[2018年11月14日]
勘所をつかむことができる保護者なら、今現在、中学受験は、どんな状況になりつつあるか、お気づきであろう。ベビーブーマー・ジュニアの世代は、おなじ学年の人口が約200万人である。今や、一年に生まれる人口は100万人を切ろうとしている。
ところが、開成中学などの最難関私立学校の定員は、ほとんど変動していない。さらに、東京大学など難関国立大学の定員も大きくは削減されていない。
受験戦争は明らかに緩和しているのである。つまり、以前は箸にも棒にも引っかからなかったような受験生でも、難関中学や難関大学へ進めるようになったのである。
偏差値は相対的な学力しか測定できない。絶対的な学力はわからない。偏差値だけ見ていると、母集団が変化していても気がつかない。
いつものように前置きが長くなってしまったが、明らかに受験競争は緩和しているのである。多くの私立中学や私立高校や私立大学では、実質定員割れが深刻なほどに進行している。
一方で、一部の最難関校の入学試験はむしろ活況を呈している。以前なら可能性がなかった受験生にも希望の光が見えるようになったからである。
受験生となりうる母集団は半減した。
このことで何が起こるかというと、最難関、難関、準難関、中堅上位など難易度の順に、玉突き的に優秀な受験生を集められないという現象が起こっている。
名門私立であっても横綱相撲は取らせてもらえない。あの手この手で、優秀な受験生の囲い込みを、画策しなければならない。
・午後入試
・算数入試
・算数と国語入試
名門難関私立中学が譲歩できるのはここまでだろうか。
・適性検査型入試、合科型入試
・帰国生入試
・特待生選抜入試
それに続く難関私立中学が譲歩できるのはここまでだろうか。
ここで、勘の良い人は気がつくであろう。
私立中学は、必ずしも、4教科で受験準備する必要はない。
もちろん、私立御三家クラスは4教科入試しかない。よって、すべての可能性を追い求めるのであれば、4教科で対策する必要がある。しかも、御三家クラスでなくても4教科入試を行っている学校は多いから、選択肢を広げるという意味で、4教科で対策することのメリットは大きい。
ところが、最終的に4教科でバリバリの勝負に挑むことになる私立中受験生は、ごくわずかに限られる。「しょともし」で言うなら、80%偏差値で60以上にほぼ限られる。
偏差値60以上は、受験生全体の上位15%程度である。
偏差値65以上は、受験生全体の上位7%程度である。
偏差値70以上は、受験生全体の上位3%程度である。
つまり、バリバリの4教科で受験対策するメリットがハッキリとあるのは、全中学受験生の、上位15%程度でしかない。ほとんどの私立中学受験生は、4教科受験に固執する必要は必ずしもない。
これは、大手の私国立中学受験指導塾には極めて都合の悪い真実である。
この真実を公に認めてしまうと、理科や社会の授業が売れなくなる。高い授業料を正当化できなくなる。受験生を長期間かつ長時間拘束できなくなる。
大手では、私立中学受験生の約85%以上が、実はカモだったということが、白日の下に晒されてしまう。
実は、ほとんどの私立中学受験生は、理科や社会の受験勉強を、ヒーヒー言いながらヤル必要はナイ。そんなことしなくても、違うやり方で、おなじ私立学校に合格できる。
ただし、算数か国語が苦手、あるいは、算数と国語が苦手で、社会や理科などが得点源の受験生は、難関校が目標でなくても、4教科で進めた方が有利だ。また、算数入試や算数・国語入試は、おなじ学校でも合格難易度が上がることも覚えておいた方がよかろう。教科数を絞れる分、おなじ能力なら、絞って残った教科が強くなるのは当たり前で、「裁定」が働き「均衡」する所で収束する。自然の摂理である。
そもそも、私立中学の中堅校や中位校では、随分前から、算数と国語だけの入試が選択できた。
ここにきて、なんちゃって思考力型入試だの、なんちゃって適性検査型入試だの、なんちゃってルーブリック入試だの、グループ面接だけの入試だの、簡単な問題しか課さない入試だの、調べれば調べるほど、甘々な入試しかしていない私立中学がドンドン見つかる。大手私国立中受験塾の受験指導内容と、入試の実態が大きく乖離してはいないだろうか。
大手の中学受験指導塾は、この事実をひた隠しにするしかない。あるいは、巧妙に誤魔化すしかない。
ガリガリ受験勉強しなくても合格できるのは、公立中高一貫校ではなく、大半の私立中学である。
逆に、公立中高一貫校、特に多くの都立中学は、しっかりとした受験準備しないと合格できない。というか、合格できなくなった。算数や国語だけでなく、理科や社会もしっかり理解できていないと合格できない。
都立中の多くは、概ね偏差値60以上の難易度にある。ということは、どこかの都立中に合格しようとした場合、全中学受験生の学力上位15%程度に入る学力がないと、合格できないということになる。
仮に、都内の全小学生の学力上位30%が母集団だと仮定すると、全小学生の学力上位4.5%ということになる。都内全域で均せば、30人クラスだとすれば、クラスで1.5人となり、クラス1位か2位までということになる。もちろん、これは仮定が正確な場合に成立する。実際には、もう少し学力が低い層も中学受験に参戦してくるし、学力が高くても高校受験を選択する層も一定数いるし、私立御三家や難関国立附属や難関私立大附属などにも流れるので、これより若干緩いかもしれない。
言いたいことは、「ちょっと勉強がデキる」くらいでは狙えないということだ。30人中で10番くらいでは、お話しにならないということだ。30人中で5番くらいでも、夢は夢のままで終わるということだ。もちろん、地域格差もあるから、多少の誤差はある。
田舎の高校受験でも、都道府県トップの高校に進めるのは、クラスで1番の子でしょ。5番では受験さえさせてもらえないでしょ。せいぜい2番まででしょ。
入塾試験や入塾基準などなく、誰でも入塾させるような塾で集団指導をしようとすると、合格に必要なクオリティの指導は実質的にできない。ということは、そもそも指導など受けなくても合格できるような受検生しか、合格には導けないということになる。つまり、残りの生徒は、はじめから塾経営のためのカモだったのだ。
大手塾が大儲けするために創り出した幻想に、ダマされてはいけない。
・大手私立中学受験塾が隠す不都合な真実
難関中学を受験する人以外は、必ずしも4教科全てで、高難易度な準備をする必要はないのに、儲けるために、ほぼすべての受験生に4教科フルで受験準備をさせる。過度な負荷に、多くの受験生「親子」は悶絶する。そのほとんどは、合格のために必要ない。
・大手都立中学受検専門塾が隠す不都合な真実
都立中に合格するには、私立中受験以上に厳しい対策を乗り越えなければならない。しかし、儲けるために、厳しい対策には耐えられないと分かっている子を大量に入塾させる。よって、ユルイ対策で受検本番まで引っ張らなければならない。その結果、毎年毎年、懲りずに、「合格者数の何倍もの不合格者」を生み出し続けることになる。しかも、不合格者の多くは、まともな私立中学に合格できない。進学先は実質的に地元公立中学しかなくなる。結局のところ高校受験を選択したのと同じになる。ところが、どの都立中にも合格できなかった人の多くは、小学校高学年での甘い勉強が祟り(たたり)、高校受験でも進学校に進めない。
不都合な真実にこそ、真相が隠されているのだ。