[2016年11月30日]
文部科学省が実施し公表した、「筑波大学人間総合科学研究科教授田中統治氏へのインタビュー概要」が興味深いので、一部を引用してご紹介する。
(才能教育について)
筑波大学附属駒場中・高等学校で行事等においてリーダーを務めた生徒を追跡調査してみた。すると、行事の企画から丁寧に合意を積み重ね、チームで物事を作るよい訓練の場になっている。これを小学校からの流れの中で調査してみると、やがて特別支援教育の方法論と結びついてくる。特別支援教育においては個別の支援計画に基づいて教育活動を進めている。このようなスタイルはエリート教育とは対極にあるようにいわれるが、才能教育という目線でみれば、一人ひとりの学習のスタイルの特徴にあった個別のメニュー、教材、学習環境を用意したりするという点では共通する。
(特別活動で身に付く学力について)
e-leaningはこれからどんどん進んでいく。環境は整ってきているし、事例も出ている。アメリカや韓国では日本よりも進んでいる。双方向的な学習のツールとして使われていくことが主体的な学び、自分の学びに合うものにつながる。e-leaningを中心とし、大学ともつながるようなモデルを作ってみてもいい。そうなると、学校の中で学ぶことは活用の学習、あるいは人間関係に限られる可能性もある。
同窓会などの様子をみると、受験エリートはあまり他人のお世話などをしない傾向がある。面倒な世話係を引き受けているのは、大体において行事で活躍していた生徒である。人間関係能力は学力とは別のものとされがちだが、これこそ行事の中で培われる、いわばメードインジャパンの学力だと考えている。外国の人たちが日本の学校を視察してもっとも驚くのは運動会である。時間どおりにあれだけのものが滞りなく進行するのは日本の学校教育の特徴である。日本の学者は学力とはみていないが、脳科学的にみれば、チームの中で人間関係、人の動きを見ながら学んでいく知性というものは、習得された学力である。
(全体を通して)
企業でも受験エリートを敬遠する傾向が見られる。人間のもつ能力の多様性に気付き、それを伸ばすための多様なカリキュラムを創っていかなければならない。すべての分野で求められているのは、学び続ける人材である。その意味では、「学ばないとどうなるか」ということも研究の余地があるかもしれない。