[2018年8月6日]
都立中高一貫校では、主要教科で、検定教科書を使わずに、検定外教科書を使っているところが多い。
公立中学のように、検定教科書を使って、ノンビリと、マッタリと、教科指導をしたりはしない。
検定外教科書の代表格は以下の通りだ。
数学:体系数学
英語:BIRDLAND、NEW TREASURE、PROGRESS
ある都立中学は、体系数学とBIRDLANDの組合せだ。
私立中学なら、ご近所の芝中がおなじ組み合わせだ。
BIRDLANDでは、中学の2年間で、高校英語3年間の検定教科書レベルまで学ぶ。平均的な公立中学と公立高校を合わせた6年間分を2年で学び終える教科書である。だから検定外となる。
体系数学は中学3年間分を2年以内で学べるようにできていて、一部高校内容を含む。しかもハイレベルだ。中3で高校課程の数学に接続するのに適している。都立の3年制進学校では、高校数学はサクシード(日比谷など)や4STEP(両国など)を使うところが多い。都立中高一貫校も、高校課程でも検定教科書はほとんど使わない。難関大学を目指すには、簡単すぎて役に立たない。
検定教科書を使うことはほぼないが、義務教育なので配布はされる。しかし、ほとんど日の目を見ないまま葬り去られる。
その都立中学では、国語や理科や社会も、検定教科書をほぼ使わない。国語は難関高校合格指導向けの塾用教材を使っている。共通問題校なら最高難易度の都立高校進学校でも、そこまでの教材を使わずに合格できる。自校作成校の攻略にはちょうど良いだろうハイエンドな難易度だ。大学入試の現代文と大差ない。それを中学生で学ぶ。
その都立中学は、難関私立中高一貫校とおなじようなカリキュラムが組まれており、それに合った教材で指導がなされる。
よって、受験教科で、どの検定教科書を採択しているかは、あまり意味を持たない。
これら検定外教科書を使ったカリキュラムは、かなりの学力的素地が備わっていない生徒には向いていない。都立の中高一貫校だけでなく、私立の中高一貫校であっても言える。スピードと重圧に耐えられない生徒がでてくる。
都立の中高一貫校を目指すなら覚悟しておいた方がよい。公立中学校の授業が簡単すぎて退屈になるような生徒でない限り、落伍するリスクがある。
これは、私立中学にも言える。そもそも入学者の学力からして、検定外教科書のレベルの方が高すぎる学校が散見される。検定外教科書を使うことで公立中学校との差別化を鮮明にしたいのだろうが、体系数学やNEW TREASUREなどは、かなりの進学校でもやっていけるような生徒でなければフィットしない。
難しい教材を使えば、どの生徒でも学力が伸びる訳ではない。むしろ、逆効果になるリスクがある。
検定外教科書は、学ぶ人の学力によって、薬にも毒にもなる。
小学生時代に、私立中学向けの難易度の教材を、躓かずに悠々と進められた生徒であれば、都立中入学後に学業上のアクシデントに見舞われる可能性は低いであろう。だから、これまで何度も書いているように、都立中高一貫の本命組も、私立中受験向けに近い内容で受検指導すべきだと考えている。
私立中向けとおなじような受験対策を負担に感じるようなら、体系数学やBIRDLANDなどを使う中学校には入学しない方がよい。つまり、都立中へは進まない方が安全だということだ。
誤解のないように補足しておくが、適性検査?の小論文対策は追加的に準備しておく必要がある。しかし、適性検査?の要約(共通問題や白鴎など)や読解(両国など)は私立中向けの国語対策で十分対応できる。理科や社会の記述も、記述式が多い私立中対策で対応できる。算数であっても私立中対策と大差はない。
しっかりとした学力がなければ入学後の授業についていけなくなる。大学入試改革で入試形態が変わったとしても、学力は必要であることに変わりはなく、緩い受験勉強で、難関大学、特に難関国立大学へ合格できるようになるような見通しはない。
私立中向けとおなじような受験対策というのは、私国立中受験指導大手塾に通えということではない。大手塾の高い授業料を払えということでもない。どんな手段や方法であれ、しっかり対策ができればよい。ただし、よほどの天才でもない限り、しっかりと受検指導できる指導者について指導してもらう必要がある。
指導者は、塾講師や家庭教師でなくてもかまわない。つまり、親であってもかまわない。しかし、受検指導ができるような高い能力がある親を、長期にわたり、毎日のように、相当な時間数、実質拘束するということは、それなりの費用が実質的にかかっているに等しいことも忘れてはいけない。
指導者である親などに指導力がない場合は受検生は不幸である。合格可能性は絶望的に低くなるリスクがあるばかりか、運良くというよりも、むしろ運悪く合格してしまった場合に、落伍リスクの高い生徒として都立中高一貫生活をスタートすることになる。
都立中の場合、合格しただけで「ご縁」があったと考えるのは、リスクがある。
もちろん、すべを承知した上で、合格できればそれでよく、その後にどうなっても、すべてを受け入れる覚悟ができているというのなら、何もアドバイスすることはない。しかし、そこまで覚悟できている親子は、どれだけいるだろうか。
もし、根拠のない楽観から、己に都合の良い情報だけから、都立中を目指そうとしているのであれば、受検はお勧めしない。もっと安全な選択肢が他にある。都立中へ進むよりもトータルで安上がりな選択肢もある。
都立中に合格できただけでは、成功は保証されない。むしろ、地元公立中学へ進むよりも、高いリスクをとることになる可能性さえあることを知っておくべきだ。