[2017年2月14日]
自宅学習時間に「3時間の壁」がある。
都立中高一貫などでは、「入学後に学校の授業についていくために必要な自宅学習時間は、1日2時間から3時間必要」だと説明するところが多い。あまり長い時間を提示すると受検生に敬遠されるかもしれないので、最低必要な時間を言っていると解釈するのが妥当だろう。つまり、本音は「1日最低3時間で、もっと必要」ということだ。
この「1日最低3時間」という値は、実に興味深いと思っている。公立中学に進んで、成績上位層をキープするのに必要な、中1での最低学習時間と同じだからだ。
公立中学生は高校受験を控えているので、中2以降は3時間では不足する。中2は4時間、中3は5時間が目安となる。机についている時間ではない。適度な休憩は別として、サボらず、ボーっとせず、居眠りせず、実質的に勉強する時間だ。
もちろん、問題演習するだけでなく、音読したり、暗記カードを作ったり、解法ノートを作ったりと言った作業的な学習時間も含めてよい。
結局、どんな道を進もうと必要な勉強時間は変わらないということだ。
もう一つ興味深いことがある。都立中高一貫に合格するために必要な、1日の家庭学習時間も最低3時間が目安だとということだ。もちろん、これより多く勉強している人も沢山いるが、合格に必要な最低時間が3時間だ。これくらいしないと、内容を十分に理解できない、定着しない、忘れてしまう。とても合格候補者にはなれない。
さらに塾などでの学習時間を含めると、1日平均の総学習時間は5時間を超えるだろう。もちろん、すべての土日も含めた平均時間だ。土日は勉強も休みだと考えるのは甘い。というより、そんな決まりは始めからない。土日や祝日、正月やお盆などを含めて平均した時間が平均学習時間だ。むしろ平日の勉強時間不足を埋め合わせるのに使うべきだ。
これは何を意味しているか?
つまり、小学校6年生時点で、1日の自宅学習時間が最低3時間を切る人は、?都立中などの進学校には進めない、そして?都立中などの進学校での勉強についていけない、ということだ。高校受験を目指す小学生でも同じだ。まず進学校には合格できないし、仮に合格できても授業についていけなくなる。
1日3時間できない人が「小石川に行きたい!」、「日比谷に行きたい!」などと軽々しく口にしない方がよい。陰で笑われるだけだ。まず1日3時間の壁を越えて継続できるようになったら、その「仮資格」がもらえる。
しかも、本気な人ほど「小石川に行きたい!」などとクラスメートに言ったりはしない。親友にすら言わない。なぜなら、志望校への「畏敬の念」があるからだ。「畏敬の念」は、しっかり準備をしているからこそ生まれる。「畏敬の念」のない人は合格から遠ざかる。これも高校受験や大学受験でも同じだ。
都立中の適性検査。「適性とは何ぞや」と思うかもしれない。都立中に合格できる適性とは、ズバリ「1日最低3時間の自宅学習ができる能力」だと思って差し支えない。そのような人の中から、より適性の高い順に合格するのだ。学習時間の長い人ほど、同じ時間なら密度の濃い人ほど適性が高い。合格者なら納得のいく数値基準だろう。難易度が高い学校ほど、高い適性が必要だ。
よほど強靭な心身を持ち合わせていないと、1日総平均7時間くらいが限界だろうから、ライバルもこれ以上はできない。ということは、毎日7時間やれば、まず間違いなく合格だ。学校別定員の120人や160人の中に入れる。都立中最高峰の小石川でもまず合格だ。白鷗や富士なら、総平均5時間を超えていれば、まず落ちないだろう。
ただ、ベースとして、勉強にかかわる資質は無視できないから、勉強時間だけクリアしても、すべての人が合格できるわけではない。ところが、資質が不足する人は、みごとに習慣的な1日5時間や7時間の勉強時間に耐えられないから、結局のところ、勉強時間と言う尺度に収斂する。
この資質というものが悩ましい。小6や入試直前期で失速する人には、小4から小5頃にその原因の芽がある。人によっても違うだろうが、何らかの原因がある。また小4などで、「どうあがいても、できない」状況に直面する人は、小3以前に原因がある。つきつめると、ドンドン過去にさかのぼってしまう。しかし、過去はやり直せない。過去は取り返せない。だから、原因はもはや直接処置できない。過去に失ったものは、他の機能などで補完するなどして、しのいでいくしかない。
資質は9歳か10歳くらいまでに決まってしまう。本人も親も周りも気がつかないうちに決まっている。中学受験するとハッキリ分かる。中学受験しなかった人は中学の定期テストや、高校受験でハッキリする。
さて、なかなか勉強時間が増えない人は、「勉強日記」をつけると良い。100円ショップなどで売っている、日付の入った「手帳」が使いやすい。1冊を「勉強日記」専用にすればよい。途中で頓挫しないコツは、簡潔に必要事項のみ記録することだ。
・開始時刻(始めたらすぐ記入する、でないと正確な時刻を忘れる)
・終了時刻(終わったらすぐ記入する、でないと正確な時刻を忘れる)
・学習内容(教科・教材と開始・終了ページだけでよい)
・学習時間(5分刻みの「切り捨て」が適当、後で集計しやすい)
これを小刻みに書いていけばよい。一行計算を始めたら書く。終わったら書く。図形問題を解き始めたら書く。終わったら書く。といった具合だ。書くのは数秒でできる。空いている時間はサボった時間だ。禁じ手は、「その日の開始時間」と「その日の終了時間」で勉強日記をつけることだ。中抜きやキセルは厳禁だ。含めたら意味がない。
もちろん食事時間や入浴時間は確保してかまわない。生活に必要な時間を差し引いたところから勉強時間を捻出するのだ。当たり前だが、テレビやゲーム、携帯いじくり時間はサボり時間だ。受検するなら習い事もサボり時間だ。中高生なら部活もサボり時間だ。考えているようで「瞑想」している時間も、勉強時間には含まれない。思考し続けているなら含めてよい。
満足いく学習ができたら、気晴らしなどしなくても、穏やかな気持ちで一日を終え、ぐっすりと眠りにつけるはずだ。
また、慣れてくると「学習計画」と連動させることができる。実は、「学習計画」と「進捗管理」ができるようになれば、もれなく成績が上がってくる。これは中学受験生も高校受験生も変わりない。大学受験生にも有効だと思う。
勉強時間が足らない人、成績が低迷している人は、ぜひ試してほしい。
そして、そこに「1日3時間の壁」があることに気づくはずだ。「凡人の壁」と呼んでもよいかもしれない。しかし慣れてくれば、3時間以上の勉強はつらくなくなる。むしろ、サボると落ち着かなくなる。そして、いつのまにか成績不振からも脱却できているはずだ。
まずは「1日3時間の壁」を超えよ!