参考書を下読みして、どのような解説のしかたがいちばんわかりやすいか研究しておいてください。ご自身で教えるのが難しければ、その分野が好きで得意な人に頼むのがいちばん。「誰に」「どのタイミングで」教わるかを、保護者ご自身でマネジメントすることが大切です。これについては、あとで詳しく述べます。

●国語--日々の学習の中で克服を

 国語も同様に、「説明文は苦手」「心情の読み取りができない」といった苦手意識は早めに払しょくしておくことが必要です。特に必ず問われる「指示語の指す内容」や「段落どうしの関係」などは、おのおのきちんと時間をとって解説してあげましょう。
国語の苦手克服については、次の内容も参考にしてください。

・国語は「本さえ読めば大丈夫」?
 保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。6年生の1月〜3月に行われる入試に対応するために、毎年の受験生活は○月にはこれを、と目標とするべきスケジュールがあり、それは歳時記のようにも感じられます。
ここでは、4年生から6年生のお子さまと保護者のかたに、毎月特に取り組んでほしい重点事項を紹介していきます。

・4年生にとって「読解」は初体験

 4年生になると、国語が苦手というお子さまが増えてきます。その大きな理由は、「読解問題」というものにふれるのが初めてだから。それまでは文章を“何となく”読んでいるだけでも問題なかったのに、登場人物の気持ちなど、文章の解釈を問われ、しかも“正解”を求められる。読解問題は小学校ではあまりやらず、本来なら中学の定期テストで初めてふれる子が多いのです。ですから、4年生で読解ができないのは当たり前と考えてください。
 国語の苦手について学校や塾の先生に相談すると、「ちゃんと読書をしていますか」という答えが返ってくることが多いと思います。しかし、本さえ読めば国語が得意になるかというと、そうともいえません。
国語が得意になるには、文章に描かれている内容を自分なりに再現する力が必要です。この力は「想像力」と言い換えてもよいでしょう。

・「読む」ことは間接体験 実体験と結び付ける工夫を
 「読む」という行為は、「間接体験」です。文章を通じて、情景を自分なりに再現し、筆者や登場人物が経験した出来事や感情、考え方を追体験すること。文章中の体験を再現するためには、ある程度の実体験の積み重ねが必要です。

たとえば、文学や映像作品では、登場人物の心情と情景がセットで描かれることがありますね。主人公がつらい気持ちの時、空にも黒雲が広がり、雨が降っているとか。雨にぬれてとぼとぼと歩いた経験があれば、「ああ、主人公はつらいんだな」と感覚でわかります。ところが、実体験が乏しいために、情景描写と感情がすぐには結び付かない子どもも多いのです。大人はつい、感情は生まれつき備わっているものだ、と考えがちですが、実は感情も経験を通じて育っていくものです。たとえば、身近な人との別れを通じて悲しみを知ったり、友達とのけんかを通じて怒りの感情を学んだり。欧米には「感情教育」という考え方がありますが、日本では近代教育が始まった際に、これが抜け落ちてしまったようです。
 ですから、文章を読み取る力を付けるには、さまざまな実体験をすることと、体験と文章の内容を想像で結び付ける訓練が必要です。国語が得意な子は、これが自然にできているわけです。

・五感を使って「読む」「書く」力の基礎をつくる
 「本を読みなさい」と言っても、本好きでないお子さまは、自分からは読まないと思います。それよりもぜひ、寝る前に本の「読み聞かせ」や「読み合わせ」をしてあげてください。「読み合わせ」は、お子さまと交代で読むこと。お芝居のように、役割を決めて読むのも楽しいと思います。本は、お子さまが喜ぶものなら何でもかまいません。勉強の時間に、国語の問題文を使って、一緒に「読み合わせ」をするのもよいですね。

お子さまが読むのを聴いていると、内容を理解しているか、よくわからずに読んでいるかが、保護者のかたにもわかってくると思います。たとえば、大人なら主人公がつらい気持ちだとすぐわかる場面でも楽しそうに読んでいるとか。そんな時は「違うでしょ」などと否定せずに、ちょっと声をかけて、お子さまが想像力を働かせる手助けをしてあげてください。たとえば、「このシーンは雨でしょう。あなたが何か失敗しちゃった日、雨が降ってきて、自分だけ傘がなかったらどんな気持ちになる?」というふうに。
 また、読んだあとで子どもたちに感想を自由にしゃべってもらうと、とてもおもしろいですよ。大人が思いつかない独創的な解釈だったりしますが、これも決して否定をせずにおもしろがって聞いてあげてください。自由な解釈の否定は、子どもの想像力そのものの否定につながります。
 絵が好きなお子さまなら、文章を絵に描いてみるのも非常によい方法です。この作業を通して、語り手の視点や人物どうしの関係などを、注意深く読み取るくせが付きます。初めのうちは、特に印象に残った人物だけを描いたり、文章中に出てこないものも想像して描いたりするお子さまが多いと思います。それはそれで決してまちがっていませんが、慣れてきたら、「主人公のAちゃんは、この景色をどこから見ているのかな?」「BさんとCさんは、どこにいるのかしら?」などと声をかけて、正確に表現する手助けをしてあげてください。
 逆に、絵や写真を文章にしてみるのも、「書く」力を付けるよいトレーニングになります。

・読解問題は、「指示語」と「接続語」のみでOK
 なお、読解ができないからといって、いきなり読解問題ばかり解かせるのは逆効果です。登場人物の心情を問われても想像がつかないまま、答えだけ丸暗記するようなまちがった問題演習をくり返していると、想像力という大切な基礎力が育たないうえ、ますます国語が嫌いになってしまう恐れがあるからです。
 ただし、「これ」「その」などの指示語が指す内容を問う問題、「それで」「しかし」など、適切な接続語を選ぶ問題については、丁寧に解説してあげてください。指示語と接続語の問題は、少しのトレーニングで必ずできるようになります。
 語彙(ごい)を増やすことも国語力アップに必要ですが、そのために読む本は、子どもが好きなものなら図鑑でも実用書でもかまいません。マンガも、語彙を増やすためには大いに役立ちます。「もっと読みたい」というお子さまの意欲を大切にしてあげてください。

●苦手だからこそ、ベストの指導者にベストタイミングで教えてもらう
 
 お子さまの苦手な単元は、たいてい誰もがつまずきやすいところです。つまり、通り一遍の指導では、皆と同じようにつまずく。苦手だからこそ、ベストの指導や教材を選ぶ必要があります。
 また、受験対策のカリキュラムは、必ずしも子どもが理解しやすい系統的な教え方になっているとは限りません。ですから、習ってすぐ理解できなかったとしても、お子さまを責めるべきではありません。まずは苦手克服のために、お子さまにどんな体験をどのタイミングでさせるのがよいか、保護者ご自身で考えてみてください。

 たとえば算数の「比」が苦手だったので、理数系の得意なお父さまに何日か早く帰宅してもらい、丁寧に教えてもらったらわかるようになった、というかたもいらっしゃいました。「てんびん」がわからなければ、理系の大学に通う親戚のお兄さんに来てもらって、実物を使って遊びながら教えてもらう、歴史好きのお友達に、そのかたが好きな時代の流れやおもしろいエピソードを話してもらうといった方法もあります。そこで得た知識が、たとえ受験に直接役立たなくても、お子さまの中に「歴史の流れってこういうものか」という実感さえわけば、苦手意識はかなり払しょくされるはずです。また、優れた科学番組や教養番組を一緒に見るのもおすすめです。好きになるとまではいかなくても、その分野についていきいきと話す人の姿にふれるだけで、子どもの意識は変わってきます。
 なお、学校でその単元を習う前に苦手克服をしておくと、学校ではその単元の授業で手を挙げたりでき、子どもたちを「得意」がらせることができます。このように、塾と学校の学習タイミングのずれを、うまく利用するのもおすすめです。

●適性検査風の総合問題で苦手克服!

 その単元の学習内容に、まったく興味が持てないから嫌いという場合は、中高一貫校の「適性検査」によく見られる総合的な問題から入る、という方法もあります。地理が苦手なら、地形図や産業構成のグラフなどからその町の事情を読み解かせるような総合問題に取り組ませてみる。その際、参考書や辞書などの資料は自由に参照してよいことにしましょう。課題に当たり、自分で調べたり考えたりする習慣が付くと、自然に興味関心もわいてくるものです。
 苦手意識は、6年生のころに固定しがちです。「とっつきにくいから嫌い」であれば、とっつきやすくなる機会を提供してあげればよいのです。子どもの意欲が喚起されるように、ぜひ工夫してあげてください。