パソコン版を見る

三田学院

[2018年5月17日]

【都立中】公立中高一貫だと思うな!

難易度に大きな開きのある全国の「公立中高一貫校」の全てを、「公立中高一貫」として全て一括りで語るのは適切でない。

「都立中」は難関校である。都立中を、一般概念としての「公立中高一貫」として語るのは適切性に著しく欠ける。判断を誤ることになりかねない。都立中は中学受験における難関校として認識するのがふさわしい。

「公立中学校」とおなじ「公立」という言葉を聞いて、お気軽な学校だと思ってはいけない。「公立中学校」とは全く違う学校である。

都立高校も「公立」高校だが、ピンからキリまであるのはご存知だろう。だから、「都立高校」に進学したと聞いても、いかようにも解釈できる。ある人は偏差値70超の都立高校進学校をイメージするかもしれないし、ある人は実質定員割れの不人気都立高校をイメージするかもしれない。

ここに「公立」中高一貫の受検を考える上での重大なリスクがある。

・誰でも受検できるが、誰でも合格できるような学校ではない。
・誰でも受検できるが、誰でも入学できるような学校ではない。

「公立」と聞いただけだと、自分の都合の良いように、好きなように解釈したくなる。しかし「都立中」は、入学可能性について、自分の都合に良いように解釈できる「公立」学校ではない。

・「知識」の詰め込みでは通用しない公立中高一貫入試
       ⇓
・「知識」は必要とされない公立中高一貫入試

このように都合よく解釈している人が多い。特に勉強が得意でなかった親に多い。「知識」がなければ「思考力」もありえないことが理解できていない。何の知識もない状態で「黄金」と言われて、「黄金」とは何かを正確に思い浮かべることができるだろうか。

「思考」には「知識」が必要なのである。小学校で学習するすべての「知識」が最低限の「知識・技能」として必要なのである。その上で、その「知識・技能」を発展的に使いこなせる「思考力」や「判断力」や「表現力」を伸ばしていくことが重要なのである。

小学校授業で実施される「カラー・プリント・テスト」で毎回ほぼ100点満点が取れるようでなければ、「思考力・判断力・表現力」の前提条件が怪しい。

「カラー・プリント・テスト」で平均90点では、「人並み」の学力の範囲を超えていない。平均80点代以下では「人並み」未満だ。小学校で70点や60点は、かなり厳しい。

中学校の定期テストでも、70点や60点未満は論外である。何をするために学校に通っているのかという事から、見つめ直した方がよい。授業中に、寝ているか、瞑想しているか、妄想しているか、思考停止しているかであろう。しかも、その癖は小学校時代から続いていることがほとんどなはずだ。

ある都立中の適性?で出題される「算数」と称する問題の中には、地元公立中学の中学2年「数学」を終えた段階であっても解けないようなものすらある。しかも学力が平均以下の中学生だと、高校受験を終えた頃になっても解けない。

都立中の適性検査は、単なる「知識」だけでは通用しないようにできているが、「知識」がなければ、もっと通用しない。

全国の主だった「公立中高一貫」と「都立中」を一緒にした偏差値ランク表をご紹介する。有名な全国模試のデータを使って作成したものだ。男子の偏差値だ。レベル感を掴んでいただくため、国立大学附属中学で偏差値の把握が可能な学校を表に加えてある。

77:筑波大学附属駒場*
71:千葉県立千葉、筑波大学附属*、広島大学附属*
70:神戸大学附属*
68:小石川中教、千葉県立東葛飾、横浜市立SF、大阪教育大学附属池田*
66:横浜市立南、奈良女子大学附属*
65:武蔵高付属、両国高附属千葉大学附属*、福岡教育大学附属福岡*
64:桜修館中教、京都府立洛北、広島県立広島
63:九段中教、白鴎高附属、千葉市立稲毛、名古屋大学附属*、京都教育大学附属桃山*
62:大泉高附属、神奈川県立相模原、茨城県立並木中教、京都市立西京、福山市立福山、東京学芸大学附属国際中等*
61:川崎市立川崎、埼玉市立浦和、岡山県立岡山大安寺、岡山大学附属*
60:富士高附属、岡山県立岡山操山、沖縄県立球陽、横浜国大附属横浜*、北海道教育大学附属札幌*
59:鳴門教育大学附属*、熊本大学附属*

**都内在住の親子にとっての「公立中高一貫」は、ここまで**
**ここから下は、小石川と偏差値で10以上違う、同じ土俵で語るのは適切でない**

58:札幌市立札幌開成、京都府立園部、岡山県立津山
57:神奈川県立平塚、東京大学附属*、埼玉大学付属*、新潟大学附属新潟*
56:茨城県立日立第一、京都府立福知山、、岡山県立倉敷天城、宮崎県立宮崎西、香川大学附属高松*
55:埼玉県立伊奈学園、滋賀県立守山、徳島県立城ノ内、大分県立大分豊府、横浜国大附属鎌倉*、山形大学附属*、金沢大学附属*、静岡大学附属静岡*、長崎大学附属*、鹿児島大学附属*
54:長崎県立長崎東、長崎県立諫早、長崎県立佐世保北、鹿児島市立鹿児島玉龍、徳島県立富岡東、三重大学附属*
53:福岡県立嘉穂、お茶の水女子大学附属*、山口大学附属*、宮崎大学附属*
52:静岡県立浜松西、福井県立高志、香川県立川島、愛知教育大学附属岡崎*、福井大学附属*
51:静岡県立清水南、信州大学附属*
50:茨城県立古河、宮崎県立五ヶ瀬、佐賀県立唐津、熊本県立玉名、秋田大学附属*
49:山口県立下関、島根大学附属*

**ここから下は、小石川と偏差値で20以上違う、天と地ほど違う完全な別世界**

48:奈良県立青翔、岩手大学附属*
47:福岡県立門司学園、熊本県立八代、佐賀県立香楠、弘前大学附属*
46:福岡県立輝翔館
45:沼津市立沼津、福岡県立育徳館、熊本県立宇土、宮城教育大学附属*
・・
43:岡山県立岡山後楽館
・・
・・
40:沖縄県立与勝緑が丘

**この辺りが「学力平均」(この模擬試験の偏差値40)**
**目安は「よくできる50%、できる50%、もう少し0%」**
**この辺りは、小石川と偏差値で約30違う、天文学的な差がある**

余談だが、数理統計学と発達心理学や教育心理学の見地からは、偏差値が20違うと、IQは40違う。IQが40違うと、円滑な意思疎通が成立しないという研究報告がある。これだけ違うと親友はおろか友達になるのも難しいのではないか。日常的に、お互いに何を考えているのか理解し合えない。

親友ならIQ10以内、友達ならIQ20以内が限界といったところか。IQが140程度以上(学力偏差値70程度以上、上表の中学受験偏差値60程度以上)の人は、IQが100程度(学力偏差値50程度、上表の中学受験偏差値40程度)の平均的な知能の人と遊んでも、楽しくないどころか、いつまでも仲良く一緒には遊べない。だいたい察しはつくであろう。興味の対象も、遊び方も、大きく違ってくるのだ。

よって、一緒に学校生活を送るのは容易ではない。地元公立小学校や地元公立中学校の抱える根本的な課題の一つがここにある。これは、明らかに、教員の努力不足が原因でも、自治体の怠慢が原因でもない。

ワイド・レンジな学力層を一つの器に入れる義務教育学校に、どこまで高い学習指導効果を期待できるのだろうか。アクティブ・ラーニングも成立させずらいと思う。そのリスクを薄々分かっているからだろう、誰かにそそのかされなくても、学力上位層はもちろん、学力中位層以上の親子の多くまで、中学受験を志向するようになる。しかし「進学指導重視型の公立中高一貫校」をたくさん開校すればするほど、義務教育学校には学力低位層ばかりが滞留することになり、荒廃圧力がかかる。東京都心部では、約50%が私立中学などへ進む。だから建前では「公立中高一貫校は学力試験は実施しない」ということにしておかなければならない。しかも、自治体の教育委員会が、自分で自分の首を絞めることになるので、際限なく「進学指導重視型の公立中高一貫校」を開校し続けることはできない。私立中学校へ抜ける優秀な生徒を奪い返すだけでなく、将来に都立高校へ進む予定だった優秀な生徒を、都立学校どうしで奪い合うことにすらなりかねないからだ。だから定員は超少な目にしておかなければならない。自然な流れとして、既存の「進学指導重視型の公立中高一貫校」は、入学難易度が高止まりすることになる。

さて、全国に「公立中高一貫」は約200校、私立や国立すべて合わせると約600校ある。国立を除く公立約200校のうち、偏差値が算出できるのは、上表の50〜60校。残り140〜150校は中学受験偏差値が付与できないほど平易な難易度の可能性がある。

「都立中」の受検には、「公立中高一貫」に関する一般的な情報は通用しない。少なくとも入学難易度が半端ではないほどに違う。ちょっと勉強が得意なくらいでは合格できない。他の難易度が低い「公立中高一貫」とおなじような感覚で受検を考えるべきではない。「都立中」への合格を目指すなら、難関私立中学や難関国立附属中学に合格できるような「学力」が必要だということを知らなければならない。

巷の「公立中高一貫」本の情報は役に立たないどころか、「都立中」受検には有害である。都立中に完全に特化した内容の書籍でなければ読まない方がよい。甘い期待や甘い判断の原因になりかねない。

「都立中」に合格したければ、「都立中」を「公立中高一貫」だと思わない方がよい。

難関私立中学や難関国立附属中学に進む気がなくても、そうした学校に合格できるようになりなさい。そうすれば道は開ける。

「公立中高一貫向け専用の受検準備」ばかりをするのはやめた方がよい。それでは合格することは難しく、仮に合格できても、入学の授業についていくことに辛い思いをする。

何のために「都立中」を目指すのか、何のために「都立中」に進むのか、よく考えた方がよい。都立中は都立の6年生進学校だ。バリバリの進学校だ。中1から難関大学への合格を目指した授業が続く。バリバリの進学校としての授業を受けることを覚悟して、その素地を培って入学した人でないと、授業についていけなくなる。

タダのような教育費で、恵まれた環境の教育を受けさせたいというだけの「親のエゴ」は通用しない。そんな「エゴ」は、合格することにはもちろんだが、合格後の学校生活にも通用しない。

教育費を節約したいなら、地元公立中学から、高校受験で確実に都立高校を目指すのが最も安く済む。大手都立中専門塾に、小6だけで100万円から150万円も注ぎ込む必要はない。大手進学塾で私立中学を目指した準備と大差ない金額だ。地元公立中学から、高校受験で確実に都立高校を目指すのなら、そこまで高額な費用を負担する必要はない。

しかも、都立高校受験なら、都立中受検よりも、努力が報われる公算が圧倒的に高い。多くの人にとって、都立中受検に高額な費用を注ぎ込むのは『賭博』に近い「リスクとリターン」だ。数理ファイナンス的に、リターンである「期待収益率」はマイナスとなり、ほとんどの人は投資を回収できない。リスクあたりのリターンを評価する「シャープ・レシオ」もマイナスで、私立中受験をするよりはるかに教育投資効率が悪い。

都立中に不合格になるくらいなら、始めから高校受験で都立高校を目指すのがよい。ただし、その場合でも、必要な準備を先送りしてはいけない。そんなことでは、都立中に不合格になるのと、おなじような過ちを犯すことになる。

高校受験を選択した場合でも、中学受験をするのと同じように、小学生のうちから、真剣に勉学に取り組むべきだ。そすれば高校受験で成功することができる。

「親のエゴ」や「親の甘い考え」で、子に「都立中」を受検させるのは止めなさい。

都立中に合格したいなら、本気で、的を得た準備を、しかるべき時期から、しっかりとやりなさい。

できないのなら、都立中受検は止めときなさい。
できないのなら、都立中受検をさせるのは止めなさい。