[2018年1月21日]
都立中の応募状況が予想通り1月19日に発表となった。
波乱はない。想定通りだ。
応募状況の実数値から見えてくることを書いておこう。
・小石川一人勝ちの状況が一層強まる。
都立中10校の中で、唯一志願者数が1,000人を超えた。男女とも志願者数を増やした。別途行った難易度予想でも、武蔵との間で難易度に差が開くので、今年は完全に1強となる。男女ともに厳しい闘いとなろう。
・白鴎が復活する。
予想通り志願者を集めた。都立中の中で最も応募倍率が上昇した。男女別内訳をみると、男子の志願者数が増加している。適性?の追加で男子受検生を呼び込みやすくなるだろうと予想したが、その通りの展開となった。この男子受検生はどこから来たかというと、多くは両国からの志望校変更組だろう。難易度的に両国と白鴎では両国が難しい。特に男子は難易度差が大きい。小石川の男子を追撃できるのは、両国と武蔵しかいない。両国に挑戦して頻差で残念なことになるより、確実に合格を勝ち取りたい男子受検生が白鴎へ動いたと見ている。必然的に合格ラインも少し上昇するだろう。
また、女子も人気を集めた。帰国子女の受入を含めグローバル教育に舵をきったことが注目された。九段を除く23区内の公立一貫校で最高倍率となった。女子の難易度も堅調だろう。
・両国は名実ともに都立中御三家の地位を固める。
両国は昨年度から倍率が安定してきている。これは合格が難しいことに気がついた層が応募を諦めるようになった要因が大きい。特に男子は難しい。倍率は若干落としたが、難易度は逆に上昇すると予想している。模擬試験の今年度の両国志願者の成績も、頭一つ抜け出している。小石川などのように『倍率は平均的だが難易度は強烈』ということになっていくだろう。
ここまで不動であった都立中御三家『小石川・武蔵・両国』だが、御三家『小石川・両国・武蔵』という日が来るのかどうか注目したい。
・大泉が都立中4番手を確かなものとする。
23区内にありながら郊外型に近い立地で、競合校が少ない。通学路線から池袋経由の小石川か中野坂上経由の富士、立地から同じ大泉学園の学芸大学国際中等あたりだろう。教育熱心な地域であることに加え、都心の私立校への通学が遠くやや難があるところが要因となっているのではないだろうか。わざわざ都心の私立を目指さなくても、近くに大泉があるではないかということだろう。校舎設備も最新鋭だから、外見のお化粧に熱心な私立中に心奪われることも少ないだろう。
・桜修館に復活の兆しはない。
男子受検生の倍率が大きく低下した。女子は横ばいだった。もともと設立時は、都立中として最下位候補からの出発だった。大学進学実績のサプライズから注目を集め、23区では「小石川、両国、桜修館」と言う人まで現れたが、ここ数年はさえない状況が続いている。大学進学実績が回復すれば、復活するのかもしれない。しかし、大学進学実績が低下したら、また注目されなくなってしまう怖れがある。そもそも、私立中学受験組に多い大学進学実績に対して近視眼的な受検生が多いのかもしれない。私立中学受験にまったく違和感を持たない人が多い地域だから、難関私立中を目指す受験生を呼び込めるようにならなければ厳しいだろう。地盤の目黒区や大田区などから成績優秀層が小石川などへ流出する動きが続いており、しばらくは楽観できない。
・富士の微妙な状況が続く。
男女ともに志願者を減らした。特に男子は約1割も減らした。もともと倍率が低い傾向にあったが、近年は持ち直しつつあった。要因として考えられるのは、都立中ならどこでもいいから合格したいという層が、難易度が手ごろだった富士を目指したのだが、最近の難易度上昇で諦めるようになったことだ。昨年度の辞退者数ゼロは、富士が本命の受検生が多かったことの証明だ。立地的にかなり都心にあり、地盤地域も私立進学者が多い。都立中は諦めて、2月3日も、合格が見込める中堅私立を受験することしたのではないだろうか。あるいは、準備開始が遅れたので、高校受験で都立トップ高校である都立西高に挑戦しようということなのかもしれない。難易度の低下は予想していないので、倍率は低下しても『穴場』とまではいかないだろう。
・九段に波乱なし。
九段の応募倍率も発表になった。こちらも波乱はない。女子は、都立中御三家に次ぐ難易度の座を、大泉の女子と競うことになるだろう。かなり難しいので気を引き締めて行こう。男子は富士や白鴎に次いで合格しやすいだろう。相変わらず9倍近い倍率となった。都民枠は定員の半分しかないので、どうしても倍率が高くなる。2で割れば約4.5倍となり、他校と大きく変わらなくなる。千代田区立やA区分(千代田区民枠)はいつまで続けるつもりなのだろうか。
さて、受検生と保護者は、この応募倍率を見ていろいろな考えを持たれたことだろう。倍率に振り回され、けっして見落としてはいけないことを最後に書いておく。
・『倍率』と『難易度』は『まったくの別物』
『倍率』が高くなっても『難易度』が上がるとは限らないし、『倍率』が下がっても『難易度』が必ず下がるわけではない。『倍率』が下がりながら『難易度』が上がることは、都立中では当たり前に起こってきたことだ。
倍率が低ければ合格しやすいとは限らない。
『倍率』に惑わされてはいけない。安心してもいけない。悲観してもいけない。
合否を決めるのは、受検校の『難易度』と、受検生の『実力』の組合せだ。『倍率』ではない。
『倍率』が低くても『実力』がなければ合格できないから期待しても無駄だ。
『倍率』が高くても『実力』がありさえすれば合格するから心配しなくてよい。