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三田学院

[2018年4月3日]

【限りなく透明に近いブルー】と【永遠のゼロ】

「限りなく透明に近いブルー」は、作家村上龍の芥川賞受賞作品だが、舞台は内陸部の米軍横田基地周辺であり、題名にある透明なモノとは海ではない。

先週末に休講日と合わせて短い休暇をいただき、薩南諸島の一つ「奄美大島」を訪れた。そこにあったのは、人々の暮らしを圧倒する大自然と、「限りなく透明な海」であった。わざわざ海外にまで行かなくても、美しい海があるのだということを、あらためて知った。

しかも、3月だというのに海水浴ができる。水温は20度を少し上回っている程度で少し冷たいが、長時間でなければ何ら支障はない。むしろ、シーズンではないので、どこの海岸もプライベート・ビーチ状態で心地よい。鮮やかな色の魚たちにも会える。

お伝えしたいのは美しい海だけではない。名瀬の中心部や空港周辺を除けば、そこに存在するのは、人々の暮らしを圧倒するような大自然である。ヒトが大自然を制御することなど不可能であると訴えかけてくる。大自然がヒトを生かしているのであり、ヒトは生かされているに過ぎないと思い知らされる。

うぬぼれてはいけない。
おごってはいけない。
謙虚でなければいけない。
そして、感謝しなければならない、と。

「永遠の0(ゼロ)」は、百田尚樹のベストセラー小説である。最初、ロサンゼルスを舞台にした小説、ブレット・イーストン・エリス作「レス・ザン・ゼロ」のような小説かなと思って手に取ったら全く違い、ゼロとは旧日本海軍のゼロ戦のことであった。これが期待を遥かに上回る傑作であった。

奄美大島へは羽田空港からの直行便で向い、帰りは鹿児島空港経由で羽田空港へ戻った。奄美空港から鹿児島空港までは、80人乗りのプロペラ機で、大型ジェット機のように高高度を航行しない。薩南諸島上空を、島々が見えるほどの高度で航行する。この時に思い出したのが「永遠の0」である。

鹿屋海軍航空基地から沖縄方面へ向かう特攻機ゼロ戦も、おなじような景色の中を航行したのだろうかと思うと感慨深い。美しい島影や海原は、つまり圧倒的な大自然は、過酷な運命を背負って戦場へと向かう人の心に、どう映ったのだろうか。そして、ここでも思った。

うぬぼれてはいけない。
おごってはいけない。
謙虚でなければいけない。
そして、感謝しなければならない、と。