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三田学院

[2017年6月29日]

人工知能が奪う低学力層の未来

AI(人工知能)の普及が加速し始めている。

代表的なのは、自動車の自動運転技術だ。

完全自動運転の技術ですら、すでに実証実験は最終段階を迎え、実験場ではほぼ完成の域に達している。実社会での実装は秒読み段階だ。

AIは産業革命を超える時代の変化をもたらすであろう。IT革命やスマホなどの通信革命とは桁違いに大きな変革が予想される。

完全自動運転技術は何をもたらすだろうか。交通事故の劇的な減少だけではない。自動車運転手の仕事がAIに奪われるということが起きる。

タクシー運転手やバス運転手という仕事はなくなる。最初は徐々に減り始め、ある時期からは急激になくなる。

物流トラックの運転手の仕事もなくなる。物流配達員の仕事もなくなる。郵便配達の仕事もなくなる。AIを搭載した「配達ロボット」が玄関先まで集配に来るようになる。

運転手だけではない。スーパーのレジ打ちもなくなる。買い物かごに入れたまま清算し袋詰めまでするロボットが現れるであろう。人手不足と言われる建設現場や介護現場では、AIを搭載した「人型ロボット」が活躍するようになる。飲食業や販売業であっても例外ではない。

人でなければ判断できないような高度で複雑な判断業務を伴わなければ、いずれAIに仕事を奪われる。

米国では司法の現場にまでAIが進出している。近代の戦争は無人戦闘機が主力となった。

AIが普及すると、高い知的な判断を必要としない、単純労働の仕事、肉体労働の仕事は、真っ先にドンドンAIに奪われる。

オフィスワークですら例外ではない。電話セールスなどはAIでできる。電話での注文受付もAIでできる。データ集計もAIでできる。経理の仕事もAIでできる。人事評価もAIでできる。販売戦略もAIにできる。AIは、ほぼなんでもできる。

多くの人は今ある仕事にはありつけなくなる。ところが、新たな仕事がドンドン生まれることはない。多くの人は仕事にありつけなくなる。移民や外国人労働者ではなく、AIに仕事を奪われる。規制や障壁でAIに仕事を奪うななどということはできない。

「計算ミス」、「忘れ物」、「配布物を紛失」するような人は、真っ先にAIの餌食になる。

「現状」を正しく認識できず、「次の一手」を適切に判断できず、「数手先」を読めない人は、AIと勝負できない。

経営者や株主は、そんなアナタの代わりにAIを雇うことを経営判断として断行する。AIのコストが下がれば、計算ミスをしないアナタであってもお呼びでなくなる。

AIは、知的レベルの高くない仕事に就くことが多い低学力層から未来を奪う。そして、次に中学力層の未来を脅かす。

高学力層も安心はできない。AIを開発したり、高度に利用できる人以外は、低学力層と同じ運命をたどることになる。

10年前には、AIはプログラマーの能力を超えた能力は持ちえないと思われていた。ところが、AIはプログラム超えて、プログラマーを超えて、自ら学習する力まで獲得した。もはや単なる機械やロボットと考えてはいけない。

AIの普及は、まず低学力層の未来を奪うことで、今ある格差を拡大させる。そして、中学力層の未来を脅かしながら格差を加速させる。

低学力層の未来は、今以上に厳しくなるのだ。中学力層も例外ではない。高学力層も安泰ではない。AIの学習能力や判断力よりも上を目指し続けなければ、追い越され、仕事を奪われる。

部活や習い事にウツツを抜かしている場合ではないのだ。

死に物狂いで勉学に励まないと、アナタの経済価値は維持できない。すでに同じ努力をしていたのでは、親世代と同じ水準の生活ができなくなってきている。それが加速する。多くの人が最低限の生活の糧を手に入れられなくなるかもしれない。

多くの人が貧困に落ちて、納税できなくなると、税収が激減する。先立つものがなければ、セーフティー・ネットも維持できなくなる。

かつての受験競争とは全く別の、もっと根本的な競争に、アナタはさらされているのだ。AIはアナタの尊厳ですら奪う。「人間であれば、人間らしい最低限の生活が保障される。」それは憲法の中だけで通用する夢物語になるかもしれない。

小学校生活を楽しもうとか、中学校生活を充実させようとか、そんなノンキなことでは将来はないのだ。

『全力をもって勉学に励み、余った力があれば息抜きをする。』

過去も現在も未来も、これしかなかったし、今後もこれしかナイのだ。

しかも、新たにAIがライバルに加わる。椅子取りゲームはさらに熾烈になる。

息抜き(部活、習い事、スマホなど)がまず先に来る人に、明るい未来などないのだ。