[2017年5月12日]
今年度より東京都民が通う「私立高校の授業料が実質無料化」(注)される見通しだ。手続きを含む詳細は6月以降に判明しそうだ。
注)入学金、設備費、教材費、制服代、昼食費などは対象にならない見通しなので、無料化とはいっても、かなりの負担は残る。
小池都知事が、ある政党の要望に応えて決断したというのが都議会の議事録でも明白だが、ここでは政治問題を論じるつもりはない。もっと広い視点で考えてみたい。
焦点となるのは、「所得制限がかなり緩い」ということだ。そもそも低所得者向けの支援制度はすでに存在している。今回の無償化は幅広い所得層が対象になることが論点だと考える。
『私立高校』には、相対的に低所得者の子弟が多く通う「低偏差値・低学力校」だけでなく、中高所得者の子弟が多い「名門私立大学付属校」や「難関進学校」まで含まれるということを忘れてはいけない。
このニュースを目にしたとき、連想したのは以下のような長期予測だ。
・費用負担の公立私立間格差縮小で、不人気な都立高校があぶりだされる。
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・不人気な都立高校の統廃合を行う。
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・東京都の教員と設備をリストラし、“将来の”都の教育費削減につなげる。
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・厳しい都財政が続く中で、私立高校授業料無償化を縮小・廃止せざるをえなくなる。
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・実質定員割れの私立高校を統廃校に追い込む。都立校は新設・増員しない、できない。
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・私立高校への助成金を減らせることで、教育予算を削減できる。
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・都財政を改善したと主張する。
多くの都民はホントに嬉しいのでしょうか?
今回の措置で実質的に得をするのは、選挙に勝ちたい政治家や、家計に余裕のある家庭ではないか、という疑念が浮かんでくる。
学力の底上げのような、「教育政策」のど真ん中の対策にはなっていない。
いつまで続けるのか、続けられるか分からないけれど、学力向上に直接つながらないことに公費を投入しても、血税をドブにすてることにならないか。
「貧困対策」だというなら「貧困解消」に直接つながる政策に費用を投入したらどうだろうか。
都議会選挙対策のバラマキなのか?
都立高復権(都立中躍進を含む)を成し遂げた、石原都政の否定による人気取りか?
振り返れば、有権者はいつも騙されてきた。
杞憂だろうか?