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三田学院

[2016年7月13日]

英国のEU離脱に思う

イギリス(UK)のEU離脱をめぐる国民投票で、離脱派が勝利したことが衝撃的に報道されました。

中には愚かな判断を下したという論調もありました。はたして愚かな判断だったのでしょうか。日本企業にとって経済的に打撃だというのが評価の背景にあるようですが、イギリス人は日本のために国民投票をしたのではありません。

そもそもEU統合の背景は何でしょうか。2度の世界大戦で荒廃したヨーロッパが、もうおなじ過ちを繰り返さないようにしようというのがそもそもの発端であったと言えるのではないでしょうか。

少し話は逸れますが、ヨーロッパ統合の話を聞いたとき、ローマ帝国を連想したのは私だけでしょうか。

フランス、イタリア、スペインはもちろん、ギリシャと聞くと、帝政・共和制ローマ、そして後の西ローマ帝国と東ローマ帝国(ビザンティン帝国)を連想してしまいます。唯一の違いは、現在のドイツや北欧諸国は、ローマ帝国の最大勢力範囲に入っていなかったことです。イギリス(除くアイルランド地域)はしっかりローマ帝国に組み込まれていました。

話は戻りますが、統合を進めていくうちにいろいろな課題が浮かび上がってきました。

?人の移動の自由、?EU共通の規制、?他国への財政出動、などです。

?は移民が職を奪っているという不安や地域生活者の分断につながり、?は規制を好むドイツやフランスなどと、規制を嫌うイギリスやオランダなどの対立につながり、?はギリシャ、ポルトガルなどをその他の国が財政支援するという構図につながりました。

ヨーロッパ(トルコもEU加盟を目指していますので「拡大ヨーロッパ」)が一つになるのは容易ではなさそうです。

むしろ、ローマ帝国が崩壊したように、EUが意図せず崩壊しないことを祈るばかりです。

話をイギリスに移しましょう。かつて日の沈まない国を実現したイギリスは、オーストラリア、ニュージーランドなどのコモンウェルス諸国や、アメリカ(US)などと特別なつながりがあります。大陸ヨーロッパ諸国とではなく、こうした諸国との強固な関係をより望んでいるのかもしれません。

イギリス人と話していると、UK and Europe という表現がよく出てきます。イギリスはヨーロッパではないと言っているように解釈できなくもありません。

“世界が一つになるまで、・・”という歌がありますが、地域はもちろん、世界は一つになどなれるのでしょうか、と考えてしまいます。