[2016年7月30日]
テーマを変えてお伝えする。
高い経済成長を続けてきたシンガポールだが、近年異変が起きている。
いわゆるリストラが頻発しているというのだ。友人は中国経済の減速が第一の原因だと分析していた。
もともと解雇制限や社会保障を戦略的に充実させていないシンガポールでは、リストラは今後深刻な社会問題になるかもしれないと言っていた。
もし、中国経済の減速が原因だとしたら、シンガポールの将来は危ういかもしれない。なぜなら人口動態的に中国の高成長は今後期待できないからである。日本と同じかそれ以上に、少子高齢化が深刻なのである。人口ボーナスは終わっているのだ。
よりグローバルに見た場合、工業先進国で進む「マイナス金利」が心配である。EU諸国、アメリカ、日本ともに「マイナス金利」が続いている。
経済的に興隆を極めた国が「マイナス金利」に陥った場合、歴史的には、その国の繁栄が終焉に近づいていることを意味している。
中世に地中海貿易で栄えた北イタリア、大航海時代に繁栄したスペインやポルトガルなどが良い例だ。
利子率はその通貨が用いられている経済圏の成長力に比例するからだ。かつてイタリヤやスペインへ投資すれば高い収益が得られるため、資金需要から金利は高かったが、繁栄に陰りが出て高収益が期待できなくなると、資金需要は減少し金利は低下してしまった。
現在の日本が典型的な例だ。プラスの成長率を維持するのが難しくなってきている。ヨーロッパやアメリカもそうだ。こうした状況では、人々の暮らしは将来良くならないという見方が優勢になる。日本国内に投資しても利益はさしてないということだ。金利は「急低下」、「超低金利」を経て「マイナス金利」へと進む。
そして何が起こるか。他国を支援する余裕などないという「自国優先主義」、「自国第一主義」の台頭だ。
イギリスのEU離脱、アメリカ共和党大統領候補の発言内容がそうだし、ヨーロッパ諸国で自国民族を優先する政策を掲げる極右政党の躍進がそうだ。
G7はもちろん、G20はもっと機能しない。手を取り合って世界を良くしていこうという意気込みなど、ほとんどないからである。
自分(自国)のことで精いっぱい、というところであろう。
かすかな期待は残っている。南アジアやアフリカでは今後人口増加が予想されていることだ。大企業が増収増益を目指すなら、こうした諸国に進出するしかないであろう。
でも先進国や新興国とは価値観やルールの大きく違う地域で事業を展開することは容易ではない。
そして、どれだけ自国に利益を持ち帰ることができるかも不透明だ。経済発展を横目に、投資資金すら回収できないまま撤退ということだってあるかもしれない。
いずれにせよ、メイン・シナリオは「ローマ帝国の崩壊」のままだ。