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三田学院

[2017年9月30日]

常識のような非常識

受験における常識とは何か?

・中学受験せず高校受験で大丈夫。
・中学受験の準備は小5(新小5)からで間に合う。
・女子は中学受験などしなくてよい。

・高校受験の対策は中3からで間に合う。
・部活をしていると高校受験に有利。
・部活をする子は勉強ができる。

これらを常識だと思っている人が、まだまだ少なくない。

中学受験せず高校受験で大丈夫

→中学受験を選べない地域では消去法的に正しいかもしれないが、少なくとも首都圏などの私立学校への通学圏となっている地域では正しくない。学力上位層から順に抜けていくから、地元公立中学に残る子はそれなりになる。港区では約45%が私立中学等へ進むから、公立中学に残っているのは学力低位層が中心となる。授業のレベルも、級友のレベルも、それなりになる。それで満足できるなら、何も言うことはない。しかし、学業に限らず、競い合ってこそ、目標となるライバルがいてこそ、伸びる。その機会を自ら捨てることを意味する。大学受験や就職試験では、私立中学などに抜けていた競争相手と再び競い合うことになる。その時になって意味が分かっても遅い。

港区のある公立小学校では、小4になると宿題を「きちんと」やってこない子の比率が50%に達する。完全に二極化している。わが子の実態を知らない親も多い。「宿題やった?」、「うん、やった」、実はやってない、というのが、宿題をやらない子、宿題をさせられない親の実態だ。宿題をやらない子のほとんどは地元公立中学へ進む。長年宿題をやってないから怖いモノなどない。中学でも提出物を出さず、通知表の成績は地を這い、高校はどこでも良いとなる。

中学受験の準備は小5(新小5)からで間に合う

→小4まで自宅でしっかり学習指導できる家庭なら間に合うかもしれない。しかし、かなりの高学歴な保護者でも、しっかりと学習指導するのは難しい。共働きで母親も忙しいと、十分に目が届かない。同じ才能なら、新小4から本格的に対策している子との差は歴然となる。同じく、もっと低学年からしっかり対策をしている子との差は天文学的となる。つまり、開始が遅れると、才能が低い子にも負けることになる。今どきは、小4開始でも遅いくらいだ。

女子は中学受験などしなくてよい

→江戸時代ならまだしも、男女平等の現代においては、何の根拠もない。「男尊女卑」思想としか言いようがない。親が「男尊女卑」してどうする。そもそも男子も女子もない。むしろ女子こそ積極的に中学受験すべきだ。なぜなら、人気のある私立の女子校は高校募集を行っていないところがほとんどだからだ。それなりの都立高校に進めないか、進めなかった時の選択肢が恐ろしいほど貧弱だ。まだ男子の方がましかもしれない。男女を問わず、元々かなりの学力の持ち主で、公立中学でもしっかり学力を伸ばせるなら、なんとかなるかもしれない。しかし、女子こそ、高校受験は、かなりリスクが大きい。

高校受験の対策は中3からで間に合う

→どこでも良いから、わが子に校風が合った高校に進めれば良い、というならアリかもしれない。高校全入時代だから、よほどでないかぎり、どこかの高校には進める。しかし、中3からの準備では、学力が相当高くても、都立トップ高や私立難関校はもちろん、進学校には全く歯が立たない。学力が高くなければ、教育力が貧弱な不人気私立高校に吸い込まれてしまうことになりかねない。高校受験も、小4春にはしっかり計画を立てて準備を開始しないと、「どうして、この子、こんなコトになっちゃったの?」ということになる。その時にはもう手遅れだ。

部活をしていると高校受験に有利

→そもそも、学力がない子なら、底辺私立高校の「部活推薦」や「部活加点」で救済されるかもしれない。学力勝負で高校受験に挑むなら、活動日数や活動時間数が多い部活、引退時期が中3の中盤以降になるような部活に入っていると、総合的にかなり不利だ。勉強時間を蝕むからだ。昔は野球部のリスクが高かったが、今は「吹奏楽部」が最もリスクの高い部活の一つだ。引退時期が中3の秋冬というのが多いからだ。中3の秋には受験校が絞られる。その前の受験勉強期間がまったくない。本来の能力より1ランクや2ランク下の高校に進むことになる

部活をする子は勉強ができる

勉強ができる子は部活もできることが多いが、逆は「真」ではない。高校数学の1年で学ぶ「逆・裏・対偶」を知っていればわかる。これがわからない保護者には説明しても無駄かもしれない。部活をいくらやっても学力はつかない。勉強しないと学力はつかない。部活をやっても、しっかり勉強できるならアリだ。しかし、一部の才能に恵まれた子にしか実現できない。ここで言う「才能」とは、勉強の才能のことだ。部活の才能のことではない。限られた能力で部活を熱心にやれば、自ずと勉強はおろそかになる。高校受験で、己の限界とまではいかなくても、理想とするような高校に進みたければ、部活動にうつつをぬかしている暇はない。

今日は、代表的な「常識のような非常識」をご紹介した。ほとんどは過去の「スタッフ日記」で詳しく扱っているので、参照いただきたい。

受験の世界では、非常識では勝てないが、常識に気がつくのが遅れても勝てない。受験の世界で成功する親子は、親子そろって常識がある

しかも、ぬかりない。小3までしっかり家庭で学習訓練した上で、新小4から本格的に受験準備に入る。この時点で勉強態勢が出来上がっている。

小3まで野放し状態にしたり、学習教室に通わせて安心したり、進学塾のジュニアコースなどに丸投げしたりはしない。そんなことでは、中学受験で私立難関校や国立附属中・都公立中高一貫校への道が絶望的となる。高校受験でもトップ校や難関校が夢のまた夢となる。

大手進学塾に入れたら何とかなるかというと、そんな甘いものではない。すでに準備万端整った天才たちに追いつこうと無理をし、組分けテストに追われ、「思考力」をつけるどころか、「思考停止」の仕方を身につけてしまい、取り返しがつかなくなる。「真の学力」ではなく、「苦々しい体験」と「悪癖」を手に入れることになる。小4で、新小5になる前に、十分な結果を出せなければ、つまり「選抜クラス」に余裕で定着できないなら、即退塾した方が良い。通う意味がないどころか、通い続けることが有害となる。中学受験難民となる。そこまで行くと、高校受験でも逆転はない