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三田学院

[2018年6月22日]

2月の敗者

中学受験マンガ「二月の勝者」が人気のようだ。

普段マンガは全く読まないが、保護者との面談で話題になるかもしれないので、刊行されている2冊とも読んだ。どんな結末になるのかは知る由もないが、他の読者の方が指摘しているように、アリアリな臨場感を伴う展開が面白いのだろう。

あまり内容を話すとネタバレになるし、許可なく引用すれば著作権法違反で訴えられるかもしれないので、内容に直接触れるのは止めておく。

・「地元公立○○中でも、いいんだよ」

小学生の多くはまだ思考に幼さが残る。片方の親から上のような言葉を聞くと混乱する。目標校に合格できなくてもいいんだと感じる。全力で受験勉強しなくてもいいんだと思うようになる。目標校に合格する可能性が下がる。ストレスを緩和してあげようと思ったのかもしれないが、その安易な一言が、すべてを破壊してしまうことになりかねない。

忙しい中で必死にお弁当作りをし、塾からの配布物を整理し、宿題の進捗管理をし、模試の成績などから次の対策を考えている親がいる一方で、もう一人の親が「地元○○中でも、いいよ」と囁く。

悪魔の囁き

となる。

・「高校は、私立でもいいの」
・「高校は、都立に行けなくてもいいの」

これはよくあるパターンだが、都立高校は5教科入試、ほとんどの私立高校は3教科入試。5教科の受験勉強をツラいと感じる中学生は多い。そこで、親からこの言葉を聞くと、イッキに私立高校へと心がなびく。しかも、出願時点で実質的に合格が決まる、推薦という名の私立「単願」受験の誘惑に勝てなくなる。誰よりも早く高校進学が決まり、残りの中学生活を消化試合にできる。多くの人が受験勉強で悲壮感を漂わせている脇で、思う存分遊べる。受験勉強を嫌々やってきた子には至福の時となる。

・「大学は、どこでもいいのよ」
・「大学は、行っても、行かなくても、どっちでもいいの」

これも、子供を混乱させる。難関大学や有名大学に合格できなくていいなら、なぜ必死に受験勉強をしなくてはいけないのかわからなくなる。大学全入時代である。そうした社会情勢を受験生は敏感に感じ取る。どこでもいいなら、勉強しなくてもいいでしょ、となりかねない。

親は子供の前で、思ったことを、すぐ、そのまま話さない方がよい。

親が子供の前で話すときは、それがどんな影響を与えるか、よく考えてからにした方がよい。

失言は、取り返しがつかなくなることが多い。

それで失脚する政治家が後を絶たない。
それで人気を失うタレントが後を絶たない。
それで進退が決まりかねない。

今まで築いてきたモノを、一瞬にして壊しかねない。

それくらい、失言は影響が大きく、取り返しがつかなくなるケースが多い。小物政治家や小物タレントの失言なら、いずれ忘れ去られる。しかし、親の発言の場合は、子の一生を左右しかねない。

地元○○公立中がよくないのではない。地元○○公立中でいいよ、と言われたら、受験勉強に身が入らなくなりかねないでしょ、ということ。

私立高校がよくないと言うのではない。私立高校でもいいのよ、と言われたら、受験勉強に身が入らなくなりかねないでしょ、ということ。

難関大学や有名大学以外がよくないと言っているのではない。大学ならどこでもいいのよ、行かなくてもいいのよ、と言われたら、受験勉強に身が入らなくなりかねないでしょ、ということ。

思わぬ一言が「2月の敗者」への道に、つながりかねないということが言いたいだけ。

・受験はやめてもいいのよ。
・必死に受験勉強しなくてもいいのよ。
・つらいなら塾を変えてもいいのよ。
・塾の宿題なんてやらなくていいのよ。
・塾の指導なんて従わなくていいのよ。
・合格できなくてもいいのよ。

そう親から言われている子に、ワタシの受験指導は効果がない。

巷で人気の介護型個別指導塾や保育型個別指導塾に通えばよい。