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三田学院

[2018年1月9日]

【都立中】情報の非対称性

なぜ受検生の保護者は、不合格率の高い大手塾に、なだれ込むように我が子を入塾させるのか?

その理由は『情報の非対称性』にあるのではないだろうか。

受検生の保護者にとって、わが子の公立中高一貫の受検は生涯にほぼ一度の経験。兄弟姉妹がいれば少しは経験値も上がるかもしれないが、それでも必要な情報をすべて入手できる訳ではないので、さして経験値は上がらず、同じような失敗を繰り返すことになる。

保護者にとって、最も重要な判断基準となるはずの『不合格者の情報』が圧倒的に足らない。

「合格する」=「不合格にならない」

「『合格する』にはどうしたらよいか」を考える保護者は多いが、「『不合格』にならない」にはどうしたらよいか」を考える保護者は少ない。

「合格したければ、不合格にならないようにする」ことだ。どうすれば「不合格にならない」かを考え、確実に実行することが、合格への最短距離となる。

〇不合格になる受検準備をしない。
〇不合格になる塾に通わせない=不合格者の多い塾に通わせない。

ところが、
・大手塾は情報を自己に都合がよいようにコントロールする。
・すでに不合格となった受検生は、その情報を自ら拡散しない。
・受験市場には合格者の情報だけが溢れる。
・保護者は実質的に合格者数だけで判断を迫られる。
・保護者は無自覚に偏った情報にだけに依存して判断を下す。

『不完全な情報』で判断しているのだが、そのことに気がつかないままの保護者が多い。

そんな中でも情報収集能力に秀でた保護者は存在する。そうした一部の保護者は適切な判断が下せる。その保護者を持つ受検生は『優位』な立場に立てる。そうでない保護者の子は『不利』な条件下で競争にさらされる。

そして、不合格になった時、その理由を、これまた『不完全な情報』をもとに導き出そうとする。不合格の本当の理由は分からないまま、不合格の理由を何かにこじつけて結論づけるしかない。あるいは、不合格の本当の理由は分からないまま、静かにほとぼりがさめるのを待つしかない。

過ちは繰り返されていく。

どうすれば「不合格にならないか」を、よく考えずに、受検へ突入してはいけない。

これは都立中高一貫の受検生に限ったことではないが、市場占有率の高い大手塾の数が、私立中受験市場に比べて少ないため、より歪みが大きくなってはいないだろうか。

私立中の受験市場でも『情報の非対称性』は強く存在する。私立学校の魅力を過大に伝える大手中学受験塾の情報に、多くの保護者はいとも簡単に洗脳される。

『情報の非対称性』は、営利優先の大手塾にとって格好の『収益源』となる。それは、保護者と受検生は収奪されていることを意味する。

先日、大手書店で、ある大手塾を絶賛する、とある『教育評論家』の書籍を見かけた。その評論家は、大手塾の手先となることで取材ができ、執筆ができ、出版することによって『利得』を得ている。不合格の多い塾であっても、メシの種をくれるなら、べた褒めする節操のなさだ。

教育評論家を標榜しているが、彼もまた、『情報の非対称性』を利用して、受検生の保護者から収奪をしているという点で、大手塾と共に罪深い。独立したジャーナリストでありながら、『情報の非対称性』を解消しようとするのではなく、助長しているという点で、より罪深いかもしれない。

容易に入手できる情報は、まず疑ってみるのが肝要だ。

それを実行できるには『思考力・分析力・判断力』が必要だ。

保護者に『思考力・分析力・判断力』が足りないと、その保護者の子もまた『思考力・分析力・判断力』が足らなくなってしまうのかもしれない。