[2018年9月19日]
初めて都立中受検を体験する親子は、準備開始時点では、受検情報が十分でないことが多い。十分な受検情報が揃うのは、入試本番直前という事も多い。中には、入試本番が終了し、入試結果が出た後になっても、十分な情報を把握できていない人さえいる。
巷には、デタラメな情報ならいくらでも溢れている。溢れた情報を、しっかりと検証しないまま、額面通りに受け止める行為には、大きなリスクが伴う。
私立中学受験や国立中学受験なら、親世代での経験者も少なくはないだろうが、都立中受検は親の時代にはなかった進学ルートだから、経験などに照らして情報を選別することが容易ではない。
入学試験に臨むにあたり、模擬試験を受ける人がほとんどであろうが、一部の都立中入試向け模擬試験は、かなりの疑惑に満ちていることも知っておいた方がよい。
そもそも、受検市場が小さいから、採算のとれる受検者数が確保しにくいの加え、記述式の答案は採点に負担が大きくコストが高くなる。しかし、受験料を相場より大幅に高くすることは難しい。
このため、模擬試験「単独」の採算は度外視できるような主催者が幅を利かせることになりかねない。つまり、学習塾主催の模擬試験である。学習塾が主催するおもな意図は以下の通りだ。
?模擬試験受験者を自塾への入塾に誘導できる。
?模擬試験受験者を自塾の合格実績に算入できる。（「黒い模擬試験」タイプ?）
?模擬試験の受験者の成績を利用し受験生親子を操縦できる（「黒い模擬試験」タイプ?）。
?は、多くの人は許容範囲と思うだろう。それを望む親子もいるかもしれない。よって、白としておこう。
?は、どうだろう。但し書きとして「合格実績には、模擬試験受験者や、志望校別特訓講座受講者や、○時間以上の受講者を含む」などと書けば、ウソにはならない。ただし、詳しく確認しない親子は、すべてが、その塾のおかげで合格できたのだと思いかねない。濃い灰色、つまり黒に近い灰色と言えないか。
?は、業界関係者でなければ、想像すらつかないであろう。しかも公的な監督機関などなく、外部者はだれも実質的に検証できないから、主催者に高いモラルがないと、やりたい放題が可能となる。
今回は、この?の、「黒い模擬試験」タイプ?、に焦点をあてる。
中には急激に成績を伸ばす者や、成績を落とす者がいてもおかしくはないが、元来、受検生の相対的な得点力は、１ヵ月程度で劇的に変化するようなものではない。
それなのに、毎回のように、順位や偏差値が「大きく乱高下」する模擬試験があるとしたら、かなり怪しい。悪意がなくても、試験問題の質が悪い場合や、採点の質が悪い場合にも起こり得る。また、記述式の答案の採点は、客観的で明確な採点基準が設けられていないと、採点者によってバラツキが大きく成り得る。そこに「採点者の恣意性が入り込む余地」ができる。
学習塾主催の模擬試験で、偏差値や順位が大きく乱高下するような模擬試験は、黒の可能性がある。
黒い模擬試験には、どんな疑惑が考えられるのか？
・時に、甘い採点で順位や偏差値を引上げ、合格できる可能性があると受験者に思い込ませ、模擬試験の受験や、塾授業の受講を継続しなければという気持ちにさせる。
・時に、厳しい採点で順位や偏差値を引き下げ、このまま塾の受講を継続しないと、合格できなくなってしまうかもしれないという気持ちにさせる。
・受験者の顔が分かる場合も、新たに参加してきた受験者だと分かる場合も、名前が書いてあれば、意図的に狙い撃ちできる。受験番号だけでも、番号順の氏名一覧があれば狙い撃ちできる。
・甘い採点で成績上位者になった人が不合格になり、辛い採点で成績下位になった人が合格者になることで、合否は「時の運」かのような錯覚を起こさせることができる。不合格者の不満の矛先を「時の運」に向けさせることもできる。
・この他にも、塾の授業で取り扱った内容と「そっくり」の試験問題をちりばめるなどして、自塾の受検生の得点力を意図的に操作し、もって全体を操作できる。
もちろん、あまりにもデキが良く、辛い採点をしても成績上位をキープできる受験生もいるだろうし、あまりにもデキが悪く、甘い採点をしても成績上位になれない人もいるだろう。だからこそ、恣意的に採点してもバレない。
他の模擬試験と比較すると、素人目にも、怪しいかどうかは、なんとなくわかる。しかし、受験学年を何度も繰り返すことなどできないから、疑惑を感じても、あっという間に受検当日を迎え、検証されることはないまま、次の年度の受験生でおなじことが繰り返される。
アナタが受けている模擬試験は、「黒い模擬試験」ではないか？
受検生の親なら、適切な「リスク回避」を考えて、より安全な模擬試験を受験させたいと考えるだろう。
お勧めとしては、いくつかの独立系の適性検査専門の模擬試験があるが、固有名詞を挙げるのはやめておく。２つとも受け続ければ、かなり正確に実力を測定できるであろう。どちらも乱高下はさほどない。なにより、学習塾主催ではないので、採点者に「黒い採点」をしようとするインセンティブが起こりえないことがよい。
アナタの受けている模擬試験は、大丈夫か？
有料模擬試験だから信用できるとは限らないのだ。