[2016年12月5日]
比較広告というのが面白い。
ある0塾のホームページに公立中高一貫の合格者数を比較した数値が掲載されている。
600 < 150
200 1
詳しい説明はないが、分子が合格者数、分母が教室数のようだ。
合格者数
教室数
200教室で600人の合格者を出しているのは都立専門のE塾(なんでもござれの駅前塾E塾ではない)のことだと思うが、1教室当たりの合格者数は平均すると3人しかいない。グループ全体で大量合格を謳っている割には、教室当たりの合格者数はさみしい限りだ。
仮に1教室当たりの受検者数が平均で30名だとすると合格率は10%ととなり、都立中全体の合格率を下回る。つまりE塾に通った効果はないに等しいどころか、E塾に通うとかえって合格可能性が低くなることを意味する。
対するO塾は1教室から150人以上の合格者を出しているから、E塾との比較では1教室当たりの合格者数は圧倒的である。しかし、0塾からの受検者総数が分からないので合格率は高いのか低いのかわからない。しかも、東大付属と区立九段を除くと合格者総数は60人を下回る。この区立九段の実績には千代田区民枠(A区分)の合格者をかなり含んでいる(A区分の合格者の方が多い)ようだから、本来これを差し引いて比較すべきであろう。また、東大付属は他の都立中とは性格が異なる学校なので合算すること自体に意味があるのかも疑問だ。
いずれにせよ、受検者総数を公表しない合格実績はあてにならないことがお分かりになるだろう。
本来なら、分母は塾の純粋な受検者総数とし、分子は純粋な合格者数として表示すべきであろう。
合格者数
受検者数
純粋なと書いたのは、その塾主催の短期講習のみの受講者や模擬試検のみの受検者を除くべきだという意味だ。複数の塾で重複して合格実績に含んで表示しては正しい数が把握できないからだ。
都内の公立中高一貫の塾別合格者数は重複数が多いことが知られている。平日は別の塾に通っていていて、土曜講座・日曜講座だけ他の塾に通っている場合や、模擬試験を受けただけの生徒がダブルカウントされているのだ。どちらの塾の実績なのか判然としない。模擬試験だけの場合は明らかに虚偽であろう。
しかし、一人でも多く自塾からの合格者としたい塾はナリフリ構わずダブルカウントする。ある大手公立中高一貫専門塾では模擬試験受検者を恒常的に自塾の合格実績に含めているという情報もある。また、週末講座中心のある塾の合格者数はそのほとんどが他塾とのダブルカウントだというウワサもある。このため、塾別合格者数を合計すると、大手塾の合格者数だけで定員をはるかに上回るという事態が起こる。中堅塾や町塾からの合格者も少なくないから、相当数がダブルカウントされているに違いない。
合格実績(合格者数)を参考にするのは注意が必要だ。生徒数を増やせば合格実績(合格者数)は自然に増えるからだ。
合格者数の多さは塾の合格力の高さではなく、塾の規模の大きさを示しているだけに過ぎない。
簡単なカラクリなのに、保護者も受検生も簡単にダマされる。
合格者数にダマされてはいけない。