[2018年5月10日]
Q:合格の見込みがないのに、都立中の受検勉強を続けるのか?
合格の見込みがないまま、それを知らずに受検勉強を続けることは、実に悲劇的だ。
不合格は深い喪失感と深い悲しみを伴う。幼さの残る12歳には過酷な仕打ちとなろう。
保護者の落胆も深いものになるのではないか。
親が、事前に合格可能性について知っておくことが、いかに重要か、議論の余地はないであろう。合格の可能性がどれくらいあるのかを事前に知った上で、受検勉強に取り組ませるか否かを判断すべきだと思う。
かなり高いハードルを越えなければならないので、合格可能性を無視するか軽視して、憧れやお得感だけで受検勉強を開始するのは、賢明な選択とは思えない。
合格の可能性が十分あり、現実的に達成可能な努力で合格にたどりつけそうなのであれば、余計な不安やストレスを回避しながら、過酷な受検勉強を、最後まで継続できる可能性があろう。
合格の見込みの判定に最も適しているのは「報告書」だ。都立中の合格可能性は「報告書」でかなり正確に予測できる。「報告書」が良くても合格の保証はないが、「報告書」が悪ければ不合格は保障されたようなものだ。そこで「報告書」をもとに、受検勉強を継続するか否かについて考えてみる。
追跡調査から、凡その目安は次のようになる。九段Bあたりをイメージして見てほしい。
・「3」が全てでも、合格可能性は50%未満
・「2」が1つ、残りすべて「3」なら、合格可能性は25%未満
・「2」が2つ、残りすべて「3」なら、合格可能性は20%未満
・受検者全体の合格可能性(倍率の逆数)は約16%
・「2」が3つ、残りすべて「3」なら、合格可能性は5%未満
・「2」が4つ、残りすべて「3」なら、合格可能性はほぼゼロ
オマケ情報を追加しておくと、
・ある有名模擬試験で、小6夏から入試直前まで毎回の「偏差値が70以上」あれば、「桜修館」の合格率は100%(H28、H29)。
*模擬試験会社との約束で、どちらの模擬試験かはホームページではお伝えできない。首都圏最大級の有料の模擬試験である。
つまり、「報告書がオール3」で「平均偏差値70」なら、桜修館に確実に合格できる。ここで勘違いしてはいけないのは「報告書がオール3」なら、それだけで合格率50%に近いという訳ではないということだ。「オール3」でも、適切な受検対策をしなければ、合格率は50%を大きく下回ることになる。あくまで統計量なので「報告書オール3」の受検生は「適切な受検対策」もしていることがほとんどで、そうした人でも合格率は50%未満と読んでほしい。だから、すべて「○○未満」で表示してある。
逆はもっと厳しくて、「2」が2つある人は、どんなに頑張っても、合格可能性は20%を超えることはないということだ。稀に、「2」が2つあっても、実力が非常に高い人がいるので、そういう人は合格するということだ。ただし、「2」が2つあると、平均合格率とさほど有意に違いがないほど、合格率は厳しい。
もっと言えば、「2」が3つ以上ある人は、合格率が受験者平均合格率を大きく下回り、合格可能性はほとんどないから、倍率とは関係なく不合格となる。つまり、合格するに値する「学力」が絶対的に不足しているので、倍率が下がっても合格できない。
用意周到に都立中受検に臨む親子や、準備万端で中学受験に臨む親子は、そんなことは百も承知で、「運」で合否が決まらないことも知っているから、「運」をあてにして勝負に臨んだりしない。都立中に不合格になった親子たちを「運」が悪い人たちだとは思わない。見抜いているから冷静に判断できる。
総括すると、合格者のほとんどが「オール3」の人、これに「2が1つ」の人が5〜10人に1人くらい、「2が2つ以上」が20人に1人くらいいる、という感じだろう。
さて、本論に戻る。
■仮継続基準:最低でも充足したい。
第1段階:小4学年末で「2」が2つまでで「1」はなし。
第2段階:小5学年末で「2」が2つまでで「1」はなし。
満たせない場合は、合格可能性は5%未満、つまり不合格可能性が95%以上。よって、サッサと諦めた方がよい。
■本継続基準:今や合格の必要条件となりつつある。十分条件ではない。
第1段階:小4学年末で「3」がすべて。
第2段階:小5学年末で「3」がすべて。
満たせない場合は、合格可能性は急激に低下する。都立中でなければならないのか、もう一度再検討することをお勧めする。
その際に参考となるのが、「学力テスト型模擬試験」だ。高校受験の偏差値に近い値が出るので、高校受験の偏差値表で、都立トップ校を狙える偏差値を平均して獲得できるようなら、都立中合格の可能性がそれなりにある。具体的には偏差値70前後以上だ。先の「首都圏最大級の有料の模擬試験」であれば偏差値65以上に相当する。
「学力テスト型模擬試験」とは、小学校の学習内容のみを出題範囲とする模擬試験で、小学校の学習範囲の理解度を正確に測定でき、偏差値も計測される。私国立中学受験用の4教科型や2教科型の模擬試験とは出題範囲も、出題内容も、受験者も違うので、相互に読み替えるには、適切な測度変換が必要になる。
「適性検査型模擬試験」は、小5までは全くあてにならない。小6の夏まであてにならない。ある程度あてになるのは、小6の9月以降からのみだ。それまでは「適性検査型入試問題」に慣れるのには有効だが、合格の可能性の判定はあてにならない。偏差値が高く出ても、合格の可能性を信じることは危険だ。
「学力テスト型模擬試験」も、小4までは信用できない。小4までは、出題内容が簡単すぎるのと、優秀な参加者が少ないことで、高得点や高偏差値が取りやすい。偏差値の性質上、さして学力が高くなくても、偏差値70前後に計測されることもあり、代えって判断を誤ってしまう。むしろ、「学力テスト型模擬試験」で低偏差値しか出ない場合はかなり危機的状況だ。すでに相当な「つまずき」がある。ただし、小5以降なら高成績者の成績も、それなりに信用できるようになる。
Q:都立中の受検を諦めると勉強しなくなるのではないか?
そもそも、受検しないなら勉強しないというのは本末転倒している。しかし、現実問題として、勉強しなくなることを懸念するのは理解できる。そういう子だから都立中への合格可能性は低いのだが、今更そんな議論をしても始まらない。
そこで「おススメの学習プラン」をご紹介する。
検定試験合格を目標とするのだ。目標として適しているのは以下の3つだ。いずれも、将来の高校受験でも役に立つ。難関以外の私立高校で「加点」がある。生徒会長やっても、部活で都大会に進んでも、加点はせいぜい「1ポイント」。だけど「英検準2級」も「1ポイント」。加点は合計で「1ポイント」か「2ポイント」までなので、検定試験はお得感が強い。しかも、検定に合格できる学力は、本番入試の得点力にも直結するので、鬼に金棒だ。
・「英語検定」準2級
・「漢字検定」準2級
・「数学検定」3級
3つともすぐに挑戦したい。そして中2までに合格したい。まずは「漢字検定」を確実に取りたい。次に「英語検定」もできるだけ早く終わらせたい。3つの中では一般的に「数学検定3級」が一番合格しやすいと思う。もちろん、それぞれに、現実的に合格できそうな級から挑戦を開始するのがよい。そして、級をスキップせずに順に合格していくこと。確実に力がついていく。しかも、結構楽しく挑戦できるし、模擬試験や合格判定テストのように苦々しい思いをしながら挑戦しなくて済む。「勉強しろと言わなくても自然と勉強する子」になれる。尚、小学生だから、数学検定は算数検定から始めるのがよい。
算数検定・数学検定では、「計算」だけでなく、「図形」や「確率統計」もまんべんなく出題されるので、計算ばっかりに偏った勉強にはならず、高校入試の出題範囲をしっかりカバーできる。将来の大学入試にもつながる学力をつけられる。しかも『記述式』だ。『文章題』も出題されるので、算数・数学の総合的な学力向上にも役立つ。
検定合格だけを目指して勉強するというより、将来の高校受験や大学受験を念頭に、英語、算数・数学、漢字の学習に取り組み、その途中の到達度を確認するために受検するのがよい。それぞれの検定問題に直接取り組ませずに、『総合的な』英語学習、算数・数学学習、漢字学習に取り組むようなプログラムで進めるのがよい。小学生に高校受験指導をしている塾に通いながら進めると、より確実に、より早く合格できるのではないか。
なにしろ、努力が完全に報われる試験なので、努力の甲斐は計り知れない。入学試験などの競争試験と違って、不安やストレスも少ない。明確な目標設定ができ、かつ前向きに取組める可能性が高い。
高校受験の対策も、小5の春までには開始した方が断然有利だから、いつまでも都立中受検にこだわらないで、前向きな気持ちで方針転換するのもよいのではないか。
小4と小5と小6の夏休みを、受検勉強漬けにしなくて済む。受験勉強以外で、小学生の時にしか挑戦できないことに、全力で取り組むことができる。一生忘れられない貴重な思い出をつくれるだろう。
もちろん、中学受験の勉強も小学生の時にしか挑戦できないことだ。受験勉強に全力で取り組むことは大いに意義がある。しかし、それを理解できない保護者もいて、そうした親子は受験勉強が中途半端になるから、心を入れ替えるつもりがないなら、中学受験とは別の道がお勧めだということだ。中途半端な親子は高校受験や大学受験でも成功しない。
何事も、全力で取り組める諸条件が揃わなければ、満足できる結果や後悔しない結果にはつながりにくい。中途半端な都立中受検よりも、もっと有意義な小学校生活の送り方があるのだ。
一緒にやってみないか?
高校受験を目指す小学生の指導には自信があるから。
都立高校トップ校や、難関国立高校を、目指してみないか?
小5や小6から目指せば、より確実に狙えるから。
中学生になると、やたら忙しくなるから、小学校高学年から始めるのが得策だ。
高校受験は、小学生のうちから周到に準備するべきだ。
中学受験を、小学校入学前から周到に準備するように。