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啓新セミナー

[2013年5月24日]

出世欲

先日久しぶりに昔の友人と話しました。話の中で友人は「最近の若手は出世欲がない」とこぼしていました。出世して役職や階級が上がるとその分、責任や仕事が増えるのが嫌だということらしいのです。私の会社勤めの経験からいっても「確かに」と思いました。

「出世したい」というのは悪いことでしょうか?私はそう思いません。「出世したい」には「お給料を上げたい」や「社会的地位を向上させたい」など色々な意味があると思いますが、何よりも『自分自身を今の位置よりも向上させたい』という気持ちから来るものではないでしょうか。

私も前職で教科部主任、教室長、小学部長と色々な役職を経験させてもらいましたが、仕事でステージが上がればその分だけ仕事に対しての視野を広げて物事を見ることが出来ました。確かにその分だけ仕事は増えましたし、責任も重くなりそれなりのストレスを感じることも多くありましたが、それ以上に多くの経験を得ることが出来ました。

仕事も勉強も山登りと同じで、立ち位置が高くなればなるほど見ることのできる景色が広がります。低い位置に居れば目の前のことしか見えませんし、その事の意味や重要性を真に理解することは出来ません。実際に私も何も役職がなかったころは上役の方の言われたことを単に「こなす」だけでした。しかし、一段、また一段と上がっていくことで多くの物事を見る『目』を持つことができました。そして多くのことを見ることができるからこそ目の前の一つ一つのことの意味と大切さをより深く知ることができました。そのことを通して貴重な経験や人脈というものも得ることができました。当時は本当に忙しくて目が回るような毎日を送っていましたが、今その経験や人脈を本当に有難いものだと感じています。

最近の中学生の受験においても同じような傾向が見られます。より高みを目指した志望校選択をするよりもその時の現状で『行ける高校』を探そうとします。少しの無理や努力をしようとしない、より高いステージを目指そうとしない子どもが増えてきています。『15の選択』で夢を見ることよりも妥協点を探そうとします。大人になっていけば否が応でも妥協しなければいけない現実が山ほどあるのに、なぜそんなに若いうちから妥協しようと思うのでしょうか?彼らの多くがそうするのは勉強(=中学生にとっての仕事)を増やすのが面倒、辛いという単純な理由からです。出世を望まない若手社会人と同じ発想に思えます。早いうちから『妥協』することを覚え、厳しい現実から逃げる経験をした子どもたちが社会人になった時どうなっていくのか心配です。

私は宿題や単語覚えなどやるべき課題ときちんとやってこない生徒には小学生でも中学生でも同様に非常に厳しい言葉・態度で接します。【鬼ババアと言われますが・・・・(^_^;)】それは家庭でやるべきことをやらなければ学力がつかないからという理由もありますが、同時にどんなに大変でもやらなければいけないことがあることを彼らに伝えていきたいと思うからでもあります。子どもたちには、大変な事・辛い事から逃げない・諦めない強い心を持つ人になってほしいと思います。いつまでも同じステージに立ち、目の前のことの大切さや意味を分からず歩んでいくのではなく、より多くの景色を見ることができ、常にステップアップをしながら歩んで行ってもらいたいと思います。そのためにも15の春を妥協で迎えるのではなく夢の入り口として迎えられるように学力をしかっりつけさせると同時に、夢に向かって走る折れない心、強い心も育んでいける指導をしなければいけないと思いました。

友人とのちょっとした会話でしたが、改めて自分のするべきことと向き合うことができた会話でした。