[2017年12月31日]
今年の授業も最終日となった。受検生は朝から晩まで受験勉強だ。みんな着実に成長している。どこまで合格を引き寄せられるか。最後の追い込みに力が入る。
やっと過去問演習の採点が一段落した。今日は都立名門校について書くことにした。
興味深い数値をご紹介する。『旧制一高入学者数(西暦1934〜1942年)のランキング』*だ。
旧制一高とは新制東京大学の前身のことである。大学の教養課程に相当する。旧制一高生は帝国大学への入学が予定されていたので、実質的に東京大学と読み替えて差し支えないだろう。
01位:日比谷(旧一中)
02位:戸山(旧四中)
03位:小石川(旧五中)
04位:両国(旧三中)
05位:筑波大附属(旧東京高等師範附属)
06位:新宿(旧六中)
07位:小山台(旧八中)
08位:麻布(私立)
09位:九段(旧第一東京市立)
10位:開成(私立)
旧一中とは、東京府立第一中学のことだ。旧制中学は、現在の新制高校に相当する。九段は東京府立ではなく東京市立だった。
両国のことを「三高」と呼び人がいるようだが、「三中」が正しい。「三高」だと京都大学の前身になってしまう。旧制高校と旧制中学を間違えてはいけない。ちなみに番号制の旧制高校(ナンバースクール)は以下の通りだ。
旧制第一高等学校:東京大学(一高)
旧制第ニ高等学校:東北大学
旧制第三高等学校:京都大学(三高)
旧制第四高等学校:金沢大学
旧制第五高等学校:熊本大学
旧制第六高等学校:岡山大学
旧制第七高等学校:鹿児島大学
旧制第八高等学校:名古屋大学
話しは都立高校に戻るが、このランキング表を見れば、どの都立高校が名門か、議論の余地はなかろう。
中高一貫化した都立小石川と都立両国が、都立中での中でも別格となるのは、始めから分かっていたことなのだ。また、日比谷が都立トップ校であることに異論はないだろう。
DNAは受け継がれるということか。
都立トップ高校も魅力的だが、都立中トップ校も魅力満載だ。都立中のホントの魅力については、気がついていない人が多い。一般的に言われているのは次のことだ。
・安い学費
・私立難関中高一貫校に匹敵する大学受験指導
しかし、ホントの魅力はこれだけではない。学校公開に参加したり、学校説明会に参加しただけでは分からないかもしれない。そのヒントは入試選抜制度にある。
・適性検査型入試が新しい大学入試制度にフル対応
いいえ、そんな安っぽい話ではない。適性検査型入試と合格者選抜方式がエグいほど素晴らしいのだ。どんな人が合格できないかを考えてみれば分かる。あるいは、どんな人が合格できるか考えてみれば分かる。
・素晴らしいクラスメートと6年間を過ごせる
これ以上を具体的に書くと、一部の方々からご批判を受けるかもしれないので、ここまでにしておく。都立中で学校生活を送れば分かることである。
日比谷などの都立トップ高校は、入試問題を自校作成することで、同じように素晴らしい学校生活を保障してくれている。ただし3年間だけだ。6年も保障してくれる都立中は、おつりが支払額を超えるくらいに素晴らしい学校なのだ。
都立中に確実に合格したいのなら、小4の初めから入試日まで、継続して専門的な指導を受けるのが最も適切な選択だ。ライバルもみな新小4から準備を始めるので、ここをスタートラインにしないと合格への道のりが険しくなる。
まだ小4だから、まだ習い事に楽しく通っているから、小学校の授業は理解できているようだから、などと決断を先送りすると、合格できるところが不合格になってしまう。たとえ費用がかかったとしても、合格すれば、それを補って余りまくる莫大なおつりが来る。
もちろん不合格になると採算が取れない。塾通いを遅くはじめて、支出を節約できたつもりが、無駄金を払ったことになってしまう。だから合格させてくれるところで指導してもらうしかない。合格できそうにない人までホイホイ入塾させるようなところはお勧めしない。ただ授業料が欲しいだけだと疑ってみるべきだ。
小石川であっても、半数は大手以外の塾から合格している。大手進学塾からの合格者がほとんどとなるような、開成や桜蔭などの私立難関校とは一線を画しているところが凄い。このことも都立中の魅力を語るうえで見逃せない。
なにせ定員が極端に少ないのだから、合格を前提とした指導を行うなら、大手塾は本来採算が取れないはずだ。都立中という小さな受検市場に、大手塾が存在していること自体が胡散臭い。ところが採算がとれているようだから、ますます怪しい。初めから不合格になることが予定されている多くの親子にまで、授業料を払い続けさせているとしか考えられない。
小5や小6になって、Sのつく塾や、Nのつく塾からの転塾希望者がやってくる。eやEのつく塾から都立中志願者もやってくる。
SやNからの受験生は疲弊しているだけで学力がついていないことがほとんどだ。親まで疲弊し意味不明なことを言う。どうしたら良いのでしょうか、と聞かれるが、そもそもの選択に誤りがあったのではないかと答えても、どうしたらいいのでしょうかの繰り返しになる。もう手遅れですとはさすがに言いづらいから、遠回しにそう答えても伝わらない。スタート時点で判断を間違うと、恐ろしいことになるのだ。
eやEからの転塾希望者も厳しい。漢字が書けない、計算ができないは当たり前で、適性検査型の課題を解かせると白紙解答ということが当たり前に起こる。
こうした親子は、HP読んでも、都合が良いようにしか解釈できないようだ。そもそも、そうした受験生や受検生は募集していない。問い合わせをいただいた段階では分からないから、入塾相談や体験授業のときに判明する。お互いに無駄な時間を過ごすことになる。悪癖がついた受験生や壊れた受験生は指導しない。
ぜひ、無垢なままで門を叩いてほしい。
話しは戻るが、都立中はだれでも合格できるような学校ではない。だから、当然に入塾に際して厳しい審査があってしかるべきだ。審査を突破して入塾できたら、あとは合格通知を受け取るまで、命がけで準備に励めばよい。入塾しただけで安心し準備を疎かにしてしまったら、合格の神様から見放されてしまうことを忘れてはならない。
審査を通過できない人は、都立中を目指すことは諦めた方がよい。アナタには違う道がふさわしい。「早く気がつかせてくれて、よかった」と思っていただきたい。
*出典:「日比谷高校の奇跡、竹内彰著、祥伝社新書」から引用して一部改編