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三田学院

[2017年2月12日]

都立中に合格できない私立御三家合格者

私立御三家に合格していながら、都立御三家に合格できない中学受験生が少なからずいる。

業界ネットワークから入った最新情報でも確認できた。

ここで、私立御三家とは、開成・麻布・駒場東邦、桜蔭・女子学院・雙葉を指す。私立武蔵、渋幕、豊島岡などを含めても構わない。

また、都立御三家とは、小石川・武蔵・両国を指す。特に筆頭格の小石川が手強い。都立武蔵と両国は、私立御三家との併願が小石川ほど多くない。

何が起きていたのか?

私立御三家も都立御三家も一発勝負だ。違うのは、私立が4教科、都立が適性検査ということだ。さらに詳しく違いを述べると、私立御三家では社会や理科の知識(暗記)が得点源になるが、都立御三家では直接的には得点につながらないということだ。

つまり、理科・社会の暗記物の強さで私立御三家に合格できても、都立御三家には歯が立たないということだ。もちろん、私立御三家に合格して都立御三家にも合格する人はいる。都立を辞退する人は、そうした人だ。

違いは何か?

1にも2にも「算数力」だ。算数の学力で私立御三家に合格した人なら、適性検査型の出題方式に慣れるだけで、都立の適?・?で不合格になることはないだろう。

続いて「論述力」だ。記述問題が得意な私立御三家合格者なら、適?・?の論述問題で不合格になることはないだろう。しかし、適?は別だ。十分な準備なしでは合格者にはなれない。200字以上は論述ではなく小論文だから、別教科と思って対策するのが適切だ。

算数以外の力、特に理科・社会の力で私立御三家に合格した人なら、都立御三家に落ちる人がでても、全くおかしくはない。というよりアリアリだ。「詰め込み教育」の成功者では都立中御三家は合格できない。

都立御三家に合格するにはどうしたらよいか?

思考力・分析力・判断力のある読者なら、もう答えが頭に浮かんでいるはずだ。

そうだ。「算数力」なのだ。しかも「圧倒的な算数力」だ。小学校の算数テストでいつも100点が取れるくらいでは全く甘い。私立難関入試を算数の力で突破できるような算数力だ。

次に「論説力」だ。採点者を納得させる客観的で説得力のある論旨が展開できる力がないと合格できない。というよりも、都立中は、それができる受検生を求めている。それが新しい時代の、世界に通用する「真の学力」だと考えているからだ。

「なぜ?」と聞かれて即座に明快な解答ができる力が必要だ。「そう習ったから」とか、「テキストに書いてあるから」とか、「それが正解だから」などというのは、もはや学力とは呼べなくなった。ICTの普及で、知識には簡単にアクセスできる時代だ。単なる知識は価値がなくなったのだ。求められているのは「解決力」だ。それが適性検査では試される。

単なる「優等生」でも都立御三家には合格できない。絶対評価の時代に、全部「よくできる」児童なんて、掃いて捨てるほどいる。報告書にも20〜30%の配点があるが、適性?・?・?で得点できないと合格できなくなった。全部「よくできる」でも、適性検査問題を解けなければ、完全に不合格だ。

だいたい、公立小中学校の教育目標は「人間形成」だから、高度な思考力・分析力・判断力・表現力がなくても、全部「よくできる」は取れる。むしろ、品行方正なのに、全部「よくできる」にならないほどの「真の学力」しかないなら、都立中御三家に挑戦しない方が良い。痛い目に合うだけだ。「不合格」は履歴書に書かなくても良いが、あなたの記憶と経験から一生涯にわたって消すことはできない。

受かりそうもないなら受けないことだ。受けるなら受かる努力をしっかり積むことだ。

倍率が高いから不合格になるのではない。あなたに「真の学力」がないから不合格になるのだ。それは、先日お話しした、ある都立中の副校長とも一致した見解だ。どんなに倍率が高くても「合格する人は合格する」。立場は違えど意気投合した。

さて、都立中に合格するために特に重要な「算数の分野」を示すと次のようになる。

・平面図形(難関私立中入試レベル)
・立体図形(難関私立中入試レベル)
・規則性(難関私立中入試レベル)
・確率(難関私立中入試レベル)
・割合(難関私立中入試レベル)
・数の性質(難関私立中入試レベル)
*かつ、上記を組合わせた問題。

先日、大型書店の中学受験参考書売り場で、今年の適性検査問題とほぼ「そっくり」の問題が複数載っている「私立難関校受験用参考書」を見つけた。書籍名は書かない。というより、書けない。来年の出題に影響するかもしれないからだ。まさか本当にこの本を参考にしていないだろうね、と思うくらい「そっくり」だ。

重要なのは「公立中高一貫受検用参考書」ではないということだ。「適性検査問題を学習しても適性検査問題を解けるようにはならない。適性検査問題を解けるようになるには、私立難関校の問題(の特定分野)が解ける必要がある。」というのは、以前から何度も述べている持論だが、今年の適性検査問題を分析していて、さらに確信することとなった。

「そっくり」ということでは、適性検査?の課題文というか課題は、ここから探したに違いない、という発見もあった。

いずれも次の受検指導に即刻活かすつもりだ。特に、現在募集中の、新小6向けの「都立中合格・速習コース」は大幅な改革を実施する計画だ。

1に算数
2に算数(算数+資料の読取り)
3・4が作文(小論文・読解)
5が実験(と観察)