[2018年3月23日]
9歳の壁・10歳の壁とか、小4の壁・小5の壁とか、よく言われる。一般的な意味の解説は別に譲るとして、最も深刻な『中学受験における小5の壁』について考えてみる。
小4までは楽しく中学受験塾に通っていた子に、小5になって急に「塾に行きたくない」、「受験したくない」、「できない」、「わからない」といった現象が起きる。ここでは、このことを「小5の壁」と定義づけしておく。
思春期や自我の成長など、発達段階において発生する一般的な問題についてはここでは触れない。
「塾に行きたくない」、「受験したくない」、「できない」、「わからない」は、なぜ起きるのか?
?高速・高度化
小学校の授業内容もそうだが、進学塾での学習内容も、急に「高速・高度化」するのが、小5に入った時期だ。しかも、小5後期になると、さらに「高速・高度化」が加速する。ドンドン「高速・高度化」する。「高速・高度化」は、もはや止まらない。
個人差はあるが、どこかの段階で、この「急な坂」を登ることがツラくなってしまうのだ。
子は「高速・高度化」を俯瞰できない。
自分では原因不明のまま、急に楽しくなくなる。急に解けなくなる。急に分からなくなる。急につらくなる。
?算数の「高速・高度化」
小3や小4までは、まだ算数というより「計算」の域を出ない。ところが、小5になると「数学的」な抽象的な概念が本格的に入ってくる。ほとんどの保護者がサポートできた算数が、小5あたりからサポートが難しくなる。親がいくら教えても、理解できないものは理解できない、となる。特に、中学受験を経験していない保護者には、それなりの準備をしないと、中学受験算数は教えられない。中学数学などを持ち出すと、子は混乱するだけだ。小学生でも解ける方法で教えられないなら、家庭では教えない方がよい。
専門家に任せるしかないのだが、任せてもダメなら、中学受験そのものを再検討するしかない。もはや、アナタの子は中学受験では成功はしない。だからといって、高校受験で成功するとは限らないから、そこでも甘い期待は持ってはいけない。
?理科・社会の「高速・高度化」
中学受験塾のカリキュラムでも、小4までの理科と社会は、小学校と中学受験の中間のような内容で、さほど難しくない。ところが、小5から急に「高速・高度化」する。本格的に入試レベルの内容になってくる。しかも、小学校では扱わないような高度な内容や単元がドンドン入ってくる。公立中学の内容にまでドンドン侵食するようになる。特に理科は要注意だ。物理分野は完全につまずく子がでてくる。中学受験算数とおなじような現象が起こる。
「塾に行きたくない」、「受験したくない」、「できない」、「わからない」は、なぜ起きるのか?
ひとことで言えば、アナタの子が、塾の授業内容についていけなくなることで起きる。しかも、いったん発生すると、ほとんどの場合、改善しない。そのまま、小6の「伸び悩み」や「ジリ貧」へとつながっていく。
小3や小4までは夢と希望に満ちた中学受験が、小5からは試練と苦悩の中学受験へと豹変する。
ある大手塾は、小5や小6でも、試練や苦悩を体験しないように、意図して易しい授業を展開する。小5の壁を逆手に取った商売で、授業料をむしり取れるだけむしり取るが、塾生のほとんどが志望中学には不合格になる。塾生のほとんどが不合格になるから、塾生の多くは、騙されたという感覚はない。また高校受験で騙される。商売がウマい、というか罪深い。
話しは戻るが、試練と苦悩の原因は、アナタの子にある。あるいは、子の成功を妨げる保護者にある。ところが、保護者も子も、自分のせいだとは思いたくない。塾が悪い、講師が悪い、中学受験制度が悪い、世の中が悪い、などと責任転嫁をしだす。しかし、誰も責任など取れない。アナタと子の責任だから。塾を変えようが、家庭教師を変えようが、自分の責任であることを認識できなければ、事態は改善しない。
どうしたら、小5の壁をすんなり超えられるか?
・小4になる前に、受験勉強に耐えられる心と身体を、しっかりと作り上げておくこと。
・小4になったら、受験勉強を甘く見ないで、勉強最優先の生活を確立すること。
これでもダメなら、能力の限界か、成長が緩慢なのか、過保護に育てたか、だいたいこのいずれかだから、いつまでも甘い期待や甘い考えを持たず、サッサと捨てて、それなりの道へ進むしかない。
小4までの夢と希望など、甘い期待にしかすぎない。
小5からの試練と苦悩こそが、現実なのだ。
小5からの試練と苦悩の程度は、人それぞ入れ違う。
その違いは、その親子が歩んできたことへの「因果応報」だから。
よって、あがいても仕方ない。小5になると、もはや取り返しは難しい。時間は巻き戻せないから、過去はやり直せないから、うまく行っている親子よりも、その時点からより頑張らなければならない。今まで怠ってきたことと、新しくやらなければならないことを、残された僅かな期間で、すべてを実行することは、そんな親子には、まずデキない。
勉強よりも、習い事という名の娯楽を優先してこなかったか?
勉強よりも、体験や経験という名の娯楽を優先してこなかったか?
勉強よりも、家族行事や帰省という名の娯楽を優先してこなかったか?
勉強よりも、ご褒美という名の娯楽を優先してこなかったか?
まだ幼いからと、甘やかさなかったか?
まだ幼いからと、先送りしなかったか?
みんなもそうだからと、必要のないものまで買い与えなかったか?
みんなもそうだからと、怠惰な生活を許してこなかったか?
小5の壁を深刻にしたくなければ、生まれてから小3までの、受験勉強を本格的に始める前の下準備に、つまり、学齢相応の生きる訓練をすることに、真剣に取り組んでおくしかない。
怠ったツケは、怠った親子が払うことになるのだ。
しかも、ツケをためると、払いきれなくなるのだ。