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三田学院

[2017年2月10日]

中学入試用の模擬試験

中学入試用の模擬試験について思いが頭を巡った。

?4教科型模擬試験の偏差値ランクに疑義あり
?適性検査型模擬試験の採点基準に疑義あり

模擬試験を敵に回すつもりはない。自力で作問するのは正直大変な労力が必要なので感謝している。今後も共存していきたいというのが本音だ。

しかし、受験生目線というか、ユーザー目線に立った上で検証してみると、いくつか「本当?」と感じることがあるので、いつものように毒を吐いてみる。

まず?だ。私立中学の場合、御三家クラスを除けば、複数回受検できる。しかも複数回受検した場合に、そのことが合否に考慮される。これは私立高校入試でも同じだ。しかも国立中や都立中と違い、水増し合格が横行している。これらがどこまで考慮されているかという疑問だ。正確な内部データを持っていないので検証できないが、偏差値で5ポイント程度インフレを起こしているように見える。また、実質定員割れで測定不能な低中偏差値の私立中は、目分量でランクしているのではないか。

もう一つ?だ。私立中学受験者と都公立中受検者の人数がかなり近くなってきている。今年あたりは逆転している可能性がある。私立中学の中には4教科型などと適性検査型を共に行っているところがあるので、実質的には適性検査型の中学受験生(受検生)のほうが多くなっているのではないか。今後もその傾向が続きそうだ。その中で、4教科型などと適性検査型を同じ偏差値ランク表で表示している模擬試験がほとんどだ。

そもそも、偏差値とは平均点を50として、得点の標準偏差(ばらつき)から、その人の相対的な位置を測定するものだ。母集団が違えば偏差値50の意味するところも、そこからの隔たりも違ってくる。

国立大学と私立大学は同じ偏差値表に乗せるのが不適切なように、4教科型と適性検査型を同じ偏差値表に乗せることも不適切ではないか。受験生(受検生)の判断を誤らせるのではないかということだ。

そもそも、都立中の偏差値ランク表示に疑義がある。例えば、ある模擬試験の偏差値ランク表における都立武蔵の難易度が低すぎる。かなり直感と乖離しているし、適性検査型模試のデータとのかい離が大きい。また、中低難易度の都立中の偏差値ランクが狭い範囲にかたまり過ぎている。現場感覚ではもっと開きがある。

ボーダーラインの目安を示すと以下のようになる。4科型の模擬試験の偏差値ランクとは、かなり違う。SランクとBランクでは偏差値にして10ポイント以上違う。特に男子は、受験校の選び方で、天国と地獄に分かれる。女子が激戦だと主張している根拠は以下の表を見てもらえば分かるだろう。ボトムラインが男子より高い。このランキングは直近の受検生のものだ。もちろん来年度は変更になる可能性があるが、Sランク、Aランク、Bランクの間での変動はほぼないだろう。

        <男子>    <女子>
S1ランク  小石川     小石川・武蔵
S2ランク  
S3ランク  武蔵    
S4ランク  両国

A1ランク  桜修館     両国・大泉
A2ランク            九段B 
A3ランク  大泉       桜修館
A4ランク  九段B     

B1ランク            富士
B2ランク            白鷗
B3ランク  
B4ランク  
B5ランク  白鷗・富士 

*ただし、武蔵以外の多摩地区の都立中を除く。

難関大学などへの合格者数とは一致しない。なぜなら、あくまで合格の目安だからだ。ボーダーラインの高低に関係なく、ズバ抜けて優秀な生徒が、余裕をもって受検してくる場合だってあるからだ。桜修館の男子と白鷗の男子がそうではないかと推察している。ボーダーラインと大学進学実績は必ずしも一致しない。私立でも茗渓学園や宝仙学園共学部などのように、入学しやすいのに大学進学実績が良い学校はたくさんある。誤解しないでほしい。学校の良し悪しのランキングではない。どの都立中も魅力ある学校だ。あくまで合格可能性のボーダーラインのランキングだ。

都立中あるいは都内の公立中高一貫と言っても、難易度的には大きな開きがある。「小石川か九段に行きたい!」と言われて、よく困惑する。「どっちを志望校にするの?」と聞きたくなる。まったく難易度が違うでしょ。「桜蔭か普連土に行きたい!」と言っているようなもので、並列にするのが適切でない。それにしても、男子受験生に白鷗と富士の人気が低い。教育の質に大きな差はないと思うけど。男子名門校の匂いが足りないのであろう。白鷗は旧東京府立第一女子だから、女子校としては超名門なのだが。

次に?だ。適性検査型模擬試験を塾経由で申込をして会場受検すると、採点結果やデータが塾へ戻される。当たり前だが、その結果は受検生やその保護者が想像する以上にくまなくチェックしている。

4科型などと違って、適性検査型の場合、論述式の解答が求められることが多い。4科型などに多い短答式と違って、記述式の場合は解答を良く読んで、実際に解答通りに行えばその結果が正解にたどり着くかどうか検証するように採点する必要がある。また完答でない場合に、どのように部分点を与えるかも基準が統一されていなければならない。どうも採点者によってバラツキがあるように感じる。

最もバラツキが気になるのが適性検査?だ。つまり適性作文だ。採点者によって甘かったり、辛かったりするように感じる。作文力と言うものは問題との相性で乱高下するようなものではない。ところが個人成績表の成績が乱高下する人がいる。あまりに納得がいかないので、この適性検査?は塾で再採点している。この方が断然安定するし、実力変化がつかめる。

同じことは適性検査?や?でも起きている。こちらも成績が乱高下するのは怪しい。

つまり、適性検査型模擬試験は採点者が違うと点数が違ってくる可能性があるということだ。

対策としては、違う系列の模擬試験を同じ時期に並行して受けるということだ。変化グラフのバラツキが大きい場合は「平準化」処理などの加工を施せば、そのノイズを小さくできる。ただし、多くの保護者には難しいだろう。

最後に、??共通だが、大手塾主催の模擬試験は要注意だ。母集団が少ないのが第一の理由だが、出題が塾生に有利だったり、処理がブラックボックスだったりする。目的が生徒募集だったりする。

適性検査型の塾主催の模擬試験も要注意だ。出題が塾生に有利、処理がブラックボックスだということ以外に、塾生の継続を目的としている疑いがある。方法はいくつか考えられるが、ズボシになるといけないので書かない。

いずれにせよ要注意だ。

一番信用できるのは過去問だ。ただし採点者の資質に問題がない場合に限る。