[2017年7月6日]
小学校での英語学習の必修化で、にわかに子ども英会話教室が盛況だそうだ。
しかし英語学習の低学年化は遅きに逸した感が否めない。なぜなら、かなり近い将来に英会話学習の必要性はなくなるからだ。
英語に限らない、スペイン語や中国語に限らない、少数民族の話す言語でさえ、『外国語会話力』を身につける必要はなくなる。
なぜか?
人工知能(AI)を搭載しビッグデータにも瞬時にアクセスする翻訳機が、他言語と母国語を瞬時に通訳・翻訳するようになるからだ。これまでの機械通訳とはレベルが違う。ナチュラル・スピードで通訳する。誰かが話した外国語を瞬時にアナタの母国語に通訳してくれる。そして、アナタが話す母国語を瞬時に外国語にして相手に伝えてくれる。
そのインターフェイスの進化も著しい。腕時計程度の大きさの端末まで小さくなる。常時携帯に支障はない。ミニマイクとイヤホンを通して、話す言語が違う相手と会話をすることができる。
トラベル会話なら朝飯前だ。複雑な商談、専門家同士の会話、訴訟、何でもこなす。
しかも、英語だけではない。スペイン語も、中国語も、ロシア語も、フランス語も、ドイツ語も、アラビア語も、1台で通訳してくれる。
そうなると、よほどのマニアでない限り、外国語「会話」学習などしなくなる。人は便利な方に必ず流れる。アナタがスマホを手放せないように、いずれAI携帯型翻訳機を手放せなくなる。というより、スマホのアプリになるだろう。
誰も外国語会話学習などしなくなる。キッチンにガスコンロがあるのに、家の中で原始的に火を起こす人などいないのと同じだ。
もはや外国語会話学習は時代遅れなのだ。明治時代になって「散切り頭」に抵抗した人と同じではないのか。いまだに島国発想のままなのか。
誤解しないように申し添えるが、「外国語学習」の必要性を排除するものではない。むしろ、これまで同様に必要だ。「外国語“会話”学習」の必要性が、なくなるだけだ。
AI携帯型翻訳機のおかげで、気がついたら、まったく苦労せずに外国語会話をマスターしていた、なんてことも起こるだろう。AI携帯型翻訳機のお世話になっているうちに、いつの間にかお世話にならなくても、という意味だ。外国語会話力などと言うのは、そんなものだ。
ずいぶん前からのことだが、スイスの学生は、夏休みなどにバイトをしながら多言語を身につける。フランス語圏に住んでいる人が、ドイツ語圏でアルバイトする、イタリア語圏でアルバイトをする。何度か繰り返しているうちに、フランス語以外にドイツ語やイタリア語も話せるようになる。観光関係のアルバイトをすれば、どこにいても英語も話せるようになる。しかもアルバイト代をもらいながらだ。授業料を払ってまで外国語会話をマスターする人など珍しい。
それも今後はどうなるか興味深い。ジュネーブからベルンへ、チューリヒからルガノへ、わざわざ交通費や宿泊費を払ってまで行く必要さえなくなるのではないか。美しいアルプスの登山口まで行ってアルバイトするのなら、別の価値があるかもしれない。
今でも、外国語が話せても適切な判断力がなければ意味がないでしょ。わかり易く言うと、外国語が話せてもアホはアホのままでしょ。大事なのは外国語が話せることではないのですよ。というか、今後はさらに外国語会話力の価値はなくなるのですよ。
産業用ロボットの性能が上がったら、昔ながらの溶接工員や塗装工員は消えたでしょ。判断ミスや居眠り運転する運転手より、安くはない賃金を要求する運転手より、完全自動運転技術の方が選ばれるでしょ。旅客機のコックピットのハイテク化で、この世に航空機関士は一人もいなくなったでしょ。
貴重な時間と貴重なお金は、もっともっと有効に使うべきなのだ。
それが、次の時代を生き抜くカギだ。