[2018年2月16日]
中学受験か高校受験かを検討される前に、高校の難易度ランク表を確認されたであろうか。中学受験する人は、意外と高校受験での難易度がどうなっているか知らないことが多い。その逆もしかりで、中学受験を考えもしなかった人は、中学の難易度ランクを知らないことが多い。
■男子・主要高校難易度
78:筑波大学附属駒場、開成
77:筑波大学附属、東京学芸大学附属、早稲田大学高等学院
76:慶應義塾、早稲田実業
75:
74:
73:日比谷、西、(小石川中)
72:戸山、青山学院
71:広尾学園(医進)、城北、明大明治
70:青山、立教池袋、(都立両国中、都立武蔵中)、(東京学芸大学世田谷中)
69:東京工業大学附属、中央大学、広尾学園、京華(S)
68:巣鴨、本郷、宝仙理数インター
67:小山台、駒場、新宿、両国*、都立武蔵*、安田(S)、(大泉中、桜修館中)、(東京学芸大学竹早中)
66:三田、竹早、国際、(九段中)、東京芸大・音楽、東京工業高専、芝浦工大附属
65:小松川、(白鴎中、富士中)
64:大泉*
63
62:富士*
61:白鴎*
・新教育研究会(Wもぎ)などの情報を参考に独自に作成した。
・赤は国立、青は都立、黒は私立である。
・カッコ内は、都立中の難易度を高校受験偏差値に換算した推定偏差値。
・*印は「都立中」の高校入学枠。
いくつかコメントしておく。
?高校募集している都立中の、高校での難易度ランクは、難関校の中では下の方だということだ。必死に合格を目指した学校かもしれないが、小石川を除き、高校受験では、もっと上に難関校がたくさんあるということだ。
?中学受験で「巣鴨」、「本郷」、「広尾学園」あたりに合格できないようでは、「日比谷」合格など、夢のまた夢ということだ。
?都立中受検で「富士附中」や「白鴎附中」に落ちて、「日比谷」に再挑戦というのも、簡単な話ではないということだ。
?中学受験では、パッとしないと思ったかもしれない私立校が、実は高校受験では難しいことも知っておくべきだ。宝仙理数インター(一般)や、安田学園(S特)などだ。中学受験で合格できたなら、宝仙理数インターは「一般」であっても、安田学園は「特待」なら入学する価値があると思う。高校からも強者が合流し競い合える。大学入試に焦点をあてるなら、大逆転が狙える進学先だ。
?都立中をすべて一括りにして語るのは必ずしも適切ではない。難易度に大きな開きがある。高校受験では明確にランク分けが違う。小石川にギリギリ残念になることと、他の都立中にギリギリ残念になることは同じ意味を持たない。また、小石川などになどギリギリ残念になることと、他の都立中に合格することを、同じ尺度で語るのも適切とは思えない。
?中学受験でお得感が高いのは、東京学芸大学附属中だ。高校は最難関だが、中学は都立中の平均程度だ。高校受験でお得感があるのは、両国高校と武蔵高校だ。都立中御三家の難易度ながら、高校入試では、都立高校進学校としては二番手クラスの難易度だからだ。ただし、両国高校は、高校入試でも合格者の内申素点平均は「ほぼオール5」だから、凡人が挑むのは無謀であることに違いはない。
さて、高校受験は学力試験型だ。高校受験では適性検査対策をしてきたことが、ほとんど役に立たない。4教科型の私立中受験の勉強をしてきた方がよっぽど役に立つ。実は、都立中高一貫に入学しても、4教科型の私立中受験の勉強をしてきたことが役に立つ。入学後の定期テストで、そのことを思い知らされる。
ならば、都立中高一貫への合格を目指すのであっても、4教科をしっかり学んだ方がよい。合格しても、合格できなくても、役に立つ。適性検査対策を学んでも、合格できなければ意味がない。つまり、適性検査型を学んでも、合格できなかったら、使った時間や努力や費用は、ほぼムダになる。
もっと言えば、小6の夏期講習の前までは、徹底して4教科の学力を引き上げることに注力せよ、ということだ。それが『正しく』実現できたなら、適性検査問題もスラスラ解けるようになる。かつ、仮に残念なことになっても、高校入試の役に立つ。一からやり直さなくて済む。適性検査対策は、適性?対策を中心にやればよい。
この4教科の学力の引き上げ方だが、大手私立中学受験塾の方法だと上手く行かない。頻出問題に『総当たりで解法を伝授』する授業を行って、解き方を真似できるようにする方法だから、見たことがない問題や、習ってない問題は解けない。つまり実は学力がつかない。
大手私立中学受験塾からの転塾者が、与えた課題を5回も6回も7回も解き直して、なお間違い続けるということに、もはや驚かない。当てずっぽで、知っている解き方をあてはめてみることしかできないことが見え見えなのだ。「考える」という基本動作が備わっていない。「考える」とは「試行錯誤」するということだ。「試行錯誤」して「最適解」をみつける行為だ。
理由は明白だ。基礎基本の本質的な理解ができていないからだ。何度も間違える。いつまでも同じことが続く。大手私立中学受験塾では、一部の超学力エリートを除き、4教科それぞれの本質を理解するのは無理なのだ。なぜなら、『総当たり解法伝授法』だからだ。これでは、4教科の偏差値が高くても都立中には合格できない。見せかけの学力だからだ。
開成中や麻布中に合格できながら、小石川などの都立中に不合格になるなどというのは、こうして起きる。
「適性検査問題に『総当たり解法伝授法』を持ち込む大手都立中専門塾」もある。もともと私立中受験塾として成功できず、そのノウハウを都立中受検に持ち込んだ。だから相変わらず『総当たり解法伝授法』である。ビジネスとして大成功したが、塾本来の姿としてはいかがであろうか。
都立中の合格実績ではなく、私立中の合格実績に注目してみると面白い。大手塾としては壊滅的な合格実績と絶望的な合格率だ。もともとそういう塾だったのだから。これが、その大手都立中専門塾の実力なのだ。学力を育むことができるなら、私立中学にも相応の合格実績が出せてしかるべきだ。ところが、できない。適性検査問題『総当たり解法伝授法』では全く歯が立たない。
いずれも、何のために勉強しているのか、その動機、その到達地点が、怪しい。受験の世界でしか通用しない学力など、大した価値はない。こうした学習塾が巷に蔓延しているから、それを求める親子がいるから、それを学力だと思っている親子がいるから、学習塾悪玉論や学習塾不要論が出てくることになる。
大切なのは「真の学力」だ。「生きる力としての学力」とも言い換えられる。「真の学力」は基礎基本を磨き上げることによって開花する。ただし、ありふれた基礎基本ではない。『神の領域』まで磨き上げなければならない。初めて出会った問題にも、果敢に挑んでいける学力だ。この世には、まだ答えのないような課題であっても、適切な解決策を見つけ出せるような学力である。『解法伝授法』でみにつける「学力もどき」とは対極にある。正反対である。真逆である。
さて、公立中学入学後に、高校受験は3年先だからと、部活やら生徒会やらに夢中になると、取り返しのつかないことになる。公立中学の甘い学習内容に油断していると、中2の秋頃には、授業を難しく感じるようになったり、成績が急低下したりと、ヤバいことになる。この頃には病魔はかなり進行している。その後、この不本意な状況を挽回できないまま、中3で部活を引退する頃には、行ける高校がほぼ決まってしまう。
一言つけ加えておく。「部活ができる子は、勉強もできる」という人がいる。アナタの周りにも必ず一人くらいいる。しかし正しくない。「勉強できる子は、部活もできる」(こともある)が正しい。
部活をいくら一生懸命に頑張っても学力はつかない。勉学しないと学力はつかない。当たり前のことでしょ。野球を頑張れば、学業成績が上がると思う?野球は上手になるかもしれないけど、学業成績は上がらないでしょ。甲子園球児は、みんな勉強ができる?そんなはずないでしょ。「部活ができる子は、部活ができる」でしかないでしょ。
「部活も勉強も両方できる子」を見ると、「部活ができる子は、勉強もできる」と思ってしまう人がいる。その人には、そう見えている。でも、正しくない。中学3年間、部活だけに明け暮れて、日比谷に行けると思う?逆に高校進学があやしくなるでしょ。私立高校の推薦(単願)入試の部活加点も、部長やって1点とかでしょ。英検や漢検で1点と変わらないでしょ。そもそも、都立高校の一般入試や、私立難関高校の一般入試には関係ないでしょ。
地元公立中学に進んだら、3年間を全力で駆け抜けること。部活や生徒会や行事ではなく、全力で勉学に取り組み、全力で駆け抜けること。それが地元公立中学を選択するという本当の意味だ。
高校受験で残りの人生がほぼ決まってしまう。中学受験とは重みがまったく違う。やり直しはできない。後がない。人生の岐路を選択することになるという点で、高校受験の方が、子どもの人生に重大な影響がある。部活などにうつつをぬかしていては人生を誤る。取り返しのつかないことになる。
過ちを繰り返すことがないようにと、祈る。