[2016年7月22日]
発言内容が注目されるトランプ氏が、共和党の米次期大統領候補となった。
共和党の大統領候補選の際、多くのメディアでは「暴言を吐く変わり者」として紹介されることが多かった。
しかし今や共和党の次期大統領候補である。単なる「暴言を吐く変わり者」として扱うことは適切ではない。
彼はアメリカ国民(有権者)の多数の意見を代弁していると解釈すべきだ。
・メキシコ国境に「万里の長城」を築き、その費用をメキシコに払わせろ。
・すべてのイスラム教徒のアメリカ入国を拒否すべきだ。
・在日米軍の費用は、その全額を日本に払わせろ。
などなど、今まで大物政治家が口にしなかったような発言が目立つ。
これはツブヤキでも、ヒソヒソ話でもない。次期大統領候補の発言であることを正面から受け止めるべきだ。
先日、英国のEU離脱に関して書いた。
共通していると思うのは、有権者の多くが、国際的な「融和」や「統合」ではなく、「分断」と「自国主義」を志向しているということだ。
アメリカ国民は、世界で多発する国際紛争やテロ、移民問題、そしてアメリカ国内の格差と分断に嫌気がさしているのかもしれない。
民族国家においては、移民や外国人居住者の比率が5%を超えると社会が不安定化するという説がある。フランスなどがその代表例かもしれない。旧植民地のアルジェリアなどからの移民が増え、マルセイユやニースといった地中海沿岸都市や、パリなどの大都市で治安が悪化している。
アメリカはもともと移民の国だが、独立当初から比率の高かった、イングランド、アイルランドなどにルーツを持ち、おもにキリスト教を信仰する人たちと、それ以外にルーツを持つ人たちの間には依然として大きな溝がある。
次期大統領に共和党の候補か民主党の候補のどちらが選ばれるかにかかわらず、有権者の声は無視できない。トランプ氏の発言に共感する有権者がたくさん存在しているのだ。
アメリカは法治国家だ。議会も司法も機能している。大統領の独断で、すべての政策を実施することなどできないことは分かっている。
しかし、塾生たちが羽ばたこうとしている世界が、今後どこへ向かおうとしているのか、これほど気になったことはない。