[2017年11月6日]
都立中の老舗、白鴎が大改革を実施する。
・特別枠で内容を大幅に見直し、実質「帰国生・在京外国人入試」とする。
・一般枠で、適性検査?を追加して、主要な都立中と並ぶ選抜方式とする。
今年度の受検生に大きな影響を与えそうなのは２項目だ。
・漢検などの資格保有者が特別枠で応募することができなくなる。
・適性検査?の追加で、報告書と適性?（適性作文）の割合が５０％に低下する。
このうち、適性検査?の追加の影響を受ける人が多くなりそうだ。
・報告書２０％、検査?３０％、検査?３０％、検査?２０％
報告書が満点で、適性検査?（適性作文）での得点力が高ければ合格できた白鴎だが、今年からは状況が大きく変わる。
通知表の成績が良くて作文が得意でも合格できなくなる。これまで以上に算数の力が必要になると予想している。
国公立大学への合格者数でノルマがかかる都立の進学校としては、当たり前の改革だろう。これに加えて、伝統の国際理解教育をよりバージョンアップした教育を目指すことで、進学実績の幅広い改善を目指しているのであろう。
都心東地区としては、まず都立名門の両国との競争がある。次に都心地区としては、小石川や九段との競争がある。また、同じように文系色が強い桜修館との競争もある。
立地的に直接競合しない「立川国際」の強みを参考に改革を目指す道を選んだということだろうか。もともと女子に人気があったので、「国際化・グローバル教育」の教科戦略は的を得ているともいえる。
しかし、私立中を含め、昨今の「国際化・グローバル教育」人気には懸念を持っている。小学校での英語教育の必修化の動きが注目されているのであろうが、「猫も杓子も」の感が否めない。
現場感覚としては、「算数や数学はダメだけど英語なら」という考えの人が多く含まれている感がある。もっと言うと、「算数・国語・理科・社会がどれもダメ」だけど、「まだ英語なら」なんとかなるかも的な空気がある。
そんなに甘くないのではないか。逃げているだけではないか。英語に気が取られて、国語教育が疎かになりつつあるような気配も感じる。正しい日本語が使えない小学生が増えている。これはネットやスマホの普及、ゲーム機の普及も影響していると思うが、英語ができれば国語はできなくてもいいのではないかと言う誤解があるようにも見える。
そもそも英語を含め、国際化教育に真摯に取り組んだこともない親子が大多数を占めているから、ほとんどは成功しないだろう。英語アレルギーや外国人アレルギーの人が少しは減るかもしれないことくらいしか期待できないのではないかという気がする。
そもそもＡＩの進歩で、英会話自体が小型携帯端末の利用でできるようになりつつある。一方で、日常的に英語を話す機会がほとんどない人が英会話を身につけるのは容易ではない。
「ゆとり教育」が失敗したように、「国際化・グローバル化教育」も失敗しないか。失敗と言うより、ほとんど効果がなかったということにならないかと心配している。
英語に逃げるのではなく、算数・国語・理科・社会に加えて英語もしっかりヤル。数学に加えて英語もしっかりヤル。国語に加えて英語もしっかりヤル。こういう姿勢でなければ「国際化・グローバル化教育」は上手く行かないのではないか。
帰国生の中には、日本語が怪しくなってしまった人が含まれる。海外で初等教育を受けた人の中には、算数が怪しくなってしまった人が含まれる。「国際化・グローバル化」だから、それでいいのだ的な雰囲気が漂うようになったりはしないか心配だ。
幕末や明治維新期の志士たちの方が、もっと真剣に命懸けで「国際化・グローバル化」に取り組んでいたのではないだろうか。彼らは自然科学や社会科学を学ぶために「国際化・グローバル化」を推進したことを忘れてはいけない。
「国際化・グローバル化」は新しいようでちっとも新しくない。受かれた気持ちでは身につかない。地に足がついた「国際化・グローバル化」教育こそ大切だ。毎日コツコツ取組める人でなければ何事もモノにはできない。それは「国際化・グローバル化」も同じだ。
どこもかしこも、猫も杓子も「国際化・グローバル化」を始めたら、強みではなくなる。またいつか来た道に戻るだけだ。
数学的に言うと「ナッシュ均衡」に陥るだけだ。
これを打ち破るには実力をつけるしかない。実力がなければ「国際化・グローバル化」もない。
実力がないのに「国際化・グローバル化」するとどうなるか。世界各地に「カオス」と化した地域や国があることが参考になろう。個人も同じだ。
まずは、江戸時代なら読み書きソロバンでしょ。つまり、今なら算数と国語でしょ。まずは、それをしっかりヤレるかどうかでしょ。先に「国際化・グローバル化」ありき、ではないでしょ。アヘン戦争が教訓でしょ。大航海時代の覇者であったポルトガルの没落も教訓でしょ。
適性検査?を追加する白鴎なら、その心配はないだろう。安心して挑戦するがよい。