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三田学院

[2017年11月16日]

都立中の定員は恐ろしく少ないことを知れ

実質定員割れの私立中学入試。データを見れば一目瞭然だが、冷静になれない人が多いようだ。

東京都の小6生徒人数:約94,000人
東京都の私立中学定員:約34,000人

極端に定員が少なく高倍率の都立中入試。別の意味で、こちらも冷静になれない人が多いようだ。

東京23区の小6生徒人数:約58,000人
東京23区の都公立中高一貫の定員:920人

これは千代田区立九段中等の都民枠80名を含み、東大付属と学芸大附属国際中等を含まない人数だ。

ここ数年、都立中の受検者数は、都内の都国公立中高一貫校の全てを合わせて約10,000人弱だ。約6割が23区在住の受検生だとすると、受検生は約6,000人となる。

1,000人に満たない定員に、約6,000人も受ければ高倍率になるのは当然だ。

注目してほしいのは、私立学校の総定員に対し、都立中の総定員が極端に少ないことだ。

定員が少ないことを正確に承知しないままで受検する人が、まだまだ多いのではないだろうか。敵の総兵力を正確に把握しないまま、戦いに臨んでいるようなものではないか。

そもそも、私立中学の定員とは2桁も違うのだ。小学生数に対して定員数は約1.6%だ。これは約70人に1人しか都立中に進めないことを意味する。

1学年2学級、児童数70人なら、合格できるのは1人だけだ。

・都立中受検、合格できるのは全児童の2%以下。
・都立中受検、そこに大きな受け皿はない。
・都立中受検、そこに大きな受験市場はない。
・都立中受検、だれもが目指せる道ではない。

たった1,000人程度の定員しかないのに、猫も杓子も受検するということ自体がおかしい。そこには大きな受験市場はない。よって都立中受検指導だけで大手塾の運営が成り立つこと自体が怪しい。都立中受検指導の市場は小さすぎるから、高校受験指導に誘導しないと、大手塾の経営は成り立たないはずだ。つまり、経営のためには、どんなに励んでも合格できそうにない都立中受検生でもドンドン受入れ、多くの都立中受検生に不合格者になってもらい、そのほどんどの人に高校受験を目指して継続通塾してもらう必要があるのではないか。

つまり、大手都立中専門塾に通う人のほとんどは、始めから不合格が予定されているのだ。そんな塾だとは知らずに、毎年カモがどんどん捕まる。宣伝広告をドンドンすれば、カモがドンドン引っかかる。

しかも、小学校中高学年という、学力の基礎をつける最も大切な時期に、適性検査問題に翻弄される日々を送るという誤った選択となる。必然的に基礎学力の向上は達成できず、ほとんどは高校受験でも失敗することになる。

都立中に失敗したら高校受験で頑張れば良いと言う考え方はやめた方が良い。高校受験の入試問題は適性検査問題ではない。少なくとも今は違う。今後も適性検査型になる明確な予定はない。むしろマークシート方式の客観テスト形式を増やしているくらいだ。高校受験は学力試験型だ。どちらかと言えば4教科型の私立中入試に近い。中学受験をお試し的にするなら、私立型の勉強をした方が足しになる。適性検査問題を解くより遥かに足しになる。しかも私立中は実質全入だから、どこかに合格できる。合格通知をもらって自信をつけ、高校入試に望むこともできる。

賢い消費者はどこに消えたのであろうか。そもそも、賢い消費者がいるということが幻想だったのか。

都立中入試も入学試験だから競争試験だ。原則定員までしか入学できない。一定の成績を修めれば全員入学できるというものではない。努力と成果が合格定員の範囲に入らなければ合格はない。努力が必ず報われるわけではない。

何度も繰り返すが、学力がないと都立中には合格できない。適性検査という名の見かけが特殊な問題に騙されてはいけない。この適性検査問題、確かな学力があれば解ける。反対に学力がないと解けない。適性検査形式の問題ばかり学んでも、学力はつかず、合格力もつかない。

都立中の適性検査は、特殊な能力を問う問題ではない。学力とその運用力を試される問題になっている。「真の学力」があれば解ける。磨くべきは「真の学力」だ。「真の学力」さえあれば、適性検査問題は慣れる程度の準備で合格できる。不合格の理由は学力が低いからだ。適性検査問題が特殊だからではない。

都立中への合格は難しくても、目標をもって勉強に励んでくれればそれでよいというのなら、漢字検定、算数検定・数学検定、英語検定などを目標にするのが賢明だ。努力は必ず報われるし、基礎学力の足しになるし、高校入試でも加点などで優遇される。目標が明確で、実現可能性も高いから、モチベーションも維持しやすい。

気軽に受検するという判断は合理的ではない。データや資料の読取りができない受検生とその保護者は、そもそも合格できる資質がない。それ以前に、データの収集自体ができていないのがほとんどだろう。

そもそも、都立中に合格できる人の条件は、これだけでも十分に分かるであろう。

・都立中受検、受かる人は受かるべくして受かる。
・都立中受検、落ちる人は落ちるべくして落ちる。
・都立中受検、受かる人にとって多くは敵(ライバル)ではない。

都立中の入試担当副校長のお言葉を引用するなら、「合格者と不合格者は、せめぎあっていない」のだ。

それでも、合格者数よりも多い不合格者数を出すような塾や、1,000人単位で不合格者を出すような「不合格者数ナンバー1」の塾に通って、仲良く不合格への道を歩みたいのだろうか。

あるいは、私立中受験専門塾に通いながら、あたかも私立中受験で私立中を併願受験するように都立中を併願し、2月3日午前の貴重な私立中受験機会を無駄にしてしまうのだろうか。

データから判断すれば、どちらも得策ではない、ということがお分かりいただるであろう。

本気で都立中合格を目指す人は、募集基準を満たしているなら、ぜひ可能な限り早期に来てくれ。早期に来てくれるなら、きっと希望を叶えてあげられる。小4早期からなら小石川も夢ではない。

けっして、都立中不合格への道を選んではいけない。