[2018年7月17日]
都立中高一貫校の補欠募集の人数が興味深い。
東京都教育委員会より、6月29日、今年度の第二学期の転学・編入学募集人数が発表された。
「区分2」で補欠募集があるということは、中途退学者があったと考えるのが妥当であり、その人数に注目したい。
補欠募集には、募集区分として、「区分1(転勤・転居)」、「区分2(一般)」がある。「区分1」は転勤等による転入者のための募集枠であるが、「区分2」は退学者などで欠員がでた際の欠員募集枠である。
<区分2:欠員募集状況>
高校課程(後期課程)における、1学年、2学年、3学年の順に転記する。
両国:02、02、01
武蔵:02、01、07
大泉:02、05、06
富士:02、04、16
白鴎:09、08、16
かなりの人数の欠員募集を行っている都立中高一貫校があることが分かる。
続いて、都立高校進学校の欠員募集の状況であるが、極めて少ないことが分かる。
日比谷:02、01、02
都立西:02、01、01
青山高:02、00、01
小山台:02、00、01
新宿高:02、00、01
三田高:02、01、01
一学年320人程度で、中途退学者1〜2名は常識的におかしくない。しかし、一学年120人とか200人とかで、10人を超える人数の中途退学者がいるのは穏やかでない。
この他にも不登校などの長期欠席者がいる可能性があり、欠員募集は、まだ学校に籍がある人数分は行わなれないので、実態はさらに厳しいだろう。
ムリをして「6年制の都立進学校」に進み、校内学業不振から途中で退学するリスクを取るよりも、公立中学から高校受験をして、「3年制の都立進学校」へ進む方が安全なのかもしれない。
優秀な生徒が集う学校は一見すると魅力的に思えるかもしれないが、長期にわたり「校内下層民」に定着してしまうと、想像を超える厳しい学校生活に追い込まれかねない。しかも6年というのは結構な長期間だ。
地元公立中学の3年間で、存分に「自己肯定感」や「自己有能感」を高めてから、3年制の進学校に進めば、3年間などアッと言う間だから、高い「自己肯定感」や高い「自己有能感」を土台に、厳しい局面であっても、知らず知らずに乗り越えて、気がつけば大学生になっていたという可能性が高くなりはしないか。
さて、職業科でも、商業科や農業科は欠員募集が少ない。
芝商業:00、03、02
園芸高:01、02、03
工業科や低偏差値普通科の一部では欠員募集が多い。学年が上がるほど欠員人数が増えるところも似ているように見える。
蔵前工:03、05、16
南葛飾:02、14、18
田柄高:02、10、16
都内の公立中高一貫であっても、中等教育学校は欠員ができても欠員募集をしない。
かつて、九段中等で、中高一貫化後の初年度入学者に、後期課程進学時において、募集総人数の10%を超える中途退学者がでたが、現在は落ち着いているようだ。
九段の説明によると「ミス・マッチ」が原因だったらしい。進学校としての教育内容を十分に理解しないまま入学した生徒が、レベルが高く速度の早い授業に、適応できなかったということらしい。しかし、入学希望者への十分な説明を事前に実施することで、現在は「ミス・マッチ」はほぼ解消しているとのことだ。
では、一部の都立中高一貫校の中途退学者の多さはどこからくるのか。
未だに、「ミス・マッチ」で入学してくる生徒が相当数いるということなのだろうか。
入学者の学力下位層に配慮した授業を行えば、学力上位層の不満が高まりかねないし、生徒の進路希望がかなえられなくなるリスクが高まる。
習熟度別授業は、すでにどの学校も実施しているから、打てる手はもうさほど残っていないだろう。一部の都立中高一貫校だけに、特別予算を追加配分して、校内の学力下位層向けに手厚い指導を行うようなことは考えにくい。
さあ、どうする?
さて、どうなる?
都立中高一貫校の、欠員人数の動向に、今後も注目していきたい。
<お願い>
本件に関して、都教育委員会や都立中高一貫各校へ、お電話や電子メールでお問合せされることはご遠慮ください。生徒の個人情報にも関わることから、詳細な情報開示は難しいと思われます。また、教育委員会や各校のご迷惑になるとも思われます。都教育委員会や都教育庁のホームページの報道発表等でご確認ください。