[2018年1月23日]
都立中入試は、もう一度試験をすると、合格者が半分入れ替わる、とよく言われる。
・だから、合格するかどうかが掴みづらい。
・だから、できる子でも不合格になる。
・だから、できない子でもチャンスがある。
というウワサにつながる。
合格者が半分入れ替わるということはどういうことか、大胆なシミュレーションを試みる。
男子定員60名の都立中を例にとってみる。上位半分は入替らず、下位半分が入替っていくと想定する。母集団となる受検生は常に同じメンバーで、実力は変動せず、入替り再合格があるとする。
・1回目の試験の合格者は60名
・2回目の試験で新たに合格となる人は30名
・3回目の試験で新たに合格となる人は15名
・4回目の試験で新たに合格となる人は7.5名
・5回目の試験で新たに合格となる人は3.75名
・6回目の試験で新たに合格となる人は1.875名
・7回目の試験で新たに合格となる人は0.9375名
7回の試行で合格と不合格が入替る人数が整数でなくなるので打切る。
7回の試験のやり直しで合格者となる累計人数は、合計で119名となる。
つまり、半分が入替る試験だとした場合、合格可能性があるのは定員の2倍の120名まで、ということだ。
どんなに倍率が高くても、実質的に合格可能性があるのは定員の「2倍」までということになる。定員の「2倍」を超える人に、合格のチャンスはないということだ。
もちろん、もっと精緻な推定を行えば若干違った数値が算出されるかもしれない。しかし、ここでは直感的に分かりやすいように、簡便な方法で推定した。また、実際に試験を行って実証研究すると、違う数値になる可能性がある。しかし、根本的に大きく違う値にはならないだろう。
むしろ、実際には合格と不合格が入替る人はもっと少ないかもしれない。何度入試をやり直しても、最終的に入替るのは最初の合格者の半分の30人までで、合格の可能性があるのは、定員の1.5倍、つまり90人でしかないかもしれない。
なぜなら、合格する人の模擬試験の成績は安定しているからだ。模擬試験で、毎回の偏差値が5ポイントも10ポイントも変動したりしない。問題が変わっても安定した得点力がある。つまり、そう簡単には、得点力が下位の人に、得点順位をひっくり返されないということだ。
「定員の半分が入替る」は、何度入試をやり直しても「合格の可能性があるのは定員の1.5倍まで」と読み替えられるかもしれないということだ。
倍率が高いからと心配する必要はないのだ。
実は、定員の半分が入替ると言われているのは、都立中入試だけではない。難易度の高い試験は、ほとんど同じようなことが起こる。
しかし、どんなに倍率が高くても実際には「1.5倍から2.0倍」程度で競い合っているということがご理解いただけるであろう。「2倍」を超える受検生は、不合格が予定されている人であり、ライバルではない。
・実力がない人は、何度挑戦しても合格しない。
・実力がある人は、受け直しても合格する可能性が高い。
・倍率7倍は「7回受ければ誰でも必ず合格する」ことを意味しない。
・7回受けても、14回受けても、受からない人は受からない。
合格者は「抽選」で無作為抽出されるわけではないので、中心極限定理は成立しない。
・どんなに倍率が高い試験でも、実質的に競い合っているのは、定員の高々2倍でしかない。
・倍率が4倍か、倍率が8倍かによって、合否の結果はかわらない。
「受かりそうな子が落ちて、受かりそうもなかった子が受かった」
というのは、不合格になった保護者が自己防衛ハイアスがかかった判断をした場合に起こる。「自分の子が落ちたのは実力がないからではない」と思いたい気持ちが判断の客観性を狂わせる。それが口コミで広がっただけだ。「豊川信用金庫倒産事件」と同じで、ウワサが独り歩きして、あたかも真実かのように思われてしまっただけだ。
この発言内容は読替えると「実力のある子が不合格になり、実力のない子が合格した」ということになってしまうので、血のにじむような努力をして合格した受検生と保護者を侮辱することになりかねない。都立中受検に限らず、受験に関連して、この手の発言を口にするのは感心しない。
しかし、冷静で客観的な人の見え方は違う。
「受かる子は受かるべくして受かり、落ちる子は落ちるべくして落ちた」と見える。
しっかり準備できたなら、高い倍率にビビる必要はないのだ。
準備不足や実力不足の人は、ちょっと倍率が下がったくらいで受かることはない。
いずれにせよ、高い倍率を心配する必要はない。