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三田学院

[2017年11月27日]

小石川と日比谷、意外な共通点

小石川と日比谷、都立トップ校には意外な共通点があった。

?45分授業×7時間
ほとんどの高校では、50分×6時間授業を行っている。密度の濃くハイスピードの授業を展開できる教師陣と、それを理解できる生徒がいなければ成立しない。しかも、日比谷は45分授業×9時間の時間割を持っている。それでも授業は午後5時前に終わる。

?スーパーサイエンス・ハイスクール
大学レベルの理数教育を受けることができる。小石川も日比谷も、スーパーサイエンス・ハイスクールの指定を受けている。国公立高校では各都道府県のトップ校が多く指定され、再指定を繰り返し受けている。

例)筑波大学附属駒場高校、東京都立戸山高校、愛知県立岡崎高校など。

?教養主義
高校課程で文理分けをせず、全ての教科を学ぶ「小石川教養主義」は有名だが、日比谷もまた「教養主義」を掲げている。かつては文系に強かった日比谷だが、現在の日比谷は理系を目指す生徒が過半数となっている。日比谷が小石川化したのだと考えられなくもない。

日比谷も小石川も都立だから入学金や授業料が安い。ほぼ無料だ。これは、ほぼすべてが公費でまかなわれるためで、それなりの教育しかしていないのではない。むしろ、原則利用者費用負担の私立学校は入学金や授業料が高いが、これは公費による負担が少ないからであって、充実した教育内容だから高いということではない。

入学金や授業料が高いのだから、私立は面倒見が良いと勘違いしている親子が後を絶たないが、入学金や授業料が高いことと、面倒見の良さとは直接関係ない。実質無料の日比谷や小石川に通う親子満足度は極めて高い。ほとんどが面倒見が良いことに満足している。

入学金や授業料が安いのだから、経済的に裕福でない子弟が多く通っているのでないかと思う人がいるかもしれないが、そうではない。むしろ所得の高い家庭の子が多い。

日比谷や小石川に合格できる子というのは、生まれる前からしっかりと教育を施されている子が多い。生まれた後も不足のない教育を受けてきた子がほとんどだ。

特筆すべきは親の学歴だ。大卒などと言うのは当たり前だ。難関国立大学の大学院を修了したような親を持つ子が多い。小石川の生徒には大学教員などの子弟も多い。親子そろって小石川、兄弟そろって小石川も多い。一族そろって高学歴という家庭が多い。経済的に苦しい家庭の子は少ない。

この点で、ビジネスで大成功した人の子弟が通うような私立大学の付属校とは全く趣が違う。

日比谷も小石川も、授業料が安いから人気なのではない。名門校としての名に恥じない教育体制があるから人気なのだ。

授業料が安いから都立中を目指す、授業料が安いから都立校を目指す、そんな甘い考えで入学できるような学校ではない。「日比谷に入りたい、小石川に合格したい」と言うのは勝手だが、実力が伴っていない人が口にするのは控えた方が賢明だ。情報収集能力と自己評価能力を疑われかねない。

小6や中3の受験学年でなくても、平日に3時間以上、土日は5時間以上の自主学習(自宅学習)を、年間を通してコンスタントにこなせるような人でないと、合格できないし、合格した後に授業についていけない。凡人が目指す学校ではないことを知っておくべきだ。

都立重点進学校や特別推進校の西、戸山、青山、新宿、都立中の両国や武蔵もまた、日比谷や小石川と大差はない。凡人が口にするような学校ではない。

それでも尚、挑戦したいというのであれば、どうすれば良いかは自ずと分かるであろう。

小学校程度の漢字の書き取りができない、小学校程度の算数の問題が解けなかったりするような子の目指せる学校ではないのだ。

生まれる前からしっかり訓練を受けてきた子にしか挑戦権は無いに等しい。小4辺りで思い立っても、ほとんどの親子は手遅れだ。小4ではほぼ勝負がついているからだ。

ほとんどの子は小4段階で実質的に予選落ちとなっている。実際には限られた子だけに挑戦権が残っている。実質予選落ちしていることを知らずに挑戦しても残酷な結果に打ちのめされるだけだ。

遅れて参戦したのなら、その遅れを取り戻すような取り組みが必要となる。「遅れて参戦しても、その後に同じ努力をすれば、しっかりと準備してきた子と同じ結果が得られる」という考えは、明らかな間違いだ。しかし、それを間違いだと理解できない親子が多い。それどころか、そのことに気がつくことすらできない。そんな親子には日比谷や小石川に挑戦できる資質がない。

追いつくには、2倍どころか3倍以上、いやもっと多くのの努力が必要になる。しかし、遅れて参戦するような親子は、そんな努力はできない。よって、遅れを取り戻すことなどできないまま、憧れだけを肥大化させるだけで、ただ訳も分からず敗北していくというのが、彼らを待ち受ける残酷な結末だ。

適切な努力ができない人たちには、自分自身の責任を他者に転嫁したがる人が多く、自己欲求が実現しないと「社会が悪い、学校が悪い、塾・予備校が悪い、入試制度が悪い、高倍率なのが悪い」などと他者を攻撃したがるので厄介だ。「君子、危うきには近よらず」が最適な対処法だ。

勉学で成功するだけが唯一の進むべき道ではないから、勉学に限界を感じたら、勉学の道で自滅してしまう前に軟着陸を試みて、別の道を探すのが賢明であろう。限界まで挑戦できた人なら、違う道で成功できる可能性がある。しかし、何事も用意周到に己の限界まで挑戦できない人は、楽して他人と同じように美味な果実を手に入れようとする人は、どんな道でも大成することはない。