パソコン版を見る

三田学院

[2018年6月6日]

【都立高】蘇った日比谷

日比谷高校の復活は想定を超えていた。

日比谷高校の説明は必要ないだろう。明治時代に設立された旧制府立一中である。おもな旧制中学と旧制高等女学校は以下の通り。

旧制府立一中:日比谷高校
旧制府立二中:立川高校
旧制府立三中:両国高校・・中高一貫化
旧制府立四中:戸山高校
旧制府立五中:小石川高校・・中高一貫化
旧制府立六中:新宿高校
旧制府立八中:小山台高校

ここまでが伝統と実績のある都立の名門中の名門進学校。この他にも、近年評価の高い進学校には次のような学校があるが、いずれもナンバースクールを前身としている。

旧制府立十中:西高校(昭和に入ってからの設立)
旧制府立十五中:青山高校(昭和に入ってからの設立)
旧制府立十九中:国立高校(昭和に入ってからの設立)
旧制府立二十中:大泉高校(昭和に入ってからの設立)・・中高一貫化

旧制府立一高女:白鴎高校・・中高一貫化
旧制府立二高女:竹早高校
旧制府立三高女:駒場高校
旧制府立五高女:富士高校・・中高一貫化
旧制府立六高女:三田高校
旧制府立七高女:小松川高校
旧制府立十三高女:武蔵高校(昭和に入ってからの設立)・・中高一貫化

旧制市立一中:九段高校・・千代田区移管後、区立として中高一貫化
旧制市立二中:上野高校(昭和に入ってからの設立)

東京府ではなく東京市を当初の設置母体とする九段高校と上野高校は、旧東京府立と比べて、都立高校の新体制下で扱いが冷遇されているように映るが、気のせいだろうか。

尚、府立とは東京府立、市立とは東京市立のこと。1943年に東京都制が施行され「東京府」も「東京市」も廃止された。

都立桜修館中等と国立東京大学教育学部付属中等は、都立高校名門校とは全く違う系譜を持つ。ともに7年制の旧制高等学校として設立された経緯がある。尋常科4年と高等科3年で構成され、高等科が旧制高校(新制大学の教養課程)に相当した。同じタイプの学校としては、私立武蔵、私立成蹊、私立成城学園などがある。

桜修館が、他の都立中高一貫校とは校風や雰囲気が違うのは、設立経緯や歩んできた歴史の違いも理由となっているのかもしれない。生徒だけでなく保護者も違う。時系列に観察していない一般の受験生親子には、ハッキリとは見分けがつかないかもしれないが、わかりやすく言うと、親子ともに騒がしく活発だ。他の都立中はどこも親子ともに静かでおとなしい。何度行ってもそう感じる。どちらがいいとか悪いとかの話しではない。

さて、日比谷高校は豪語する。「私立大学への進学を狙う人には合わない学校」だと。実際に在校生の80%が、難関国公立大学(東・京・一・工)と国公立大学医学科への入学を目指している。

日比谷高校の調査に先立ち、高校入学枠のある難関私立中高一貫校を調査していたので、そちらを先にレポートする予定だったが、日比谷高校を訪問して予定を変更することにした。

先にレポートする予定だったのは、巣鴨と本郷である。伝統ある名門進学校として、男子進学校として、これも説明の必要はなかろう。巣鴨は昨年度、医学部医学科への合格者が150人を超えた。驚異的な進学実績である。数年前に校舎も新築し環境も申し分ない。注目すべきは充実した教育内容である。イギリスの名門校であるイートン校と提携し、ハイエンドなグローバル教育体制を敷いた。しかも学校の説明によれば、イートン校側が巣鴨を選んだという。東京でイートン校と提携しているのは巣鴨だけだ。イートン校へ留学ができる。海外名門大学へも留学できる。しかも巣鴨に戻れるので安心だ。本郷は長くなるといけないので今回は省略する。

巣鴨も本郷も、中学からの入学者が本流だ。しかし、難関私立男子校としては珍しく高校入学枠がある。数少ない私立男子校の高校入学枠として、注目しているのだ。私立女子の高校入学枠は壊滅的だ。豊島岡女子があるが難易度はハイエンドだ。ほどよい難易度で教育内容や進学実績に安心できる女子校がない。

女子が選べる私立高校はほぼ共学校となる。女子高で、あえて名を挙げるなら江戸川女子くらいだろうか。共学校では、底辺校から人気難関校にのし上がった学校が数校があるが、その、のし上がる過程での裏の取り組みに個人的に疑義がある。学習塾の裏舞台を知るモノにしかわからない疑義がある。大手塾と結託していたということだ。これ以上は書けない。

相対的に安心してお勧めできるのは宝仙理数インターあたりだろうか。涙ぐましいほどの自助努力を長年続けてきた学校だ。やっと、ここまでこれた。宝仙小学校は今も昔も名門小学校だから、名実ともに底辺からのし上がった学校とは根本的に違う。巣鴨も本郷も底辺からのし上がった私立学校ではない。伝統ある名門進学校である。

さて、なぜ、巣鴨や本郷をとばして日比谷を書くのか。

日比谷の教育内容が、私立最高レベルの教育内容を誇る巣鴨さえも超えるような内容だったからだ。

・都立学校でここまでやるのか。
・都立学校でここまでできるのか。

想定を超えていたとは、そういうことだ。

高い授業料を負担してまで、難関私立進学校へ進むという意欲を打ち砕かれるような内容だ。

難関私立高校や難関国立大学付属校と併願し、ともに合格したら日比谷を選ぶ。迷うことなく日比谷を選ぶ。そうした親がいても、そうした受験生がいても、何ら不思議ではないと感じた。

・迫力が違う

ただの名門進学校ではない。ただの伝統進学校ではない。都立高校なのに名門私立と比べて遜色のない、いやそれを凌駕する教育内容を提供する。その自信と意欲と迫力がある。

・進むところ、日比谷に敵なし。

まもなくそんな時代がやってくるのではないか。

ただし、だれでも挑戦できる訳ではない。都立中学のように記念受験も実質できない。公立中学校では、公立小学校とは違い、「進路指導」を行うから、凡人が日比谷を受けたいと言っても相手にはしてくれない。結果が見えているからだ。

推薦入試は「オール5」だけで定員の3倍を超える。女子の話しだ。「オール5」でも、ことごとく落ちるということだ。

自行作成問題。数学が難しい。都立西のような遠慮も配慮もない。数学が「5」なだけでは、解けないだろうし、合格点に達しないだろう。

実質倍率約2倍は、ほぼガチンコだ。なんちゃってはいない。「オール5」でも落ちまくる。恐ろしい競争がそこにあるのだ。

まあ、都立中入試も、実質倍率は2倍くらいだろう。それを超える受検生には、もともと合格の可能性はない。

都立中入試も、報告書満点の闘いだ。報告書満点でも落ちまくる。もう、随分前からの常識だ。その高校版が日比谷だ。3段階評価ではなく、5段階評価だから、さらに厳しい。

・SSH
・グローバル10

これは、小石川とおなじだ。

・3年制の都立高校進学校、日比谷
・6年制の都立高校進学校、小石川

どちらが、都立学校の新時代をけん引するのだろうか。

6年生の都立高校進学校と書いたが、都立中の中学課程を公立中学だと思わないようにした方がよい。そういう勘違いをして入学すると、あっというまに粉砕される。小学校時代に並びない優等生であった子でも、勘違いして入学すると瞬殺される。容赦はない。悪いのは都立中ではない。勘違いをした親子である。覚悟して合格を目指すがよい。

そうでなければ深く後悔することになる。地元公立中学に進んでおけばよかったとなりかねない。まあ、どの学校であっても、学力成績で上位30〜35%くらいまでに安定して入り続けられないと大成功するのは難しい。不本意な学校生活を送ることになりかねない。合格できればそれでよいのではない。開成のビりより、巣鴨のトップの方が絶対満足できるはずだ。日比谷のビりより三田のトップの方が充実した高校生活になるはずだ。

日比谷に合格したければ、まず参加条件として「5」を並べろ。そして共通問題ならほぼ100点が取れるようになれ。その上で、大学入試の現代文が解けるようになれ。英語は難問の全てに記述で正解できるようになれ。最後に、数学。これで決まる。合格者と不合格者は数学で決まる。合格者と不合格者の得点力がはっきり分かれるのは数学だ。

覚悟しておけ。

凡人が気安く口にできる高校ではない。
秀才であっても気安く口にできる高校ではない。
選ばれし受験生でなければ、口にするのはふさわしくない。
選ばれし受験生であっても、合格後の、怒涛の如き3年間を乗り切れる保証はない。

覚悟しておけ。

適切な対策を積んだ者だけに与えられる道だ。
適切な対策を積んだ者だけに与えられる栄誉だ。