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三田学院

[2016年8月20日]

先取学習は必要か?(1)大学受験

先取学習の必要性については、いろいろな意見がある。

ネット上でよく見かけるのは「先取は必要ない」という意見だ。

本当にそうだろうか?

何を目標にしているかで判断は分かれると考えている。

ケース1:難関大学を目指す場合

先取学習は圧倒的に有利だ。というより必須に近い。

高校3年の1年間を完全に受験対策に使えれば浪人生と互角に戦える。難関大学受験に圧倒的に有利だ。高校2−3年を受験対策に使えれば、2浪とも互角に戦える。医学部受験には圧倒的に有利だ。

先取が甘いと、同じような学力を持つ生徒であっても、現役合格を前提にすると、先取りできている生徒より1ランクか2ランク下の大学にしか入れない。この差を埋めるためには「浪人」が必要になってくる。

浪人すると経済的な損失が大きい。一流企業の初年度年収は400〜600万円、予備校費用を加味するともっと大きくなる。ちょうど私立中高6年間の学費相当分が吹っ飛ぶことになる。

塾代や私立中学の授業料を節約して、安く上げたつもりが、かえって大きく損してしまう。また時間的な損失も大きい。

都立中高一貫でも難関国立大学への進学実績に大きな開きがあるが、よく調べると先取具合が大きく違っていた。

ある都立中高一貫は私立難関中高一貫並みに先取りして合格実績を上げているが、ある都立中高一貫は高入生を中入生と早い段階で混ぜるために先取りをあまりせず、これが難関大学の合格実績の差の大きな要因の一つになっていたのだ。

中学入試偏差値が低い都立中高一貫より難関大学の合格実績が見劣りしていたのだ。代わりに、準難関や中堅国立大学への進学実績が高い。それで良いなら、先取りの緩いその都立中高一貫を選択する意義はある。

ケース2:難関大学を目指さない場合

先取学習は「諸刃の剣」だ。

先取学習の中心的な教科は「数学」だ。カリキュラムの進行スピードが速いと、当然「消化不良」を起こす生徒が出てくる。

中学時代に数学が「5」であった生徒でも、高校に入って「赤点・追試」の常習生になる生徒が多数いる。

これは高校数学を理解するために必要な自主学習時間が中学数学の2〜3倍必要だからだ。中学数学でギリギリ「5」だった生徒が、そのことを知らずに中学の頃と同じように勉強していると「落ちこぼれ」てしまう。

そうなると、その後が厄介だ。せっかく進学校(偏差値68程度以上)に入ったのに、カリキュラムスピードがそれほど速くなく、あまり難しい授業を行っていない準進学校の高校生に大学受験で逆転されてしまうことが起きるからだ。

進学校に進みながら主要な国立大学に受からない生徒は、はっきり言って進学校では「落ちこぼれ」だ。

特に「数学」で落ちこぼれると悲惨だ。難解で多くの学習時間が必要な「高校数学」を「学び直し」するのは容易ではない。ほとんどは「数学」が入試科目にない「私立文系」で勝負せざるを得なくなる。就職に有利な理工農水系学部や高人気が続く医歯薬系学部が選択肢から消える。

難関大学を目指さないなら、先取がキツい進学校へ進むのは慎重に検討されたい。先取が緩ければ、難関大学ではないまでも、理工農水系学部や医歯薬系学部にも進めたかもしれないからだ。

ケース3:難関大学を目指すが、「数学」か「英語」に自信がない場合

2番手・3番手相当の準進学校(偏差値60〜65程度)へ進むことをお勧めする。特に「数学」に自信がない場合は強くお勧めする。入学後に全科目での成績上位者リスト(成績上位10%)の常連にいれば、学習時間などをやり繰りして、不得意科目を挽回するチャンスもある。主要教科で苦しむと学習意欲が低下する恐れがあるが、これも回避できる。

別解:中学受験はせず、難関高校と難関大学を目指す小学生

これも先取学習は圧倒的に有利だ。

「中学数学」をドンドン先取りしよう。ただし、小学校の学習内容をほぼ完ぺきに理解してからに限る。そうでないと、かえって「数学」嫌いになってしてしまうリスクがあるからだ。小学算数を早々に学び終えて、ドンドン「中学数学」へ進もう。

一つだけ注意してほしいことがある。「学習教室」のプリント型算数・数学は「計算問題中心」で、カバーできていない学習領域が多いので、学ばない範囲が多くなり、本当の意味での先取学習にならない。小学中高学年と中学内容の先取は、「学習塾教材」を使って進めよう。

「中学英語」もどんどん先取しよう。小5になったら本格的に中学内容(高校受験英語)を学んで差し支えない。ただし、国語力が低い生徒は要注意だ。主語と述語、修飾語(形容詞・副詞)の概念がわからないと、英語を学習しても意味不明だからだ。そうでなければドンドン進もう。

こちらも注意点がある。「受験英語」と「英会話教室」の英語は別物だということだ。「英会話教室」は全く役に立たないなどと言う気はないが、「受験英語」を解かせるとあまりにも解けない人が圧倒的に多いという現実があるのだ。だから「英会話教室」の英語は先取学習としては不十分だ。

疑問に思うなら、難関私大文系の入試問題や難関国立大学の2次試験の入試問題を見てほしい。英会話のレベルではないことに気づかれるはずだ。英語の長文を、あたかも国語の読解問題を読むような速さで読めないと得点できない。日常英会話では使わない、ハイレベルな英単語・英熟語・構文などがテンコ盛りだ。難関大学ほど英語で書かれた内容もハイレベルになるので、「論理的な思考力」がないと読破できない。実は「英会話」より、教養ある大人レベルの「正しい日本語(母国語)」を使える力の方が役に立つ。

何度も書いているが、「数学」と「英語」の学力で、入れる高校や大学が決まってくる。小学校から先取すれば、十分な学習時間が確保できるので有利だ。

体験談で恐縮だが、小学5年の途中から中学英語の勉強を本格的に始め、中学入学時には中2の内容まで終えていたところ、後に「受験英語」で苦しむことはなかった。それどころか、いつも助けられた。

「親の決断」と「塾の先生」には大いに感謝している。先取学習の恩恵を十二分に味わせてもらったからだ。

高校受験をして難関大学を目指す小学生は、「算数・数学」は小4から、「中学英語」は小5から先取学習を始めよう。「数学」と「英語」が効果絶大だが、「社会」であっても特に歴史分野は大きな財産になるし、「理科」を得意にしておくと理系進学に有利だ。「国語」も語句・文法・古典などの知識分野は大いに威力を発揮するぞ。

中学受験しないから小5・6年は「宿題」や「プリント学習」だけなんて滅茶苦茶甘いぞ。後悔するぞ。