[2018年5月29日]
東京都教育委員会から、小学生の保護者あてに配布された、平成30年5月の文書が興味深い。
なぜ興味深いのか?
東京都教育委員会が考える「学力」とは何かを明示しているからだ。結論から言えば、「学力」とは「小学校の学習内容を理解し活用できる力」のことだ。
何ら特別なことは言っていない。どこかの教育評論家や塾の宣伝のように、話を大きく盛ったり、全く新しい「学力」観を提示していたりはしていない。つまり「学力」の根本的な認識は何も変わってはいないことが分かる。
・小学校で学習する基礎的・基本的な内容
・考える力、判断する力、表現できる力
都内公立小学校および義務教育学校5年生と保護者の皆様へ
「平成30年度「児童・生徒の学力向上を図るための調査」の実施についてのお知らせ
本文を抜粋する。
・・中略・・。基礎的・基本的な内容は身に付いているか、また、考える力や判断する力、そして、自分の考えをきちんと表現する力などが身に付いているかどうかを確かめる。・・以下、省略・・
調査項目(2)学力向上を図るための調査 ・・中略・・ テスト形式で調査します。
算数 調査項目
・整数、少数、分数の計算
・計算のきまり
・大きな数
・分数と少数
・倍とかけ算、わり算
・時刻と時間
・面積
・円と球
・資料の整理
国語 調査項目
・話すこと
・聞くこと(「聞くこと」については、音声を聞いて答える問題)
・漢字の読み
・漢字の書き
・言葉に関する知識
・文学的な文章の読み
・説明的な文章の読み
・書くこと
【読み解く力】(4科それぞれに共通)
(1)取り出す力
(2)読み取る力
(3)解決する力
*理科と社会の調査項目は省略する。算数や国語のように検定教科書の項目とおなじだ。
・「思考力、判断力、表現力」とは「学力」のことだ。
・大手塾や教育評論家の言葉に騙されてはいけない。
・大手塾や教育評論家に騙されて、「学力」向上の道を、踏み外してはいけない。
都立中学や都立高校といった公立学校は、教育委員会の学力観をもとに入試選抜を行う。国立大学附属学校はもちろんおなじ学力観を持っている。私立学校でさえ大きく逸脱していない。大きく逸脱すれば、大学進学実績が振るわなくなるから、逸脱できない。
「学力」向上の前提となるのは、学校での学習内容をしっかりと理解できているかどうかだ。それを蔑ろにして、高度な学力を身につけようとしたり、高い難易度の入学試験に合格しようとするのは誤りである。
ほとんどの公立小学校では、小4になると、クラスの半数以上が宿題をまともに提出しなくなる。「まともに」というのは、たまに出す、いい加減な出来具合で出す、は含まない。その実態を把握できていない保護者が多い。保護者会で担任教員から「宿題は毎回必ず提出するように、家庭でも確認してください」と言われても、自分の子は提出していると思い込んで確認すらしていないから、状況がなかなか改善しない。ここに学力格差の根本原因がある。塾の宿題や課題を出さない子は、学校の宿題も満足に提出できない子がほとんどだ。
・どんな宿題が出ているか、すべてを把握できていない
・宿題を終えたかどうか、現物を見て確認できていない
連絡帳を見て、宿題が済んでいるかどうか、現物で確認しなければ、確認したことにはならない。
「宿題ヤッタ?」
「ウン」
「・・」
「宿題ヤッタ?」
「後でヤル」
「・・」
これで終わりになっている家庭が多い。声かけすらできていない家庭も多い。
宿題をしない理由は大きく分けて2つある。複合的な理由になっている場合も多い。
・めんどくさい(漢字や作文など)
・分からなくて、できない(計算ドリルなど)
Q:学力格差はどこから発生するのか?
家庭の教育力の差からだ。
Q:入学試験で問われる学力とは何か?
都立中学や都立高校なら、明らかに、小学校や中学校での学習内容であることが明白だ。
基礎基本が重要なのだ。その上での活用力だ。いきなり活用力を向上させようとしても無理なのだ。
土台となる基礎学力を、より高いレベルに引き上げないと、活用力も向上しない。
土台がしっかりしていない子が、活用力が問われる問題にばかり挑戦しても、失敗し続けるだけだ。
私立御三家中学受験塾や公立中高一貫受検塾では、もともと合格できそうな子を、つまり土台ができ上げっている子を、合格させるカリキュラムになっている。そうでないほとんどの子は、消化不良を起こす「お客さん」でしかない。
それでも、土台作りを飛び越えて、活用力に飛びつこうとするのか。
・大手塾では、当初からの目標を達成できた子は、全体の1〜2割程度。
・大手塾では、泣く泣く引き下げた名目的な第一志望に合格できた子でさえ3割程度。
・大手塾では、第二志望や第三志望以下にしか合格できなかった子は、7割以上。
都立中が第一志望なら、次のような感じだろう。
・都立中受検大手塾では、都立中に合格できた子は、全体の1〜2割程度。
・都立中受検大手塾では、併願した難関私立に合格できた人を含めても、2割程度。
*というか、都立中受大手験塾からは難関私立にほとんど合格できない。
・都立中受検大手塾では、練習校にしか合格できなかった子と、どこにも合格しなかった子が、7割〜8割。
ある教育シンクタンクの人から聞いた情報だ。誰もが、希望をかなえられると信じながら本番を迎える。しかし、入試結果が出そろって、はじめて現実の本当の厳しさを知る。しかし、もうやり直せない。仕方なく受け入れるしかない。しかも静かに受け入れるしかない。そのことがまた、新たな悲劇を生む。悲劇は繰り返される。次はアナタによって繰り返されるのかもしれない。
教育格差は、保護者の判断の誤りによって、拡大していくのだ。
巷には、一部の人だけ成功する大手進学塾塾か、敗北者養成機関である大手百貨店型学習塾や大手個別指導塾ばかりだ。
・大手進学塾塾に行くいなら、上位1割に入れる人にしておきなさい。それ以外は失敗する。
・大手百貨店型塾や大手個別指導塾に行くなら、どのみち失敗することを覚悟しておきなさい。
・成功が約束されていない受験生が成功を目指すなら、大手塾へ行くのはやめときなさい。
・学習指導する能力がない親が、家庭で受験指導することも、やめときなさい。事態を悪化させるだけだ。
成功が約束されていない受験生を成功させようとすると、コストがかかるので儲からない。だから大手塾はそこに手を出さない。成功が約束されている限られた子と、成功するはずもない大多数の子によって、大手塾の生徒数は砂時計型のような収容力分布となる。実態の学力分布には適合していない。大手塾の分布に合わせて塾選びすると、一部の成功する受験生と、おおくの失敗する受験生に自ずと仕分けられてしまう。ほとんどの中小塾もおなじ戦略を取っていて、合格できる人しか合格させられない。そうでないと採算性が悪いからだ。
成功が約束されていない受験生を成功させる。
これには指導コストがかかる。しかし、どうしたことか、そうした保護者は高い授業料は払いたがらない。成功が約束されたと思い込んだ保護者しか高い授業料は払ってくれない。つまり、成功が約束されていないなら、成功が約束されているよと騙さなければ高い授業料は払ってくれない。しかし、これは正直者にはできない商法だ。
商売として大成功している大手塾は、受験生を成功させずに、ビジネスを成功させる。大手塾というのは指導が優れているから大手になったのではない。商売上手だから大手になったのである。指導が優れているのに、こじっまりと営まれ続けている塾は、昔からあり、時代が変わっても消えない。大手は突然消える。ビジネス・モデルが成功すると突然現れ、ビジネス・モデルが時代に合わなくなると、突然消える。商売のノウハウで経営が成り立っていた証だ。
商売上手な塾は簡単に見分けられる。授業に真面目に取り組まなくても生徒をクビにしないが、高額な授業料を払わない生徒はクビにする。払わないなら受からないよと脅かして払わせる。払わないならクビにするぞと言わんばかりに脅かす。そして、受からない子からも、特訓費用だ、合宿費用だと、ドンドンむしり取る。金さえ払えばニコニコしている。進学実績を上げてくれる子はすでに確保しているから、受からない子は受からなくてよい。金さえ払ってくれれば、それでよい。ドンドンとクラスを増やして、ドンドン教室を増やして、世の中の受験生からドンドンむしり取る。
それでも、商売の手助けをするの。
学力を向上させたいんじゃなかったの。
目標を達成したいんじゃなかったの。
合格したかったんじゃなかったの。
成功が約束されていないが、本気で成功したい人。
成功が約束されていないが、本気で成功を目指せる人。
そのような人たちに出会いたい。
もちろん、成功が約束された人であってもかまわない。
成功が約束された人なら、大手よりも楽に合格まで持っていける。
ただし、なんちゃってで成功したい人は、敗北者養成塾へ行くことをお勧めする。どのみち成功はないが、どのみち敗北するのだが、楽して楽しく敗北できる道が用意されている。そして、楽して楽しく敗北し続けられる。いつしか、楽して楽しく敗北者になれる。その先に、長いイバラの道が待っている。
成功への道は、敗北者の選ぶような、楽で楽しい道とは違う。
成功への道は、本当の意味で、楽しい道となる。