[2018年6月24日]
学寮のある中高一貫校をご紹介する。
企業の海外展開が進み、海外駐在と国内勤務を繰り返されるご家庭が増えた。
当教室の「昨年度の中学受験生3名」うちの1人もそうだった。「小6の6月入塾」で、次の海外赴任時には帯同するという家庭の方針により、学寮はないが、帰国子女の受け入れ実績があり、都立中並みか、それ以上に大学進学実績の良好な私立中学に「一般入試」で合格し、進学した。
帰国子女入試も広く行われるようになったが、「帰国から〇年以内」などの基準があり、いつまでも帰国子女枠で受験できる訳ではない。その受験生も、数ヶ月違いで帰国子女入試の資格を得られなかった。
小学生としては英語力が高いが、日本語力に不安があったり、算数・社会・理科の基礎基本が、すっぽりと抜けていたりすることも多い。中学受験するにしても、地元公立中学から高校受験するにしても、メリットよりデメリットが大きくなるケースもある。
加えて、次の海外赴任期間と大学入試に向けた準備期間が重複する可能性がある、単身赴任とはしたくない、幼い弟妹は帯同したいが上の子は国内の大学へ進んで欲しいので日本国内の進学校で学ばせたいなど、課題も多い。
これからも増えるであろう海外勤務の可能性があるご家庭は、一つの解決策として、学寮のある私立中学・高校を選択肢としてご検討されてはいかがだろうか。
今回は、注目校として、ライバル関係にある、2校をご紹介する。いずれも男子校である。
〇函館ラ・サール中学高校
〇北嶺中学高校
おススメしているのではなく、ご紹介するだけ。誤解のないようにお願いしたい。
函館ラ・サールは、知名度が高いのでご存知の方も多いだろう。中学生は大部屋の学寮となることで有名である。もともと東京入試を実施していたが、北海道新幹線が函館まで開通したことで、より身近になった。
近年注目度が上昇している学校として、北嶺がある。学寮は大部屋ではない。高3になると個室になる。札幌市内に立地し、札幌市中心部と千歳空港の間に立地する。空路利用なら函館よりも便利で安いと宣伝してくれと言われたが、ご判断は受験生に任せる。東京で受験できる。
特筆すべきは進学実績である。1学年120名で、国公立大学合格113名、うち医学部医学科合格40名、そして、私立大学医学部医学科合格24人。
国公立大学、MARCH、関関同立よりも難易度の低い大学のみへの合格者は2名のみ。多くの進学校では、成績下位層の進学先が、入学難易度と不相応な大学になることがあることを鑑みると、その安心感は計り知れない。
これは、学寮があることを最大限に活かし、学内成績下位3分の1に向けた、独特な学習指導による効果が大きく貢献していると思われる。難易度の高い進学校ほど、授業の難易度が高く、授業の進度も早いため、学内成績下位層の学力が危機的になりかねない。難易度で格下の学校の上位層と、大学進学で逆転してしまうようなことが多く起きる。ここに手厚い救いの手を差し伸べているところが、北嶺の最大の特徴だ。
しゅともし80%偏差値は以下の通り。
函館ラサール(1月8日):67
北嶺(1月8日):63
函館ラ・サールは2月3日に第2回入試がある。北嶺は、現地の学校見学に参加して「学校見学証明書」を入手しておくと、合否で若干の優遇が受けられる。
北嶺は中学募集のみだが、函館ラ・サールは高校募集もあり、東京でも受験できる。東京の公立学校長に認知されていないというか、理解されないことがあるらしい「併願が認められる推薦入試」もある。東京都の私立高校入試における「推薦」とも「併願優遇」とも違う。推薦基準を満たしていながら、学校長から推薦が得られなかった場合のために、救済措置もある。
函館ラ・サールは、関西圏からの受験生にも配慮して、算・国・理の3教科入試も選択できるが、首都圏の受験生は、極端に社会が苦手でない限り、算・国・理・社の4教科入試をお勧めする。ここで説明するのは止めておく。ただ単に、首都圏の私立学校との併願受験がしにくいという理由ではない。
函館ラ・サールも、北嶺も、偏差値の高さにビビる必要はない。合否ラインは、見かけほどには高くない。「ビリでもいいから合格」したいというなら手はある。ただし、リスクは高い。それよりも、しっかりと学力をつけて、しっかりと偏差値を上げて、「高い確率で、できるだけ上位で、できるだけ余裕をもって、確実に合格」できることを目指してほしい。
大学受験なら「ビりで合格」でよいと思う。でも、中学受験や高校受験では「ビりでも合格」はお勧めでない。中高一貫校や有名私立大学附属校の内部進学予定者の学習指導をしていて思う。かなりの数の不幸な中高一貫生がいる。
入学後は母集団が確定してしまうので、「学内成績下層民」になってしまった人は、容易に事態は改善しないことも知っておいた方がよいと思う。ご自身がトップ校などの進学校に通われた経験がある保護者なら、その現場を見ているだろうから、ワカってくれる人も多いと思う。もちろん頑張れば道が開けない訳ではない。でも、合格するよりも努力が必要になるかもしれない程に深刻だったりする。
もしかしたら「下層民」になることを気にしない親子もいるのかもしれない。そうした人には、北嶺の価値はワカらない。大都市の名門最難関中学を入学辞退してまで北嶺への進学を選択する親子のことを、奇人変人のように思うだろう。
新学期が始まって寮に戻ると、スマホは寮母に預けっぱなしにしなければならない。実家に電話するためには公衆電話を使うことになる。電池が切れようが、学期が終了して帰省する直前まで、スマホに触ることはできない。ゲーム機は持ち込めない。タブレットも持ち込めない。PCは許可がなければ使えない。息抜きは、将棋やボードゲームくらいになる。
敷地内の学校から戻ると、自習室にある指定された席で勉強開始である。「勉強最優先」が、あたかも生活規則のように用意されている。それが人気の秘密でもあり、進学実績の秘訣でもあり、高い評価につながっている。理想的な「勉強最優先」の生活がそこにある。「勉強最優先」とは「勉強漬けのことではない」。「スマホ最優先」などの対極にある価値観や生活のことだ。この価値がわからない人には、「ヤダ、ヤダ、イヤー」な感じの「キモチワルーイ」進学校だと映るだろう。そんな学校を紹介するような塾を「信用できない塾」と思う人がいるかもしれない。「少ない受験勉強期間」と「小手先の受験技術」で合格へ導くことを「プロ」の仕事だと思うような人には、ありえない教育施設であり学校であろう。
中学や高校に合格することが最終目標の人は少ないだろう。だから、中学や高校への合格後のことも想定しながら受験指導やアドバイスをすることが、誠実な態度だと思っている。多くの保護者は説明を聞いて、根拠データで確認して、深く納得してくれる。こんなアドバイスを受けるのは初めてだと感謝されることも少なくない。
もちろん、必要ないという人にアドバイスをするつもりはないし、スルーしていただいて全く構わない。むしろスルーしていただきたい。
ワタシのアドバイスは、ワタシのアドバイスを必要とする人にしか効果がない。
ワガ子に味わってほしくない苦しみは、生徒にも味わってほしくない。
それが、ワタシの受験指導の原点である。揺るぐことはない。
進学先で「下層民」になどなってほしくない。バクチを打つような挑戦をして苦渋をなめてほしくもない。この強い思いが理解できない人は、この日記は読まないでほしい。
生徒たちが、適切な試練を乗り越えて、健全に成長し、活躍してくれることを、いつも願っている。