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三田学院

[2017年11月13日]

都立武蔵という選択

久しぶりに多摩地区まで脚を運んだ。都立武蔵高校と附属中を訪れるためだ。

思いのほか遠かった。通学時間帯でみると次のようになる。

田町7:09発「京浜東北」→東京7:17着→東京7:23発「中央線快速」→武蔵境着7:57 合計49分

武蔵境駅から武蔵高校までは徒歩10分。田町駅までが徒歩10分なら合計で69分かかる。地下鉄三田駅を使うと、もっと時間がかかる。都心4校との時間差は大きい。

小石川:三田→千石 19分
九段:三田→九段下 21分
白鴎:三田→蔵前  17分
両国:田町→錦糸町 24分

郊外立地校と比較してみよう。

桜修館:三田→都立大学 33分
富士:赤羽橋→中野富士見町 33分(三田から39分)
東大付属:赤羽橋→西新宿5丁目 18分(三田から28分)
大泉:赤羽橋→大泉学園 48分(三田から55分)
武蔵:田町→武蔵境 49分

意外な穴場が東大付属だが、西新宿5丁目から13分ほど歩くことになるので、徒歩3分の小石川や徒歩5分の白鴎にはかなわない。最寄駅から校舎までの時間、乗り換え時間などを考慮した、片道の通学時間は次のようになろう。

30分以内:小石川、九段、白鴎
40分以内:両国、東大付属
50分以内:富士、桜修館
60分以上:大泉、武蔵

小石川、九段、白鴎、両国。学校説明会や授業公開に気軽に参加できるのはこの4校だ。必然的に問い合わせが多い。

桜修館だけは一部に根強い人気がある。麻布地区の住民だ。遠くないのだ。

広尾→都立大学 15分(乗車時間)
六本木→都立大学 18分(乗車時間)

都心地区には小石川や両国という魅力的な学校があるのだから、あえて武蔵や大泉を選択する理由はみつからないのだろう。

都立武蔵、授業見学や学校説明会などに行けば、その魅力の虜になる人がいても不思議ではない学校ではある。ただしこの地域、名門高校である都立西高校や都立国立高校こそ目指すべき道という考えの人も多い。そもそも中学受験するには通学が便利とは言えない地域でもある。

某都立中専門塾の地盤地域だから、その某都立中専門塾の出身者ばかりかとういう懸念もあるかもしれない。

しかし、駅前にある某都立中専門塾の「武蔵境教室」をのぞいてみると、都立武蔵中合格者2名、立川国際中合格者1名の3名の都立中合格者が張り出されているだけだ。高校受験の合格者もパッとしない。進学校の名前は見当たらない。有名中堅校の名前も見つけられない。

残る約30名は適性検査入試を実施する私立中合格者だ。宝仙理数インターの合格者すら一見して見つけられなかったから、残りの30名以上は都立中への合格可能性はほとんどなかった生徒だろう。

都立武蔵の最寄駅の教室でたった2名の合格者数なのに、どうして、都立武蔵中の合格者数が80名に達するのだろうか。

他塾の生徒でありながら、その塾の模擬試験受験者をすべて合格者数に含めているという説があるが、どうなのだろう。合格してクラスメートの出身塾を聞いてみれば、その真偽ははっきりするだろう。

ちなみに小石川合格者数約40名を謳っている別の塾があるが、同級生を探してみても10名程度しか見つからないという報告がある。今年度の1年生の報告だ。

その小石川だが、その某都立中専門塾の合格者数約60名というのも、数えてみるとかなり乖離が激しいらしい。クラスに高々数名しか確認できないから、どう多く見積もっても20名程度であろうというのだ。

心配する必要はまったくない。実態は、私立受験大手塾を含めても、大手塾からの合格者は半分を超えていない。これは都立中の広報担当の先生方々から聞いたことだから間違いない。大手塾の宣伝広告の合格者数はかなり胡散臭い。相当数が重複カウントされている。模擬試験を受けただけの人まで合格者に入っていたりすると聞く。

合格者数の宣伝広告とは裏腹に、実態には、大手塾に通わなければ都立中に合格できないというわけでないことが明白だ。むしろ、受検生の総数から見れば、大手塾の『合格率』は著しく低いということが容易にわかるであろう。本気で都立中に合格したいのであれば、大手塾へは行かない方が賢明な選択だ。

数えきれない不合格者がでるから、合格する自信がない人が通うのであれば、「みんな落ちるから、不合格になっても大丈夫」という意味での安心感はあるだろう。

しかし、なぜ不合格者が数えきれないような塾に通うのか、通わせるのか理解し難い。

不合格を見通した親が、わが子が少しでも夢を見るなら、そうさせてあげようということだろうか。しかし、不合格になるということは、わが子の心に深い爪痕を残すことも知っておくべきだろう。

親が「落ちたら地元公立中学で良いのよ」と言うのを聞いたら、ほとんどの子は都立中に合格できなくなる。小学生とはそういうものだ。

合格に必要なことを自ら理解し適切に実行できる小学生は少ない。合格しなくても良いのなら、つらい受検勉強に全力で立ち向かったりはしない。親の顔色を見ながら、ヤッタふりして適当なところで切り上げるだけだ。正しく導いてあげなければ合格はない。

適性検査とういものは、対策の仕方を間違うと何も残らないし、高校受験の足しにもならない。都立中不合格者の多くが高校受験でも失敗している。的の外れた受検対策を続けたからだ。的の外れた対策をするなら、しない方がまだましだ。無駄な受検勉強に時間を割いて、有意義な小学生生活を送る機会を台無しにしてはいけない。

不合格になる子と競い合っても意味がない。高校受験にも、大学受験にも言える真理だ。この点を間違ったら不幸になる。

不合格になる子と一緒に学ぶことは危険であり有害である。

あんなにいい加減な勉強しかしていない人がいるのだから、少しはサボっても大丈夫だろう。やることをしっかりやってない人がいるのだから、この辺でやったことにして終わらせても良いだろう。塾で真面目にやっていないことを親には内緒にしている人がいるのだから、ちょっとくらい親をだましても平気だろう。などなど。

あるいは、ちっとも勉強ができないのに都立中を受けるという人が周りにたくさんいる。私の方が少しはマシだから、必死に勉強しなくても合格できるのかもしれない。

不合格になる子と一緒に学んでいると、アナタも不合格になる可能性が高まることを知っておくべきだ。

合格できそうな人だけと競い合うのが正しい選択だ。