[2018年2月13日]
中学受験が終わり、この3連休は休養されていた方が多いことだろう。想定外の結果から、まだ走り回っている方もいるかもしれない。
この3連休は私立高校の一般入試が行われた。中学受験のご家庭は興味を持たれないかもしれないが、この東京都においても、今なお、高校受験の方が、中学受験よりはるかに大規模なのだ。
都内の公立中高一貫校は、九段を合わせても11校しかない。
都内の私立中学校は、約190校。
公立高校は約190校、私立高校は約240校、国立高校は約6校。
都内の公立中学は約600校だ。
都立復権後、都立中と都立高校の人気は根強い。一方で難関私立中の人気も衰えを見せない。私立中学への進学率も上昇傾向が続いている。都内では公立中学の衰退が続いている。そのことが、さらなる都立中人気や私立中進学率の上昇を招くというスパイラル現象を起こしている。
ここ10年は、日比谷などの都立進学校の復権、小石川など都立中の大躍進で特徴づけられるであろう。
公立中高一貫は都内だけでなく全国に設置された。保護者の世代にはなかった学校制度のため、設立当初は様々な憶測を生み、今なお正確に実態を把握できていない人が多い。
書店では、10年前に出版された公立中高一貫を紹介する本が、今だに幅を利かせている。首都圏の公立中高一貫とそれ以外の公立中高一貫をゴチャマゼにして語られている本も後を絶たない。
ところが、都立中は、公立中高一貫という括りで見てしまうと、根本的に判断を誤ってしまう。毎年おなじような判断ミスを犯して都立中受検市場に参入してくる親子が多い。
新たな悲劇を防ぐために、判断の目安を示しておこう。
小石川の80%偏差値は「しゅともし」で69だ。
中学受験偏差値が60を超える場合、高校受験偏差値への換算は+5が妥当だ。
日比谷の80%偏差値は「Wもぎ」で73だ。
つまり、小石川の入試難易度は、日比谷の入試難易度と、ほぼ同じか、それ以上ということになる。
小石川中74(69+5)≒日比谷高73
両国中70(65+5)≒青山高70
白鴎中68(63+5)≒小山台高67、両国高68
日比谷の内申素点(通知表の5段階評価)は、5科平均が約24.1だ。つまり、ほぼ「オール5」だ。
日比谷が24.1
戸山が24.1
両国が24.0
西が23.9
青山が23.6
新宿が23.5
小山台が23.2
つまり、都立中に合格できるのは、中学では5教科でほぼ「オール5」の成績が取れる人ということになる。
日比谷の場合、9教科の平均は41.1だから、9教科で「4」は3つまでが限界だ。残りはすべて「5」でなければ合格できない。不合格者の平均も「4」が3つだから、内申での実力差はほぼない。つまり誰も無謀な挑戦はしていないことがわかる。
これが都立中入試の実情と根本的に違うところだ。都立中入試では、いまだに合格できそうもない人が大量に受検する。だから高倍率になる。日比谷の実質倍率は2倍前後だ。落ちたら後がない命がけの闘いであるなら、この程度の倍率が現実的だ。これでも激闘となる。
都立高校の推薦入試だが、後に私立高校の一般入試と、都立高校の一般入試が控えているので、こちらはダメもとの受験生も参戦してくる。例えば今年などは、ある中学校では、都立志望のほぼ全員が都立推薦入試に挑んだが、合格できたのは塾生一人だけだった。平均倍率は5倍だから、都立中入試の倍率に近い。倍率5倍とは、そうした闘いなのだ。同じ中学の高校受験生である別の塾生は、私立高に推薦合格していたので都立推薦は受けなかったが、クラスメートが都立推薦入試に合格したとの一報を聞いて、私の前で次のように叫んだ。
『すごーい、すごすぎる、信じられない、ありえない、神の塾!』
自慢をしたいのではない。倍率5倍とはどういうものかを理解するのにちょうど良いのでご紹介しただけだ。都立高校の推薦入試に確実に合格するのは容易ではない。だから誰もが「受かれば儲けもの」くらいにしか考えていない。ところが、都立中だとそう考えられなくなる人が多い。まだ適切に情報が行き渡っていないのだと思う。
しかも、この塾生、奇跡で都立推薦入試に合格できたのではない。合格すべくして合格した。その辺りは別の機会に詳しく説明しよう。ただ、はた目には奇跡が起きたように見えた。これもまた、倍率5倍や6倍の競争で起きる現象だ。
地元公立中学でも構わないというのなら、最初から高校受験に焦点を合わせるのが賢明な選択だ。ただし、中学受験しないからと、小4・小5・小6での勉強が甘くなってはいけない。中1・2で安易に部活動にのめり込んでもいけない。高校入試から逆算して、しっかりと計画的に準備を進めなければならない。
地元公立中学が選択肢にないなら、都立中が第一志望でも、4教科型入試の難関私立中学と適切に併願を組むのが賢明な戦略だ。小4と小5は徹底して算数や国語の力を磨き上げるとよい。学力がしっかりしていれば、小6から適性検査対策を開始しても間に合う。
逆に、学力が不足すると、小4から適性検査対策をしても合格できない。都立中専門塾や大手塾の都立中専門コースで合格できない人は、ほぼもれなくこのタイプだ。
私立難関中学に合格できて都立中に合格できない人というのは、適性検査?の対策が甘いことが原因だ。適性検査?の対策は専門家に任せるのが安全だ。都立中の適性検査?は、都立高校の推薦入試における小論文と同じ対策をすれば良い。採点基準も酷似している。
さて、話は戻り、中学で「オール5」が取れる人というのは、小学校ではどんな成績かというと、5段階評価なら「オール5」だが、3段階評価なら「オールよくできる」が必要条件で、その中の一部の人が「オール5」ということになる。
では、小学校で、「よくできる」と「できる」が半々の人というのは、中学でどんな成績になるかというと、平均すると「オール3.5」だ。つまり、「3」が半分で「4」が半分くらいの成績になる。高校受験だと都立中堅高校合格も難しいと感じるだろう。都立高校の進学校合格には程遠い。
もっと言うと、小学校で「オールできる」の子は、中学では「オール3」だ。
絶対評価では、不登校でもない限り、「オール1」はつかないから、「オール2」が最底辺だ。よって「オール3」は学力平均層ではない。学力下位層だ。一つでも「2」があると、高校への進学自体が怪しくなる。選択肢が極端に狭くなる。
把握可能なサンプルから推定すると、「よくできる」が、70〜80%くらいはないと、中学1年生の1学期に「オール4」以上になるのが容易でない。都立中に合格しようと思うなら、この辺りが限界であろう。
都立中への合格を確実に狙えるラインというのは、報告書だけでは推定できないが、都立中への合格が50%程度以上見込めるラインは、「よくできる」が男子で85%以上、女子でほぼすべて、となる。これを下回ると急激に合格率が下がり、20%程度以下になってしまう。
イメージできたであろうか。
都立中への合格を目指して準備を始めるなら、「よくできる」が取りやすい小3時点で、ほぼすべての項目を「よくできる」にしておく必要があるということだ。
小4以降は、男子なら「よくできる」を80%以上、女子なら85%以上をキープしたい。「よくできる」が教科ごとに均等にばらけても、「よくできる」が全体の65%未満になると、合格の可能性はかなり厳しくなる。目標は「オールよくできる」だ。その上で適切な訓練を積めば、合格可能性を50%以上にすることができる。
ちなみに、合格率が100%となるのは、「公中検模試」で偏差値70だ。「しゅともし」でも偏差値70〜75だ。つまり、私立御三家とまではいかなくても、最難関中学に合格できるレベルだ。男子なら芝、女子なら鴎友学園や吉祥女子、共学なら広尾学園(医進サイエンス)あたりに合格できるレベルが目安になる。
つまり、都立中への絶対合格を目指すなら、それくらいの覚悟が必要だということだ。実際に、普連土学園(偏差値61〜66)に合格して白鴎中に落ちる、安田学園・先進特待(偏差値62)に合格して両国中に落ちる、宝仙学園理数インター・特待(偏差値60)に合格して富士中に落ちるなどというのは当たり前に起こる。
小3と小4がいかに大切か、後になれば身に染みてわかる。小5になって慌てても、もう手遅れになっている場合がほとんどだ。手遅れになりたくなければ、受検勉強を開始する前に、まず小学校での学習内容を完璧に理解することから始めよう。カラー・プリントテストは、毎回100点満点を取れるようになっておこう。小テストも満点、宿題は常に完璧が基準だ。
小5の学年末で、「よくできる」を80〜90%維持できなかったら、高校受験で進学校を目指す方針に切り替えた方が安全だ。遅れず高校受験対策を開始しよう。中学数学と中学英語の攻略を中2までに終えよう。そのためには、遅くとも小6早期から高校受験の準備開始が必要になる。小5早期からなら難関高校が十分に狙える。
高校受験をするのなら、適性検査対策などしない方がよい。
高校受験は学力試験型だ。しかも都立高入試は記述式からマークシート式に移行しつつある。記述はごく一部に過ぎない。私立高校も短答式がほとんどだ。
中学生になればわかる。高校受験の過去問題集をチラ見すればわかる。適性検査専門塾や適性検査専門コースの塾も、手のひらを返したように学力試験型の指導を始めるはずだ。そうしなければ、高校受験は突破できないのだから。
なにしろ、都立中に入学したら、学力型の授業を受けることになる。大学受験も学力試験型だからだ。勇ましく大学入試改革が叫ばれているが、何か変わるのは英語だけだろう。それもただ民間に外部委託するだけかもしれない。
巷の情報にだまされてはいけない。事実をねじ曲げている。またもアナタを利用しようとしているのではないか。
もし「あゆみ」が好成績にならないなら、私立中学受験を選ぶ道もある。堅実な併願戦略を取れば、確実に地元公立中学への道を回避できる。少なくとも塾代をドブに捨てたと思うことはないだろう。さらに、ユルイ公立中学で、ダラダラと過ごし、伸びるチャンスを逸し、気がついたら進学校は雲の上の存在となり、高校受験を前に親子で悶絶するということもない。
大学受験は、ほぼ子の単独の闘いとなるが、環境整備が親の務めでることに変わりない。高校受験で進学校に進めなければ、大学受験でも敗北の可能性が高くなる。親の選択が大学受験でも子の運命を左右する。
親の欲望で、わが子を振り回してはいけない。
虚栄心や懐勘定は悲劇を生む。心に隙があると地獄を見る。
わが子の身の丈に合った選択を優先すべきだ。
子が都立中合格タイプなら、子の都合で都立中受検を選んでもよい。
しかし、親の都合で都立中受検を選んではいけない。
人の人生は一度きり。小学生時代を二度も生きることはできない。
たとえ輪廻転生するのだとしても、人生をやり直せるわけではない。
わが子に合った、適切で有意義な、小学校生活を、送らせてあげるべきだ。
わが子には、身の丈に合った「合格への道」を用意してあげなさい。
けっして、わが子に「不合格への道」を用意してはいけない。
懺悔しても救いはない。