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三田学院

[2018年11月19日]

【都立中】新併願戦略考

都立中の本気の併願校候補をシリーズでお伝えした。

ところが、都立中専門塾や都立中専門コースに在籍している受検生親子には、ピンときていない方もいるかもしれない。意図を改めてお伝えする。

大手都立中専門塾や大手塾都立中専門では、「都立中の魅力」を宣伝することで、生徒をかき集めている実態から、自己矛盾を起こすことがないよう、本格的に難関私立中との併願を推奨しにくい。そもそも、一つのコースで、都立中と難関私立中を共に合格指導する体制がない。

また、難関私立中学との本格的な併願を推奨すると、私立中専門の大手塾と真っ向から激突することになり、経営戦略上の課題が発生する。

よって、難関私立中との併願など、あたかも選択肢にはないかのように、ふるまうしかない。

この『分断』戦略は、都立中専門塾や都立中専門コースにとって、必要不可欠な経営戦略として展開されてきており、ここまでは、なんとか、受検生親子に『分断』を信じ込ませることに成功してきた。

もう一度、2019年予想偏差値表を復習しておこう。都立中と私立中は完全に「分断」されているわけではないことが、認識できるであろう。

共同作成問題化以降、この「分断」は事実上崩れつつあり、都立中第一志望の受検生であっても、私立中受験生の存在や、私立中入試の出題傾向を強く意識した対策が必須となりつつあるばかりか、積極的に私立中受験生の牙城を崩していくことさえも覚悟しなければ、闘い抜けない状況になりつつある。平たく言うと、都立中のことしか念頭にないと、劣勢を余儀なくされるということだ。

「2019年予想R4一覧・女子」(8月16日発行)より抜粋

67:小石川筑波大付、桜蔭
66:女子学院
65:雙葉
64:お茶の水女子大附(女子)
63:両国
62:フェリス
61:都立武蔵
60:広尾学園、吉祥女子
59:桜修館、頌栄、青山学院
58:鴎友
57:立教女学院、品川女子(算)
56:白鴎、学習院女子、普連土(算)
55:九段、大泉、三鷹、南多摩、東洋英和A

「2019年予想R4一覧・男子」(8月16日発行)より抜粋

72:筑波大附駒場
71:開成、灘
70:
69:海陽(特別給付)
68:渋谷幕張??、渋谷渋谷?
67:小石川筑波大附、麻布
66:渋谷渋谷?
65:海城?、広尾学園(医サ)
64:駒場東邦、武蔵、芝?
63:両国、慶應普通部、渋谷渋谷?、広尾学園?、本郷?
62:海城?、本郷?、早稲田高等、早稲田実業、ラ・サール、函館ラ・サール?
61:都立武蔵
60:芝?、広尾学園?
59:桜修館
58:学大世田谷、学大竹早、本郷?
57:巣鴨?
56:白鴎、世田谷(算)
55:大泉、三鷹、南多摩、青山学院

都立中専門塾や都立中専門コースの指導にドップリと浸かって、都立中の受検準備しかしてこなかった受検生親子には、「寝耳に水」であろう。

都立中専門塾や都立中専門コースに通い、今春、都立中を受検する受検生の多くには、もう、提案する一連の併願戦略は間に合わないであろう。よって、都立中が第一志望で、教科学習も、ここまでしっかり進めることができた現小5と現小4以下におススメする。

都立中を併願の選択肢に入れている、私立中専門塾や私立中専門コースの受験生は、何もわざわざ、ここで提案している併願戦略を選択する必要はない。4科で堂々と勝負すればよいからだ。この一連の併願戦略は、都立中第一志望、あるいは都立中実質単願の受検生にこそ意味があるのだということを、改めて申し添える。

大手の都立中専門塾や都立中専門コースの受検生には選択肢が事実上なく、今春の受検生は、いまから準備しても間に合わない。

大事なことは、都立中受検での成功を、より確実にできることを目的として、この「新併願戦略」を提案しているということだ。

年を追うごとに、都立中の難易度は上昇し、難関私立中受験生との闘いは避けられなくなってきている。

私立中は始めから選択肢にないという親子もいるだろう。そのことは百も承知である。私立に進学しろなどと言っているのではない。都立中に、より確実に合格する戦略を提案しているのである。これらの併願私立中に合格しても、進学しなくてもよい。

ただ、例えば「世田谷学園」の特待など、都立中とおなじように、もし入学金や授業料が格安だとしたら、どんな判断を下すのであろうか。実際に足を運んでみてから評価してみてもよいのではないか。

例えば、BMW3シリーズと国産ミドルセダンが同じ値段で買えるとしたら、どちらを選ぶであろうか。イギリスでは、どちらもほぼ同じ値段で売られている。思い込みや先入観もまた、判断を誤らせるということを忘れてはならない。

もちろん、すべての都立中で、併願戦略をお勧めするわけではない。地理的に私立中との競合が少ない都立中や、私立中受験生から相手にされていない都立中を目指す場合は、この併願戦略の価値は、さほど大きくない。

これらの都立中を目指す場合は、従来通り、適性検査型入試を行う、特待合格のある、難関私立中学が有効である。今のところ、宝仙学園理数インター特待、安田学園先進特待が該当する。どちらも6年特待があるが、私立高校の授業料無償化が開始されたので、3年特待に合格できれば、費用的には心配はないだろう。1年特待以上に合格できたならば、どこかの都立中にも合格できる可能性が高いので、直前の仕上がり確認としても使えるし、不測の事態の次善の策としても使える。

ここまでで紹介した新併願戦略で対象となる都立中とは、すでに頭角を現している、難易度で上位や中位の都立中である。これらの都立中への合格を本気で目指すのであれば、この新併願戦略が活きてくるはずだ。