[2017年7月7日]
カナダへの海外留学から帰国したばかりの生徒と、お話しする機会があった。難関大学への進学を希望している私立名門女子中高一貫校に通う生徒だ。
久々の再開でその成長ぶりに驚いたのはもちろんだ。カナダでの思い出についての話しが一段落した後、大学受験に向けての話題になった。海外留学で、すっかり学力が落ちてしまったので、受験勉強をやり直したいのだという。
海外留学から帰国したばかりの生徒なので、失礼にならないように、「数学?」と尋ねると、語気を強めて「英語!」という回答が返ってきた。海外留学で磨いた英会話。その「英会話の英語レベル」が低く、このままでは難関大学の英語を突破できないと客観的に判断しているようだった。
彼女は英語が得意だ。だから海外留学にも挑戦した。その点は誤解しないでほしい。しかし、海外留学で得た英会話力などというものは、少なくとも大学受験には役に立たたない程に低レベルなのだ。
海外留学で日常会話のレベルは格段に上がった。外国語である英語で授業を受けたり、意見を述べたり、級友と議論もできたりするようになった。しかし、難関大学の入試英語には歯が立たない。入試英語の方が格段に英語としての難易度が高いのだ。
まだ腑に落ちない人がいるだろうから、国語に置き換えてみれば理解しやすいだろう。
国語力のレベルを下から表示すると以下のようになろう。
?日常会話力
↓
?日常読文力(表示、標識、広告など)
↓
?語彙、文法、国語関連知識
↓
?文章読解力(論説文、随筆分、文学作品など)
↓
?文章表現力(記述、論述、小論文など)
中学生や高校生の海外留学で身につく言語力は、せいぜい?の一部までであろう。多くの人は?と?レベルで終わってしまう。これでは、?や?を含む、高い「4技能」を習得したことにならない。現行制度の大学入試はもちろん、2020年の大学入試改革後の4技能テストにも立ち打ちできないだろう。
英会話スクールなどは、もっとレベルが低いのではないか。ほとんどの場合、?で終わっているのではないだろうか。
そのことは何を意味するのか。先のレベル?〜?を見直してもらえばわかることだろう。
今ある低レベルな英会話学習は近々崩壊する。分かっている人は、もうわかっている。分かっていない人たちが、まだしばらく英会話産業の餌食になり続ける。
どうしたら良いのか、どうしてはいけないのか、少しは参考になったであろうか。
海外留学するなら大学院レベルが勧めだ。学士や修士の学位を取ってから留学しよう。それなら、レベル?まで身につく可能性が高いだろう。
中学生や高校生くらいまでなら、短期留学というか語学研修旅行を繰り返した方が効率的だ。ホームシックにもならずに済む。国内で英語力を磨いて、海外で実践してセルフ・チェックし、また国内で英語力を磨いて、海外で実践というやり方だ。夏休み以外に、春休も使える。連続性や継続性が維持できるから、英語を含め、学業全般を「やり直し」しないといけなくなるリスクも小さい。
国内で英会話を学ぶために、英会話スクールに通う必要はない。デキのよい英会話教材は書店などにあふれている。英会話が得意な友人たちは、例外なく自力で英会話力をモノにしている。しっかりとした音声教材付きなら大丈夫だ。
1日あたりの時間は10分程度で良い。とにかく毎日地道に続けることだ。BGMを英語ニュースにして流し続けても良い。続けていると耳が慣れる。そして、聞き取れた単語や言い回しを口にするのだ。
筑波大学附属中(筑附)や都立両国高校附属中では、英語の授業にスティービー・ワンダーなどの英語歌を取り入れている。また、筑波大学附属中(筑附)や都立小石川中等では、NHKの基礎英語を自宅で学習するように指導している。これだけで、英語でコミュニケーションできるようになる。激安だ。しかも大学受験にも通用する。
多くの中高一貫教育校は海外語学研修制度を持っている。都立中にもある。短いながらも現地校で学べる。ホームステイもする。もちろん各家庭に日本人は1人ずつのステイだ。これに自分で計画した海外語学研修旅行を組合わせれば、さらに効果が上がる。毎年のように行けばよい。とても現実的で犠牲も小さい。他の教科の学力も落とさずに済む。
何しろ留年しなくて済む。留年しなくて良い場合でも、国内のハイレベルな数学や理科の授業を逃さずに受け続けられる。人生を踏み外すリスクが小さい。