[2018年1月16日]
「そろそろ静かにしよう」などと言っておきながら、舌の根乾かぬうちに、またか?
今日は都立高のことを中心に書くつもりなのでご容赦いただきたい。
都立中受検に残念な結果になったら、地元公立中学から高校受験を目指す親子も少なくないだろう。
この高校受験を選んだ場合に想定しておかなければならないことを補足しておきたいと思う。
1.高い大学受験『浪人率』
今手持ちの資料では、年度と出店が、都立高校と都立中高一貫校で一致しないのだが、傾向は確認できると思うので掲載しておく。
日比谷高校:浪人比率46.0%
西高校:同47.7%
小石川中等:浪人比率21.0%
桜修館中等:同18.5%
両国高校:浪人比率14.7%
白鴎高校:同17.4%
3年制都立高校の「浪人率」の高さが一目瞭然となる。
3年制都立高校の場合、特に進学校なら、中学3年間通しての塾通いは当たり前のことだろう。大手塾に通って、月々平均4万円、夏期講習等で年20万円程度かかったとすると、3年間合計で約200万円かかる。これに模擬試験料や教材費など諸々を足し込んでいくと、3年間で約300万円くらいかかっても不思議ではない。
これに、浪人1年分の予備校代が、私立大学の初年度費用に近い200万円くらいはかかる。
さらに、一流企業の初年度年収相当の500万円くらいが消える。
都立高校進学校から1浪して大学に進む道を選ぶと、合計でざっと1,000万円くらいの、費用と逸失利益が発生する。
国立大学と国立大学大学院修士課程の合計6年間分相当の学費や生活費を入学前に使ってしまうことになる。大学進学後に奨学金に頼る人も出てこよう。それは社会人生活を借金漬けでスタートすることを意味する。
地元公立中学 → 公立トップ高校 → 浪人1年 → 大学進学
安上がりなようで、実はかなり費用のかかる選択だということがわかる。
2.過酷なほどに早い授業進度
3年制進学校から難関大学へ進むとなると、多くの3年制進学校が敷いているように、実質2年強で、3年間分の学習を終えなければならない。公立中学3年間でノンビリ中学内容を学習したツケがここに大きくのしかかる。6年制進学校なら、中学3年間分を2年で終えて、中3から高校内容へ進むから、余裕をもって高校3年間の内容を学べ、それでも1年分の受験準備期間を残せる。
難易度がさらに上がる高校内容を、約2年で一旦終わらなければならないツケは大きい。勉強が得意であった生徒もかなりが落ちこぼれる。まず数学で顕著に傾向が現れ、続いて英語、そして理科や古文漢文に現れる。早い進度ゆえに、一旦落ちこぼれると復活が難しい。よって3年生進学校を選択するということは、かなりリスクの高い道を選択することを意味する。
最悪なのは、準進学校へ進学した生徒と、進学大学で逆転現象が起こることだ。準進学校、つまり中堅上位校の場合は授業進度が速くない。かつ高度な内容は扱わない。よって落ちこぼれリスクが低い。難関大学を目指せないことと引き換えに、私立なら上位大学が目指せないわけではない。となると、完全に落ちこぼれた進学校の生徒の進学先と、準進学校で苦しまずに頑張った生徒で、進学大学が逆転することが起こる。
高校別の大学進学一覧を確認してもらえばわかる。日比谷からMARCHや日東駒専へ進む生徒も少なくない。都立トップ校のイメージとはかけ離れた進学先だ。意気揚々と日比谷に入学しながら、難関大学とは言えない大学に進むことも多々あるのだ。不本意なことだろう。
3.安全な選択肢としての都立中高一貫校
都立中高一貫校への進学がリスクの小さい選択肢だということがわかる。6年間あるので、その気があれば、途中で挽回もできる。問題は合格できるかどうかだろう。合格すればメリットが大きいが、合格しなければ何のメリットはない。
代替案はあるのだろうか?
極めて狭い代替案として、難関私立中高一貫校の「特待」がある。これは何度も説明しているが、該当するのは数校しかない。しかも、これらの学校の「特待」がとれるようなら、都立中に合格できる。都立中に合格できる人が、体調不良など不測の事態で、都立中合格を逃した場合の代替案でしかない。
これとは別に、国立大学附属へ進む道もあるが、いくつかを除き、都立中と同じかそれ以上の難易度だ。しかも、高校進級時に「追放」があるので、高校受験の準備をしながら中学校生活を送らなければならない。6年一貫のメリットが享受できない。また、受験指導はしてくれないので、塾や予備校通いが恒常的になり、学費は安いが塾代が高額ということになる。
4.結論
都立中高一貫に何が何でも合格するのが圧倒的にお得
難関私立中高一貫に「6年特待」で合格するのが次にお得
地元公立中学から公立トップ高校に進むのも、国立附属中に進むのも、難関私立中高一貫に一般合格するのも、都立中高一貫と比べて、いずれも費用がかかる選択肢だ。
最も費用がかかるのは難関私立中高一貫で、次が国立附属中で、次が公立中から都立高校だが、ご説明した通り、都立高校でも都立中高一貫との費用の差は大きい。
小4から丸3年間、都立中の受検対策にしっかり費用をかけたとしても、都立中へ進むのが、断然お得だということだ。
ただし、目指したとしても不合格なら計算が合わなくなる。不合格になるリスクが高い選択は一切してはいけない。周到で確実な準備こそ、経済的に無駄のない受験人生をもたらすのだ。