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三田学院

[2016年11月10日]

トランプ氏の勝利は何を意味するのか?

アメリカ合衆国大統領選でトランプ氏が勝利した。メディアが発表し続けた予想とは異なる結果となった。

そもそもメディアなど信用してはいけないのだが、いつも多くの人は騙される。今回メディアは意図して「物言わぬ有権者」の存在を無視し続けた。隠し続けた。真実がそこにあったにもかかわらずだ。

それは、裕福ではない白人の没落だ。

ここで白人とは建国当時から米国国民であったような、ヨーロッパ系の人たちのことだ。我こそが米国を建国し繫栄させてきたと考えていたような人たちだ。没落とは、ここでは平均的に豊かな暮らしができなくなったということだ。

白人中間上位層の没落は以前から報告されていた。しかし中間中位層や下位層の白人の没落は注目されていなかった。白人の没落はいよいよ限界に達し、この大統領選で顕在化した。

工場の海外移転や業務の海外委託で国内雇用が減少し、国内工場やサービス業店舗で外国人労働者が増え雇用が奪われる。

仕事を失った人が、かつて働いていた職場で移民や外国人労働者が働いているのを知れば、それを認める政治に対する不満は高まる。

これは欧州諸国でも同じだ。古くから欧州に住む人たちの没落が著しい。イギリスの脱EUが象徴的だ。移民や難民はウンザリだということになる。

日本も例外ではない。中間層の実質所得はドンドン減少している

Q:何を意味しているのか?

先進国の国民であるというだけでは豊かな暮らしを送れなくなったということだ。

ボーダーレス化という言葉があるが、国境線を超えた経済活動が活発化したことで、所得も国境を越えて、そして国籍を超えて調整されるようになった。確かに、移民や難民は治安を悪化させたかもしれないが、移民や難民だけが古くから住んでいた人たちの経済的な没落の原因ではない。

つまり、日本人(アメリカ人、イギリス人)は、日本人(アメリカ人、イギリス人)であるからというだけでは、先進国水準の暮らしが手に入らなくなったということだ。

Q:どうすれば良いのか?

EUから離脱したり、極端な自国優先政策を掲げる政治家を選べばよいのだろうか。

結果は大きく変わらないであろう。政治だけで世の中は変えられない。政治だけで、日本人(アメリカ人、イギリス人)は、日本人(アメリカ人、イギリス人)であるからというだけで先進国水準の暮らしが手に入るような世の中に戻すことはできないだろう。

Q:では、どうすれば良いのか?

国境に関係なく評価されるような人材になるしかない。それは、外国語が話せることでもない。外国暮らしへの適応力のことでもない。

確かな学力を身につけることだ。それが後々、世界のどこであっても評価されるような知識や技術を獲得できる力につながる。世界で通用する学力がなければ、先進国に国籍や永住権があるというだけでは、豊かな暮らしは手に入らなくなりつつあるのだ。

保護者世代はこのことに早く気づく必要がある。保護者世代が育ってきた、生きてきた世界とは違う世界を、わが子は生き抜かなくてはならない。

小学生や中学生のわが子に判断させるのは酷だ。まだそこまで高度な思考力・分析力・判断力は育っていない。保護者が導くしかない。

Q:具体的に、どうすれば良いのか?

「真の基礎学力」をつけさせてあげることだ。そのためにこそ、戦略的に教育投資すべきだ。

・学童保育代わりに「計算教室」や「英会話教室」などに通わせない。(本当に力がついているか?)
・学童保育代わりに「習い事」をさせない。(本当に必要か?)
・学童保育代わりに「部活」をさせない。(勉強をサボる口実になっていないか?)
・学童保育代わりに「大手駅前塾」に通わせない。(簡単すぎないか?)
・学童保育代わりに「大手中学受験専門塾」に通わせない。(難しすぎないか?)
・学童保育代わりに「大手個別指導塾」に通わせない。(本当に学んでいるか?)
・大学・大学院などの高等教育費や職業訓練費こそ高額で、今からしっかり準備しておく必要がある。
・ただし小中学生でも絶対に必要な教育費は削らないこと。ケチると後でさらにお金がかかる。

わが子が小中学生のうちは、「真の基礎学力」を獲得させるためにこそ、知恵と、時間と、お金を使え!