[2017年10月24日]
幼児教育の無償化と高等教育の無償化が注目を集めた。
公費を投入する限り、それに見合った公的リターンが必要だ。
高校無償化はどうか?
前の日記でも書いたが、実質高校全入時代に高校無償化を行う意味は何かを考えなければならない。経済的理由で高校に進めない層はごくわずかだから、幅広く高校授業料を無償化することはバラマキ以外の何物でもない。かえってモラルの低下や学習意欲の低下をまねきかねない。学力低下の副作用が懸念される。
幼児教育の無償化はどうか?
現在日本では幼稚園や保育園の年中年長の就学率は95%を超える。これまた全入に近い。経済的理由で幼児教育を受けられない層もまたごく僅かだから、幅広く無償化することはバラマキ以外の何物でもない。
もちろん保育園料の無償化は母親の就労を後押しすることにはなる。ただ無償化するよりも待機児童の解消に力を入れる方が母親の就労支援になるから、無償化はやはりバラマキにしかならない。
両親ともにフル就労すると、乳幼児期の知育に悪影響が出る恐れがある。この時期に知的な発育を促すには、やはり保護者が関わった方が好ましい。両親ともにフル就労する社会を目指すのであれば、父母共に乳幼児と過ごせる時間を確保できるような働き方改革が同時に望まれる。そうでなければ、幼児教育に熱心に取組める家庭とそうでない家庭で学力格差が拡大しかねない。
教育の無償化はいかに進めるべきか?
大学や大学院の授業料の支援や奨学金の拡充が理にかなっている。向学心旺盛で、成果を期待できる学生こそ支援すべきだ。最も高い公的リターンが期待できる。財源は消費税である必要性もない。高い学力やスキルを持った人材によるリターンは幅広く国民を潤すが、高額所得者や投資家こそ受け取るリターンの額が大きくなるので、所得税こそふさわしいかもしれない。
消費税を使って幼児教育や高校教育を無償化しても公的なリターンはさほど期待できない。高齢者の資産を若年層に再配分するという効果は一定期待できるが、それはそもそも相続税の役割である。わざわざ消費税に役割を担わせる必要はない。
有権者は本当に必要な政策は何かを見抜かなければならない。同じように、有権者である保護者は本当に必要な教育上の取り組みとは何かを知らなければならない。一見好ましく見えるキャッチコピーは、よくよく考えてみると胡散臭いことが多い。政治家ではなく、有権者こそ、あるいは保護者こそ、身を切る思いで将来を考えてみて、初めて正しい答えが見えてくるのだ。