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三田学院

[2016年12月19日]

適性検査入試の新潮流

都内の適性検査入試に静かながら新たな潮流が生まれている。新たな潮流は、?と?の2つだ。

?適性検査?を実施する学校が増え理系重視が鮮明となった。
?適性検査型入試を行う私立校が増えた。

受検生とその保護者の関心は、今のところ?のみに集まっているのではないだろうか。ところが、?の潮流は、すでに私立中学入試だけでなく、都内公立中高一貫入試を大きく変化させつつある。

まず関心の大きい?について説明しよう。もともと公立中高一貫入試は、「適性検査+作文」もしくは「適性検査?+適性検査?」(どちらかが作文)というのが主流であった。

しかし、都立中では共同作成問題化した2年前を境に、この「2科型」が減少し、適性検査?を追加した「3科型」が主流となった。

現在も「2科型」を堅持しているのは、23区内の主な都立中では、桜修館と白鴎だけとなった。必然的に、「2科型」では作文の比重が高くなる。換算後に傾斜配分されるとしても、試験時間は同じだから、受検生の立場からすると、作文のインパクトが大きい。

実際に、桜修館や白鴎への志願者は作文の準備に相当時間を割いている様子が見て取れる。桜修館や白鴎では、作文は独自問題となっていて、独自の対策が必要だ。受検生からするとかなりの難問であり、作文の得点力が低いと合格可能性は大きく減少する。

対する「3科型」では「適性?」に算数と理科が出題されることが多いため、受検生は特に算数の準備に比重をかけている様子が見て取れる。

小石川や両国では、算数と理科の得点力が低いと致命的となる。小石川の作文(適性検査?)は共通問題で、両国は独自問題だが、ともに言えるのは、作文力よりも、まず読解力が勝負を分けるということだ。作文力が必要ないと言っているのではない。読解力がないと小問で得点が稼げないばかりか、作文でも論点を外した内容となって得点できず、合格ラインに食い込めない。

次に、?適性検査型入試を行う私立校が増えたことについて説明したい。

増えた理由は2つある。一つ目は2020年の大学入試改革で思考力型入試が開始されることに対応するためだ。2つ目は、多くの受検生を集める都立中入試の受検生を取り込むためだ。

ここまでの説明では私立中学の都合が優先されているように感じるかもしれない。しかし内容を詳しく調べてみると、受検生のメリットも大きい。

A:私立中を無駄のない準備で併願できる。
B:一発勝負から解放された。

Aについては、共立女子(千代田区)、品川女子(品川区)が適性検査入試に参戦し始めたことが象徴的だ。都立中を目指しながら小6になっても大手私立受験塾に継続通塾していた層が相当数存在したが、今後はその必要性が大きく低下していくだろう。受験学年の小6になったら算数・理科・社会の私立型対策を捨て、適性検査型の受検対策に集中しつつ、有名私立への合格も目指せるということが画期的なのだ。この他にも、特待生制度を充実させた適性検査型入試を行う私立が都内を中心に50校程度まで増えてきている。中には、適性検査型の模擬試験で一定以上の偏差値になると「特待生」として受け入れてくれる学校まで出てきた。適性検査型入試は中学入試の支流ではなくなった。

Bについては、入試本番には独特の雰囲気があるということだ。模擬試験までは平常心を保てた受検生の中にも、本番当日に「魔物」に憑(つ)かれてしなう人が多い。多くの塾が2月1日の都内か、1月の千葉・埼玉で、適性検査型入試を行う私立校の受検を勧めている。合格しても入学する必要はない。あくまで、2月3日の都立中入試に勝利するために受検するのだ。合格通知を1枚でも持っていれば自信を持って2月3日の天王山に臨めるはずだ。

中学入試において情報収集は保護者の務めだ。

新しい流れに乗り遅れてはならない。