[2018年10月1日]
受検生の多くもそうだが、受検生の保護者の多くも、切羽詰まらないと、何かと本気で動かない。
受験情報というものは、年度単位でしか入手できない。学校説明会や入試問題説明会などの他、文化祭、体育祭、授業公開、授業体験、部活動体験なども、年間計画の中で実施される。誰もが忙しいから、開催日程や時間帯が、常に自分の都合に合うとは限らない。また、人数制限や申込期間が定められている場合もある。複数回のチャンスを生かせるように、数年前から準備を開始しておくのが良い。
受験情報は、入試の1年前には重要な情報の収集を終えておくのが安全だ。さもないと、受験学年の、総仕上げをしなければならない段階で、情報不足で「指針」が定まらないという事態に陥りかねない。
ある都立中学の学校説明会で、校長が冒頭の挨拶の際、小学生とその保護者らに、質問をして挙手で回答を求めた。質問は現在の学年である。最も多かったのが小5と小4で、ほぼ同じくらいの人数だ。次に多かったのが小3以下であった。小6で学校説明会に参加した親子は少数であった。
この質問には深い意図がある。その都立中は、在籍生徒に迷惑をかけることになるので、学校説明会や授業公開の開催に慎重な立場だ。在校生の教育こそ第一の役目と強く考えている。だから、開催は最小限に留めたい。この質問で、大丈夫かどうか、念のため確認したかったのである。小学校の低中学年から学校説明会に参加している受検生親子が多いので、説明会に参加する小6の受検生親子は極端に少なくなる。しかし、受検倍率は高止まりしている。つまり、説明会の開催回数が少なくても、十分に受検生を確保できているということだ。思惑通りだったので、来年度も最小限の開催で十分だと判断したようだ。
その説明会後には、学校見学が開催されたが、過半数を超える親子が参加しなかった。帰り際に、小4生の保護者同士の会話が聞こえてきた。「もう数えきれないくらい見学に来ているから、今日は説明会だけで帰る」と。多くは、見逃しや聞き逃しがないくらい、何度も何度も見学に来ているのであろう。
まあ、学校説明会などに参加したからといって合格できるわけではないから、最小限の参加で十分だ。授業公開や行事公開への参加は必ずしも必要ない。参加しなかったから不合格になるというものでも全くない。
合格に必要なモノは確かな学力である。
マトモな受験指導塾なら、受験や合格に必要な情報はすべて揃えているはずだ。だから、在籍する受験指導塾で、ワンストップで全ての情報を提供してもらえばよい。
中学受験指導を行うマトモな塾なら、私立中だけでなく、国立大学附属中も、都公立中高一貫校の情報も、高校受験情報までも揃っているはずだ。そうでなければ、適切な受験指導も、効果的な併願アドバイスも、不測の事態の対処も、受験生親子に施せないはずだからだ。
ところが、大手受験指導塾に在籍していながら、必要な情報が揃わない受験生親子が少なからずいるようだ。
大手塾の「本性」がよくわかるであろう。儲からないことは、しないのだ。顧客第一主義のような顔をしながら、夢を叶えてくれるような顔をしながら、儲けることにだけに専念しているのだ。
グループ内に都立中指導コースなどを持ちながら、儲けさせてくれない親子には情報提供しない。情報が欲しい親子には「都立中対策講座」をオプション講座として受講させ、高額な授業料を追加的にむしり取る。志望校別の情報が欲しい親子には、志望校名を掲げた「カンムリ講座」も追加でオプション受講させ、さらにむしり取る。
他塾の生徒からも、むしり取る、「スーパー悪党」塾さえ存在する。堂々と「カンムリ講座」で他塾生を誘惑する。「カンムリ模試」で、受検生情報を掻き集める。何を目論んでいるかはバレバレである。しかし、新しいカモは後を絶たないから、どんどんエスカレートしていく。カモがすべて不合格になる訳ではないから、さらにエスカレートしていく。
毎年大量の不合格者を出しながら、毎年大量の生徒を掻き集める、某大手都立中受検専門塾もまた、必要な情報を意図して提供しない点ではおなじだ。すべての生徒を合格させていたのでは経営は成り立たない。どんなに頑張っても合格が難しい生徒を大量に入塾させないと儲からない。早い段階で合格できそうにないことがわかると塾をやめてしまうから、合格できそうもない受検生でも、合格発表のその日まで、合格できないことを悟られないようにしなければならない。よって、受検生親子に、適切な情報提供をしてはならないことになる。安定して低い合格率は、適切な情報提供を行っていないことの証だ。
悪徳商法まがいの姿勢に絶句する。おなじ業界人として複雑な心境になる。
儲けさせてくれない親子には、有益な情報は一切提供しない。
儲けさせてくれる親子であっても、貴重な情報は提供しない。
そこまでされても、マダ気がつかない親子も多い。
金の切れ目が縁の切れ目ではないが、むしり取るだけむしり取るのが、営利集団である大手の手口だ。
本来、価値ある情報は無料であるべきではないが、足元を見るような商売第一主義もどうだろうかと思う。大手は教育産業ではなく、サービス業という姿勢なのであろう。利益第一主義なのである。
大手塾とつき合うことは、多くの人にとって、夜の街で散財するようなものかもしれない。
・甘い夢だけ見させて、ボッタくる。
・ボッタくるだけで、希望を叶えてはくれない。
・下心が強い人ほど、ボッタくりの餌食になりやすい。
まき餌に引き寄せられ、ルアー(疑似餌の釣り針)で捕獲され、気がついたら、まな板の上まで運ばれていて、調理されてしまうのである。
巷で人気の無料セミナーなどに行くことは、自ら進んで、危険な「養殖いけす」に入るようなものだ。獲物が自ら近よって来るのだから、大手としては、内心ニコニコが止まらないであろう。一網打尽を目論んでいるに違いない。そこまでいかなくても、一定の歩留まりがあれば、十分儲かる。だからドンドン開催する。儲かるから「無料で」開催する。よくできた仕組みだ。
そのことを、よく理解できた上で利用するのなら、餌食にならずに済むかもしれない。しかし、凄腕ハンターの網をすり抜けるのは容易ではない。相手は利益第一主義の強者だ。大手を利用したつもりが、大手に利用されていたと、またもや、なりかねない。
いつまでも気がつかず、過ちを繰り返し続けては、いけない。