[2018年10月26日]
早稲田大学は、政治経済学部の入学試験で、2021年度入試から数学を必須化する。
その後、法学部や商学部などでも順次、数学を必須化する計画だ。
この「数学が苦手な受験生を実質的に排除する」動きは、他の私立大学文系学部へも広がりそうな気配だ。
背景には、人工知能やビックデータの普及がある。これらを抜きに何も語れないし、これからの実社会で通用しない、という差し迫った状況がある。
すでに、経済学ばかりでなく、経営学や商学、さらに法学や政治学の分野においても、「数理統計学」や「ゲーム理論」(ナッシュ均衡)などといった「数理科学」的なアプローチが必須になっている。
その意味では、現状追認でしかないとも言える。
数学が苦手でも、数学入試がない難関大学なら合格できていた。しかし、早稲田の動きは、数学が苦手な受験生を窮地に追い込むことになるかもしれない。
<新試験の概要>
?大学入学共通テスト(センター試験代替)
必須科目:英語、国語、数学?A
選択科目:数学?B、理科、地歴、公民
+
?英語外部認定試験(配点の15%以内)
+
?学部独自試験(英語と国語の長文読解)
*必須科目に数学?Aが入るので、選択科目は数学?Bを選択することが最も親和性が高く、最も対策しやすくなる。実質的に、数学を選択させる入学試験制度になる。
もう一つ、裏の背景がある。慶應大学経済学部の躍進である。実質的に私立大学文系学部最高峰の座を、慶応大学経済学部に奪われている。これの巻き返しである。優秀な受験生を奪い返したいのだ。慶応大学経済学部では、遥か昔から、数学が実質的に必須科目であった。
慶應大学経済学部A方式480人:
外国語(リスニングなし)、数学?A・数学?B、小論文
慶應大学経済学部B方式240人:
外国語(リスニングなし)、小論文、世界史Bと日本史Bから選択
B方式を選択した場合、入学後に、数学の所定の単位数を取得することが、進級ならびに卒業に必要条件となる。
入試段階では数学から逃げることができても、進級と卒業では逃げられないから、実質的に数学を必須にしているようなものだ。ならば、最初から潔くA方式を選んだ方が得策な気がする。世界史や日本史を極めずに、数学を極めるということだ。その方が、難関国立大学の文系学部との併願もしやすい。
<難関国立大学の個別試験科目(経済学系)>
東北大学経済学部:外国語、現古漢、数学?A・数学?B
名古屋大学経済学部:外国語、現古、数学?A・数学?B
大阪大学経済学部:外国語、現古、数学?A・数学?B
神戸大学経営学部:外国語、現古、数学?A・数学?B
慶應大学経済学部の入学試験は、センター試験を利用していない。大学入学共通テストに移行後も利用しない意向だ。また、英語外部認定試験を利用する意向も表明していない。英語外部認定試験の利用は、国公立大学や難関大学の中では、早稲田が唯一積極的な動きを見せている。それでも配点比率は15%と低い。
数学は、理系分野だけで必要とされる教科ではない。
数学こそ、社会に出てから最も役に立つ教科だ。
社会科学分野を専門としようとするなら、数学は必須だ。
実は人文科学分野でも、教育学や心理学など、多くの領域で、数学は必須だ。
だから、難関国立大学では文学部や教育学部であっても個別試験(二次試験)で数学を課す。
<難関国立大学の個別試験科目(文学系・教育学系)>
東北大学文学部:外国語、現古漢、数学?A・数学?B
名古屋大学教育学部:外国語、現古、数学?A・数学?B
大阪大学人間科学部:外国語、現古、数学?A・数学?B
神戸大学文学部:外国語、現古漢、数学?A・数学?B
高校数学には、高校数学の攻略の仕方がある。知らずに走ってはいけない。
センター試験を受けてから、得点率に驚いても、もう遅い。
浪人して頑張る?
浪人しただけで受かるほど、難関大学は甘くない。