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三田学院

[2018年9月10日]

【都立中】新しい併願スタイル

適性検査型入試を実施する私立中学が大幅に増えたが、進学先としては魅力に欠けると思われている受験生親子がほとんどではないだろうか。

適性検査型入試を実施している私立中学の多くは、都立中に比べて進学実績が著しく見劣りするところが多い。そもそも、さしたる受験対策をしなくても合格できるような学校がほとんどだ。

都立中への合格ばかりに気を取られて、偏った情報収集しかしていないと、見落としがちになってしまうのが、私立中学の「算数入試」の存在である。

都立中に合格するためには、高い算数の学力が必要である。この算数の力だけで突破できる難関私立中学が、ここ数年増えてきている。その例をご紹介する。

・巣鴨68*:2月1日午後(2019年度新設)
・世田谷学園68:2月1日午後(2019年度新設、定員30名のうち特待20名)

・品川女子66:2月1日午後(2018年度新設)
・普連土学園66:2月1日午後(2019年度新設)

この他にも従来から実施されてきた「算数入試」と「算数・国語入試」があり、都立中の併願候補になり得る。

・高輪(算数)65:2月2日午後
・普連土学園(算数・国語)64:2月2日午後

学校名の後の数値は偏差値(しゅともし)。*印があるのは弊塾による推定偏差値。

小石川男子70、両国男子66、九段B男子65。小石川女子70、両国女子66、九段B女子66だから、ほぼ互角の難易度だ。

高輪や品川女子の「算数入試」に合格できないなら、都立中合格は怪しくなる。仮に都立中だけに合格できても、都立中入学後の学内成績が怪しくなる。

いずれの学校も、私立中学を目指す受験生にとっても難関校であるから、都立中がスレスレ残念になった場合に進学先の選択肢に十分なりうる。これらに合格できたなら、地元公立中学進学回避目的で低偏差値の練習校に進学するという、満足度の低い選択肢は消える。特に世田谷学園は特待入試の側面も持ち合わせており、経済的な事情がある人でも併願でき、進学実績も良好な名門だから、胸を張って進学できる。

これに、大学進学実績が良好で、特待生制度を持ち、適性検査型入試を行っている私立中学を加えると、かなり選択肢が広がる。次の2校が考えられる。この2校は、これまでも何度かご紹介してきた。適性検査入試の他に、4科入試なども選べる。特に宝仙理数インターは多様な入試タイプから選べ、得意な分野で勝負できる。

・宝仙学園理数インター(特待)61*
・安田学園(先進特待)63

安田学園の6年特待は難易度的に65以上あるだろうと推定される。6年特待に合格できたなら、ほぼ100%の確率で両国高校附属中に合格できる。1年特待(1年ごとの更新)合格であっても、選ばなければ、どこかの都立中には合格できるだろう。宝仙も1年特待以上で合格できれば、富士高校附属中には合格できるのではないか。

算数を軸として、都立中に合格できる実力をつけることができたならば、「算数入試」で難関私立中学にも合格できるはずで、たとえ都立中に残念になっても、地元公立中学へ進学という、天と地ほどに差がある進路選択をしなくてもよくなる。

算数の力を磨き上げさえすれ合格できるのだから、都立中が第一志望の受験生(受検生)にとって、受検対策上のムダがない。完全4教科受験ほどの大きな負担はない。社会や理科の膨大な単純暗記に苦しむこともない。

そして、何より、算数の力は中学入学後の学習に不可欠だから、都立中に進むもうが、私立中に進もうが、地元公立中学に進もうが、中学以降の勉学の助けになることは間違いないし、将来の進路実現にも役に立つはずだ。

実質都立中単願で、残念な場合には地元公立中学に進もうと考えている受検生にこそおススメである。何度も説明しているように、高校入試は純然たる学力試験であるからだ。都立高校入試は適性検査型の入試ではないのである。しかも、共通問題はマークシート式だ。併設型都立中の高校入学枠はマークシートではないが短答式がほとんどの学力試験だ。

都立中単願で、適性検査対策にばかりに興じた挙句、都立中の合格を逃してしまうと、地元公立中学進学後に、大きなハンディを背負って高校受験対策をスタートさせることになる。はじめから高校受験を想定して準備してきたライバルたちは、算数や数学の学力をしっかりつけた上で、高校受験英語でも先を行っているかもしれない。

話は戻るが、そもそも、「算数入試」を実施する私立中学は、優秀な都立中受験生というより、優秀な私立中受験生を囲い込むことを目的として行っている。「算数」のできる生徒が将来に難関大学へ合格して行くことを知っているのだ。

都立中第一志望や都立中単願の受検生にとって、完全な私立4教科型の受験対策は負担が大きすぎるし、都立中合格だけを鑑みればムダが多い。

一方で、適性検査型の受検対策では、都立中合格率は低いし、魅力的な私立中学の併願合格は事実上難しい。適性検査型の入試問題攻略に特化すると、多くは個別教科の学力で高度な学力試験には対応できるレベルまでは上がらず、都立中不合格を難関高校合格で巻き返そうとしても、苦労することになる。

都立中の受検対策が、適性検査の攻略が、難関高校受験にも役に立つというのは根拠や証拠に乏しい。もちろん、都立中の受検対策と並行して、教科の学力を高めることができていたなら役に立つだろう。でもそれは、教科の学力を高めることができていれば高校受験で難関校にも合格できるということと同義である。つまり私立中などの教科型受験対策が役に立つという意味になる。

難関私立中学に合格できた人の多くが都立中にも合格できるのに、適性検査対策中心で都立中に合格できた多くの人が難関私立中、特に4教科型入試校には全く歯が立たないことが証明となる。

都立中合格をより確実にし、効果的でムダのない、「算数入試」私立難関中学併願戦略を提案する。

誤解しないでほしいが、いや、しっかりとした読解力があれば誤解はないと思うが、「算数入試」に合格できる私立中受験生が都立中に合格できると言っているのではない。私立型の算数が解けるだけでは都立中には合格できない。都立中第一志望で準備してきた受検生が、算数の力を難関私立中合格レベルまで引き上げることもできれば、都立中合格がより確実になり、その他にもメリットが計り知れないほど多いというのが趣旨である。

大手私立中受験専門塾とも、大手都立中受検専門塾とも、根本的に違う戦略である。都立中合格を第一目標としながら、難関私立合格も可能にし、あらゆるタイプの中学入学後の成長を見据えつつ、不測の事態では高校受験にもつながる、最適化した戦略である。

大手私立中受験専門塾は、自力で都立中学に合格させる指導には及び腰だ。どこでもいいから相応な私立中に合格させられればお役御免というのが本音であろう。そもそも、ガチガチのカリキュラムに都立中併願対策を組み入れることなどできない。土曜日や日曜日の都立中志望校別特訓は、心に余裕のない受検生親子の足元を見て売上を積みます上手な商売だ。だから小6で行う。小6こそがカモなのだと気がついているのだ。合否は小6の夏までに決まっているなどと口が裂けても言わない。都立中受検の天下分け目の大勝負は、小4と小5であることも言わない。受検生親子が妙な誤解をして、塾を辞めてしまったり、入塾を見送ってしまったら困る。そもそも、説明したら理解してもらえるのは確実に合格する親子だけだから、言ってもしかたないかもしれない。合格が予定されている受検生だけが、適切な指導を受けることで、小6の秋から順調に仕上がっていくのだ。

大手都立中受検専門塾は、始めから全員を都立中学に合格させるつもりなどないように見える。「下手な鉄砲も数打てば当たる」のだから、ドンドン分母を大きくするだけでよく、模擬試験受験者や特訓授業受講者も遠慮なく取込んで合格者数をドンドン膨らませ、合格者数の多さでしか判断できないカモ親子を集客すればよい、という姿勢だ。大多数のハズレたちからは、高校受験指導で2回目の甘い汁を吸う魂胆だ。そのためにも、合格発表の日まで、受験生親子に合格の可能性がないことを悟られてはいけない。合格できないのだと悟られないようにするため、ハイレベルな教科指導はできないし、してはならない。せっかく集めた多くのカモたちが脱落して、生徒数が減り、ボロ儲けできなくなる。

「算数入試」難関私立併願。都立中の新しい併願スタイルとして、いかがだろうか。

「算数入試」難関私立併願。都立中合格をより確実にする受検対策としても有効ではないだろうか。

「適性検査型」中堅中位私立併願。多くは、都立中不合格の際の、ガス抜きにすらならないのではないか。

本気で都立中合格を目指すなら、1月の埼玉と千葉で練習しておけば十分であろう。2月日程で練習するのは日程がもったいないし、本番の最中に練習しても、本番対策として何かできる時間は残っていない。

2月の東京日程では、「算数入試」で難関私立中合格を目指そう。経済的な事情のある人は難関私立に特待合格しよう。そして、確実に都立中に合格しよう。都立中入学後は学内上位をキープして、難関大学へ進もう。